2.酒 rosacea366 19 章 付属器疾患 1 2.酒 しゅ 皶 さ rosacea 定義・病因...

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366 19 章 付属器疾患 19 2.酒 しゅ rosacea 定義・病因 中高年の顔面,とくに鼻部に好発し,びまん性発赤と血管拡 張が数か月以上持続する慢性炎症性疾患である.痤瘡様の丘疹, 膿疱を混じることがある. 症状 臨床症状と部位により,酒皶は 4 種類に分類される.中年以 降の女性に好発するが,重症例は男性に多い. 紅斑毛細血管拡張型(erythematotelangiectatic rosacea), 第 1 度酒皶 せん ,頬,眉間, 頤 おとがい 部に,一過性の発赤が出現する.次第 に持続性となり毛細血管拡張と脂漏を伴うようになる(19.8).寒暖や飲酒で症状が増悪する.瘙痒,ほてり感,易刺 激性などの自覚症状がある. ②丘疹膿疱型 (papulopustularrosacea),第2度酒皶 病状が進行すると,尋常性痤瘡に類似した毛孔一致性の丘 疹,膿疱が加わり,脂漏が強まる(19.9).病変は顔面全体 へ広がる. ③瘤腫型(phymatousrosacea),第3度酒皶 丘疹が密集融合して腫瘤状となる.とくに鼻が凹凸不整に隆 起して赤紫色を呈し,毛孔が拡大してミカンの皮のような外観 となる〔鼻瘤(rhinophyma),19.10〕. ④眼型 (ocularrosacea) 眼囲の腫脹や結膜炎,角膜炎などを生じる.約 20%で皮膚 症状に先行する. 病因 原因は不明.病変部皮膚では自然免疫に関与する TLR2 や 抗菌ペプチド〔カセリサイディン(cathelicidin)など〕の発現 が亢進している.これにより日光,精神的ストレス,飲酒,刺 激物摂取,毛包虫感染などの外的刺激に対する感受性が高ま り,炎症や血管増生をきたすと考えられている. 治療 一般に慢性の経過をとり,難治性である.刺激の強い食物や 過度の日光曝露,ストレスを避けるよう努める.メトロニダゾ ール外用やドキシサイクリン低用量内服が有効である.レチノ イドの外用ないし内服も行われる.毛細血管拡張に対してはレ ーザー療法を行い,鼻瘤に対してはレーザー療法や凍結療法, 19.9 第 2 度酒皶〔酒皶性痤瘡(acne rosacea)〕 50 歳代男性.鼻から頬部にかけての紅色皮疹. 19.10 第 3 度酒皶〔鼻瘤(rhinophyma)〕 60 歳代男性.腫瘤状となり毛孔が拡大しミカンの皮 のような外観である.

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Page 1: 2.酒 rosacea366 19 章 付属器疾患 1 2.酒 しゅ 皶 さ rosacea 定義・病因 中高年の顔面,とくに鼻部に好発し,びまん性発赤と血管拡 張が数か月以上持続する慢性炎症性疾患である.痤瘡様の丘疹,膿疱を混じることがある.

366  19章 付属器疾患

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2.酒しゅ

皶さ

rosacea

定義・病因中高年の顔面,とくに鼻部に好発し,びまん性発赤と血管拡

張が数か月以上持続する慢性炎症性疾患である.痤瘡様の丘疹,膿疱を混じることがある.

症状臨床症状と部位により,酒皶は 4 種類に分類される.中年以

降の女性に好発するが,重症例は男性に多い.①紅斑毛細血管拡張型(erythematotelangiectatic rosacea),第 1度酒皶鼻び

尖せん

,頬,眉間, 頤おとがい

部に,一過性の発赤が出現する.次第に持続性となり毛細血管拡張と脂漏を伴うようになる(図19.8).寒暖や飲酒で症状が増悪する.瘙痒,ほてり感,易刺激性などの自覚症状がある.②丘疹膿疱型(papulopustularrosacea),第 2度酒皶

病状が進行すると,尋常性痤瘡に類似した毛孔一致性の丘疹,膿疱が加わり,脂漏が強まる(図 19.9).病変は顔面全体へ広がる.③瘤腫型(phymatousrosacea),第 3度酒皶

丘疹が密集融合して腫瘤状となる.とくに鼻が凹凸不整に隆起して赤紫色を呈し,毛孔が拡大してミカンの皮のような外観となる〔鼻瘤(rhinophyma),図 19.10〕.④眼型(ocularrosacea)

眼囲の腫脹や結膜炎,角膜炎などを生じる.約 20%で皮膚症状に先行する.

病因原因は不明.病変部皮膚では自然免疫に関与する TLR2 や

抗菌ペプチド〔カセリサイディン(cathelicidin)など〕の発現が亢進している.これにより日光,精神的ストレス,飲酒,刺激物摂取,毛包虫感染などの外的刺激に対する感受性が高まり,炎症や血管増生をきたすと考えられている.

治療一般に慢性の経過をとり,難治性である.刺激の強い食物や

過度の日光曝露,ストレスを避けるよう努める.メトロニダゾール外用やドキシサイクリン低用量内服が有効である.レチノイドの外用ないし内服も行われる.毛細血管拡張に対してはレーザー療法を行い,鼻瘤に対してはレーザー療法や凍結療法,

図 19.9 第2度酒皶〔酒皶性痤瘡(acne rosacea)〕50歳代男性.鼻から頬部にかけての紅色皮疹.

図 19.10 第 3度酒皶〔鼻瘤(rhinophyma)〕60歳代男性.腫瘤状となり毛孔が拡大しミカンの皮のような外観である.