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微生物由来のグリコール系糖類 酸化酵素に関する研究 2008.9 岩手大学大学院 連合農学研究科 生物資源科学専攻 (岩手大学) 佐々木康孝

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微生物由来のグリコール系糖類

酸化酵素に関する研究

2008.9

岩手大学大学院

連合農学研究科

生物資源科学専攻

 (岩手大学)

佐々木康孝

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目次

緒論 1

第1章 グリコールアルデヒド酸化酵素の

       検索・精製および諸性質の解明

3

第2章 Paenibacillus sp. AIU 311が産生するAOD遺伝子の

       クローニングとE. eoliにおける発現

28

第3章 グリオキサール酸化酵素の

       検索・精製および諸性質の解明

42

第4章 Pseudomonas sp. AIU 362株が産生するAOD遺伝子の

       クローニングとE. coliにおける発現

63

総合考察

要約

参考文献

謝辞

79

82

84

91

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緒論

 近年、科学技術はめざましい速度で発展を続けており、なかでも医薬分野に

おける発展は著しいものである。これに伴い医薬品、農薬等の合成に必要な高

純度の化合物や光学活性有する化合物の需要力塙まってきている。しかし、こ

のような高い純度が必要とされる化合物の合成においては、合成反応において

生じる副産物の存在が大きな問題となる。また、近年の環境およびエネルギー

問題の観点から、化合物の化学合成に要する多量のエネルギーについても問題

視されてきている。そこでこれらの問題を解決するため、化学反応に比べて厳

密な基質特異性を有し、反応に要するエネルギーが少ない生体触媒を用いた物

質合成の優良性が注目されてきている。

 動植物をはじめ全ての生物において、酸化還元反応は生命を維持するために

欠かすことのできない生体反応である。したがって、この反応を触媒する酵素

である酸化還元酵素のグループには、デヒドロゲナーゼ、オキシダーゼ、オキ

シゲナーゼやペルオキシダーゼなど多くの酵素が含まれている。これらの酸化

還元酵素は、今日までに様々な生物より見出され、産業における化学化合物の

合成や医療における検査試薬などに数多く利用されている[1,2]。

 しかし現在、物質の酸化反応に用いられている酵素の多くはデヒドロゲナー

ゼである。デヒドロゲナーゼは反応において、電子受容体としてNAD+やNADP+

などの補酵素の存在が必要であり、このことが産業における酵素反応の利用の

妨げとなっている。この問題を解決するため、本研究では産業における実用化

を目的として酵素反応に補酵素を必要としないオキシダーゼを用いた物資変換、

なかでも産生する酵素の多様性および培養の簡便性の点から、微生物由来の酵

素に着目した。

  さらに本研究では、一つのアルデヒド基およびカルボキシル基からなる最

も単純なアルデヒド酸であるグリオキシル酸に注目した。グリオキシル酸は、

動植物の代謝物質や中間体として広く自然界に存在していることが古くから知

られており、その化学的性質についても19世紀から多くの研究がなされている。

さらに近年、グリオキシル酸は香料であるバニリンの合成原料や、抗生物質の

側鎖化合物として利用されており、その重要性が高まってきている。

  現在グリオキシル酸は、主にジアルデヒドであるグリオキサールの硝酸に

よる酸化反応を用いた化学合成法によって合成されているが、グリオキシル酸

とともに多くの副産物が生じるという問題を有している。また、この他にもシ

ュウ酸の電気的還元、または酵素反応を用いた還元反応によるグリオキシル酸

の合成についても注目されているが、その合成収率の低さおよび反応副産物の

1

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問題から産業における実用化には至っていない。

 酵素法によるグリオキシル酸の生成反応では、ホウレン草由来のグリコール

酸オキシダーゼ(EC 1.1.3.1, glycolate:oxygen oxidoreductase, EC 1.1.3.15,

(S)-2-hydroxy-acid oxidase)を用いた反応についての報告[3]がなされてい

るが、この方法ではエチレンジアミンの共存や酵素の固定化が必要であり、酸

化反応もわずかながらシュウ酸まで進んでしまうという欠点を有している。

 したがって本研究では、反応1に示した二価のアルコールであるエチレング

リコールを初発物質とした酸化反応系によるグリオキシル酸の生成法を想定し

た。この反応系のうち、グリコール酸がAlealigenes属の菌株を用いた菌体反

応により、グリオキシル酸に変換されること[4]が報告されているカS、この反

応は高濃度のグリコール酸により阻害されることが明らかとなっている。また、

エチレングリコー一・一ルがメタノール酵母由来のアルコールオキシダーゼ(AOD)(EC

Ll.3.13, alcohol:oxygen oxidreductase)やAsρergillus垣poηゴo品由来の

グリセロールオキシダーゼ(glycerol:。xygen 1-oxidoreductase)で酸化され

てグリコールアルデヒドへ変i換されること[5]、あるいはグリコールアルデヒ

ドを経てグリオキサールに変換されること[6,7]が報告されている。しかしな

がら、このグリコールアルデヒドを経由したエチレングリコールのグリオキサ

ールへの変換反応では、基質として高濃度のエチレングリコールを用いた場合、

反応はグリオキサールまで完全には進まずにグリコールアルデヒドが蓄積され

てしまうことが明らかとなっている。

 これらの研究の現状を考え、本研究ではグリコールアルデヒドのグリオキサ

ールへの酸化反応およびグリオキサールのグリオキシル酸への酸化反応を触媒

・する微生物由来オキシダーゼのスクリーニングを行った。さらに、これらの酵

素を組み合わせることにより、エチレングリコールを初発物質とした連続的酸

化反応によるグリオキシル酸の生成系を確立するために酵素の諸性質について

検討し、酵素遺伝子のシークエンスおよび発現系の構築を行った。

  CHI OH     CHO                    CHO      COOH  l   -一一一一+ 1    -一一→  1  -一一一一一争                             l  CH20正{             C耳, OH                CHO               CHO

]匡{thylele91yool     61yoolaldehyde           底]Lyeコ【ai        暖1yoxylio a杜idL

反応1 エチレングリコールの酸化経路

2

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第1章

グリコールアルデヒド酸化酵素の検索・精製および諸性質の解明

 先に述べたように、グリオキシル酸は医薬品や様々な有機化合物の合成に広

く用いられている有用な物質である。現在、このグリオキシル酸はグリオキサ

ールやシュウ酸を化学的に酸化、または還元することにより合成されている。

しかし、このような化学合成法ではグリオキシル酸の合成に伴って多量の副産

物が生じ、反応に多くのエネルギーを必要とする。これらの副産物およびエネ

ルギーの問題を解決するため酵素を用いた酸化反応に着目し、反応1に示した

酸化反応系を考えた。

 これまでのエチレングリコールの酸化についての研究により、Candida sp.や

Pichia pastorゴs [5,6]などのメタノール酵母の産生するAODやAspei7gゴUus

J’aρonicus由来のグリセロールオキシダーゼ[7]により、エチレングリコール

がグリコールアルデヒドを経由してグリオキサールへと酸化されることが明ら

かになっている。しかし、このグリコールアルデヒドのグリオキサールへの酸

化反応は、高濃度のエチレングリコールの存在により著しく阻害され、グリコ

ールアルデヒドが蓄積される。したがって、酵素反応によるエチレングリコー

ルのグリオキシル酸への連続的な酸化反応系を確立するためには、反応2に示

したグリコールアルデヒド酸化反応を触媒するオキシダーゼが必要である。

 そこで本章では、グリコールアルデヒドをグリオキサールに変換するオキシ

ダS-・一・ゼを産生する微生物をスクリーニングし、分離菌が産生する酵素の精製と

諸性質について検討した。

CHO          CHOl    ______-  lCH, O H       CHO

Glyeo1eldehyde Clyoxel

反応2グリコールアルデヒドの酸化反応

3

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実験方法

微生物の分離

① 数十種の土壌サンプルを用いて、表1-1に示したエチレングリコール液体

  培地で3度の集積培養を行った。次に、Leeらの方法[8]を応用し、エチ

  レングリコール平板培地上でグリコールアルデヒドに対するオキシダーゼ

  活性を調べ、グリコールアルデヒド酸化能を有する菌を分離した(プレー

  トアツセイ)。

② 分離した菌株は、6.0皿1エチレングリコール液体培地を含む試験管で30℃、

  3日間振とう培養(120strokes/min)した。培養により得られた菌体は遠

  心分離(10,000rpm,10 min)により集菌し、1. O ml 10 mhリン酸カリウ

  ム緩衝液(pH 7.0)に懸濁し、 Multi-beads shocker(Yasui Kikai, Osaka)

  を用いて5℃で6分間の細胞破砕を行った。この操作により得られた無細

  胞抽出液を用いてメタノール、エチレングリコール、グリセロール、グリ

  コールアルデヒド、グリオキサール、グリオキシル酸および、グリコール

  酸に対するオキシダーゼ活性を調べた。

③無細胞抽出液の活性比較より、グリコールアルデヒドに対して高いオキシ

  ダーゼ活性を示し、グリオキシル酸に対して活性を示さなかった菌株は、

  150mlエチレングリコール液体培地(500 m1容坂ロフラスコ)で培養した。

  そして、②と同様にガラスビーズで細胞破砕して無細胞抽出液を調製した。

  この無細胞抽出液をDEAE-Toyopear1カラムクロマトグラフィーに供し、上

  記の各化合物に対するオキシダーゼ活性を調べた。

④ ①~③の手順によりグリコールアルデヒドに対して高い活性を示すオキシ

 ダL-一一bゼを産生する1菌株を選抜した。

4

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表1-1エチレングリコール培地組成

Ethylene glycol

NaH2PO4

K2HPO,

NH4NO3

MgSO4・7H,O

CaCl2・2H20

Yeast extract

5.・0 (%)

O.1

0.1

0.2

0.02

0.01

0.1

pH 7.0

分離菌株の同定

 先述したスクリーニングにより分離した菌株を、CM3寒天培地(Oxoid,

Hampshire, UK)上で30℃、2日間培養した。そして、工ntraGene Matrix(Bio-Rad,

Hercules, CA, USA)を用いて16S rRNAを抽出し、 MicroSeq 50016S rRNA

Bacterial Identification Sequence Kit (Applied Biosystems, Foster City,

CA, USA)を用いて16S rRNAの解析を行った。16S rRNA配列の相同性は、 BLAST

programによりGen Bank, DDBJおよび、 EMBLのデータベースを用いて検索した。

相同性検索の結果より、neighbor-joining法で系統樹を作製した。

 形態学的特長はCM3寒天培地を用いて調べ、生理学的特長はAPI 50CHB

(bioMerieux, Marcy-1’Etoile, France)を用いて調べた。

分離菌株の培養

 分離菌株を7.・Om1エチレングリコール液体培地を用いて30℃で2日間振と

う培養(120strokes/min)した。得られた培養液3. O mlは150 mlエチレング

リコール液体培地(500m1容坂ロフラスコ)に添加し、同一条件でさらに2日

間振とう培養した。この培養液60m1を3.OLエチレングリコール液体培地(5.O

L容平底フラスコ)に添加し、同一条件でさらに1日間振とう培養した。

5

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酵素活性測定

(1)オキシダーゼ活性測定

グリコールアルデヒドに対するオキシダーゼ活性は、30℃におけるH202の

生成速度で測定した。その反応液の組成を表1-2に示した。H20,の生成量は

30℃において5分間、555㎜の吸光度値より算出した。本研究では、1分間

に1pm。1のH202を生成する酵素量を1unitと定義した。

表1-2オキシダーゼ活性測定の反応組成

Glycolaldehyde

4-Aminoantipyrine

TOOS*

Potassium phosphate

Peroxidase

Enzyme

50.0

 0.6.

 1.94

100.0

 6.7

(pmol)

(units)

Reaction total 1. O ml (pH 6.5)

* TOOS:ノVethyl-7VL(2-hydroxy--3-sulfopropy1) -3-

    methylaniline sodiu皿 salt dehydrate

(2)スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性

 SOD活性は、キサンチンのキサンチンオキシダーゼによる酸化で生じる活

性酸素を用いることで測定することができる。よって、本研究においては

以下に示した二っの方法によりSOD活性を測定した。

①チトクロームe法(Method 1)

 この測定法はMcCordとFridovichの方法[9]を応用し、活性酸素によ

るチトクロームcの還元速度よりSOD活性を求める方法である。チトクロ

ームcの還元速度は、表1-3に示すように50 rmo lキサンチン、10 rmol

チトクロームc、100㎜01EDTA、75 pmolリン酸カリウムとAODまたは

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SODを含む反応液(0.9m1)を25℃で5分間インキュベートした後、2.7m

unitsのキサンチンオキシダーゼ溶液(0.1皿1)を添加し、3分間の反応

における550㎜の吸光度値の変化より確認した。

表1-3SOD活性測定の反応組成(Method 1)

Xanthine

Cytochrome c

EDTA

Potassium phosphate

AOD or SOD

50.0

10.0

100.0

75.0

(㎜ol)

(pmol)

Incubated at 25°C for 5 min

Xanthine oxidase 2.7  (munits)

Reaction total L O ml (pH 7.8)

②過酸化水素法(Method 2)

 この測定法は活性酸素とSODの反応により生じる過酸化水素の生成速度

よりSOD活性を求める方法である。過酸化水素の生成速度は、表1-4に示

すように50nmoエキサンチン、100 nmol EDTA、75 pm。1リン酸カリウム、

0.24pmol 4-Atninoantipyrine、0.78 pmol TOOSと2.7munitsペノレオキ

シダーゼおよびAODまたはSODを含む反応液(O.・9 ml)を25℃で5分間イ

ンキュベートした後、2.7 m unitsのキサンチンオキシダーゼ溶液(O. 1 ml)

を添加し、3分間の反応における555㎜の吸光度値より算出した。本研究

では、この反応条件において、1分間に1pmolの過酸化水素を生成する酵

素量を1unitと定義した。

7

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表1-4SOD活性測定の反応組成(Method 2)

Xanthine

EDTA

Potassium phosphate

4-Aminoantipyrine

TOOS*

Peroxidase

AOD or SOD

50.0  (nnio 1)

100.0

75.0  (pmo1)

 0.24

 0.78

 2.7  (units)

Incubated at 25℃for 5 min

Xanthine oxidase 2.7  (munits)

Reaction tota1 1. O ml (pH 7.8)

* TOOS:ノザーethyl-.t「V-(2-hydroxy-3-sulfopropy1) -3-

    methylaniline sodium salt dehydrate

酵素精製

 酵素精製は10~15℃で行い、緩衝液としてリン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)

を用いた。

①粗酵素液の調製

  培養液9.OLより得られた菌体(湿重6.4g)を10雌緩衝液に懸濁し、

 ガラスビーズを用いてMulti-beads shockerで破砕した。得られた菌体破砕

 液を遠心分離(10,000rp皿,10 min)し、上清画分を粗酵素液とした。

②DEAE-Toy。pearlカラムクロマトグラフィー

  ①の操作により得られた粗酵素液を、10mh緩衝液で平衡化した DEAE-Toyopearlカラム(2.5×17 cm)に通液した。同カラムを600 mlの10 mM

 緩衝液で洗浄後、吸着した酵素を10耐緩衝液と0.5MNaCl 10緬緩衝液(各

 300ml)による直線的濃度勾配法で溶出した。得られた活性画分を混合し、限

 外濾過法で1.OmS/cmまで脱塩した。

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③Hydr・xyapat iteカラムクロマトグラフィー

  ②の操作により得られた部分精製酵素液を5mh緩衝液で平衡化した

 Hydroxyapatiteカラム(1×6 cm)に通液した。同カラムを50 mlの5耐緩

 衝液で洗浄後、吸着した酵素を5㎡と300 mM緩衝液(各25 m1)を用いた直

 線的濃度勾配法で溶出した。得られた活性画分は、混合後に限外濾過法で濃

 縮した。

タンパク質定量

 タンパク質濃度はProtein Quantification Kit(Dojindo Laboratories,

Tokyo)を用いてBovine serum albuminをスタンダードとして測定した。

高速液体クロマトグラフィー一(HPLC)

 ゲル濾過はHPLC用カラムTSK gel G3000SWxL(0.75×30 cm, Tosoh, Japan)

を使用し、室温において流速0.5m1/min’で0.1MNaCl含有50 nhリン酸カリ

ウム緩衝液(pH 7.0)を用いて行い、280 nmの吸光度を測定した。

SDS-PAGE

 SDS-PAGE }ま、 Precision Plus Protein Standards (Bio-Rad japan, Tokyo)

を分子量マーカーとしてLae㎜1iの方法[10]に従って行い、タンパク質の染

色にはCoomassie Brilliant Blue R-250(CBB R-250)を用いた。

分子量測定

 精製酵素の分子量はHPLCを用いたゲル濾過により標準タンパク質としてJack

bean urease hexamer (545 kDa)、 ack bean urease trimer (272 kDa)、 bovine

serum albu皿in di㎜er(132 kDa)、 bovine serum alburnin monomer(66 kDa)お

よびchicken egg albumin(45 kDa)を用いて算出し、酵素を構成するサブユニ

ットの分子量はSDS-PAGEにより算出した。

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反応生成物の分析

 50蜥グリコールアルデヒド、0.02unitsの精製酵素および30 iiiMリン酸緩

衝液(pH 6・・5)を含む反応液(300 pl)を30℃で3時間インキュベートした。

この反応液10 plを用いて工sobeとNishiseの方法[6]に従い、 MBTH 1または

2の反応を行った。それぞれのMBTH反応により得られた生成物を、 Isobeと

Nishiseの方法[6]に従ってHPLCにより分析した。

等電点電気泳動

 等電点は、日本エイドー社(Tokyo)製泳動装置(NA-1720)を用い、 Ampholine

でpHを3.5~10.0の範囲に調整したショ糖により密度勾配を形成させた条件下

で、4℃、400Vで48時間電気泳動を行った。泳動後に溶液を1.Om1ずつ分取

し、4℃でpHを測定した。

NH2末端アミノ酸シークエンス

 精製酵素のN末端アミノ酸配列は、Applied Biosystems gas-phase protein

sequencerにより決定した。

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結果

微生物の分離

 エチレングリコ・一・一一ル培地を用いて、実験方法に述べた手順でグリコールアル

デヒドに対するオキシダーゼ活性を指標として新規オキシダーゼのスクリーニ

ングを行った。

① エチレングリコール培地を用いて3度の集積培養を行い、20種の異なる土

  壌サンプルよりグリコL-一・・ルアルデヒドに対してオキシダーゼ活性を示す

  350以上の菌株を分離した。

② ①で得た各菌株の菌体破砕液を調製し、メタノール、エチレングリコール、

  グリセロール、グリコールアルデヒド、グリオキサール、グリオキシル酸

  および、グリコール酸に対するオキシダーゼ活性を調べた。そして、グリ

  コールアルデヒドに対する高いオキシダーゼ活性を示した14菌株を選抜

  した。

③ ②で選抜した14菌株をエチレングリコール培地でそれぞれ培養し、得られ

  た各菌株の無細胞抽出液を調製した。各無細胞抽出液をDEAE-Toyopear1

  カラムクロマトグラフィーに供した結果より、グリコールアルデヒドに対

  して高い選択性を有するオキシダーゼを産生する菌株として分離菌311株

  を選抜し、以後の研究に用いた。

分離菌株の同定

 選抜菌311株の系統学分類および、生化学的特長について解析を行った。311

株由来遺伝子の16S rRNAシークエンスの結果および、表1-5に示した形態学

的特徴、表1-6の生化学性状試験の結果より本菌株がPaenibaoillus属に属し

ていることが示唆された。また16S rRNAシークエンスの結果から、本菌株が

P. fa viaρoras GMPO1(99.4%)、P. cineTis LMG18439(99.4%)および、

P垣ゴzo5ρ加θ坦θCECAPO6(98. 9%)と高い相同性を示すことが明らかとなった。

しかしながら、分離菌株は硝酸塩還元性などの生化学試験および、生育試験に

おいて上記の3種の菌株とは異なる結果を示した。これらの結果より、分離菌

株をPaenibaciUus sp. AIU 311株と名付けた。また、本菌株と近縁株との系

統樹を図1-1に、顕微鏡写真を図1-2に示した。

11

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表1-5分離菌株の形態的特徴

培養温度 30℃

細胞形態 桿菌(0.8×2.0~3.0)

グラム染色一

胞子の有無 十

運動性 十

コロニー性状

円形

?諸g状

激塔Y状

s透明

Nリーム色

生育温度試験

@(℃)

37 十

45 十

カタラーゼ活性 十

オキシダーゼ活性 十

+:陽性 一:陰性

12

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表1-6分離菌株の生理・生化学試験

硝酸塩還元

インドール産生

アセトイン産生

アルギニンジヒドラーゼ

ウレアーゼ

エスクリン加水分解

ゼラチン加水分解

β一ガラクトシダーゼ

50℃での生育

5%NaCl含有培地での生育

+:陽性 一:陰性

表1-7 資化性試験

ブドウ糖

D一アラビノース

L一アラビノース

グリセロール

マンノー…ス

ラクトース

マンニトール

Jis’[一アセチルー「グルコサミン

マルトース

グリコーゲン

2一ケトグルコン酸

+:陽性 陰性

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     Pe eniba ciヱヱ侮雄ヨロ「i canffs mH21T

Paeni、●日ロ」fi」1as ehibensis JCM 9905T

Pee々」rbe●ilヱas azot「edaceas C}{IT

        ooロkii LMG 18419T

正セ三ε~々1占∂σiii us ρ.Z」7erゴ{ヌLi{G 18439T

Pee血ibg●iilas」Fe vi’sρor「us GMPOIT「

Pa帥エ加・ii」as thizρ」sphgat「ec CECAPO6T

Pa enibヨ ciU as SP.AIU 311

Paen伽σ∫」山ぷgia●anoirticas DS)ll5162T

刀ヨ畠盆1、占呂σ∫」ヱ{£5」3{ご亡貼JC)[9073T

Pa enthaロ」r.~」貼却assiヱieusis 2301e65T

Escfieriofiia ool i ATCCI1775T

図1-1Paenihacillus sp. AIU 311株と近縁株との系統樹

14

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図1-2Paenibacillus sp. AIU 311株の顕微鏡写真

酵素生成に対する培養日数の影響

 本Paenthacillus sp. AIU 311株を150 mlエチレングリコール液体培地(500

ml容坂ロフラスコ)を用いて30℃で4日間培養し、1日ごとにグリコールアル

デヒドに対するオキシダーゼ活性を調べた。その結果、図1-3に示すようにグ

リコs-・一・Eルアルデヒドオキシダーゼ活性は培養2~3日目に最大となり、4日目に

も活性は減少しなかった。

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(2.0毛

E

8t5㌃

§

玉10主毛

2田言

0.0

0 1    2    3Cuitivation time(days)

4

0.4

O.3

 富 8 9α2言

 占

0」

0

・一怐|Enzyme activity

-O-Growth

図1-3酵素生成量の経時的変化

酵素の精製

 Paθnibacillus sp. AIU 311株が産生するグリコールアルデヒドに対して活性

を示すオキシダーゼは、表1-8に示すように、DEAE-Toyopear1および

Hydroxyapatiteを用いた2種のクロマトグラフィーにより約560倍に精製する                          でことで、電気泳動的に単一に精製された。精製酵素は図1-4に示したように、

Native一およびSDS-PAGEの両方で、単一のタンパク質のバンドを示した。

16

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表1-8Paθnib∂oillus sp. AIU 311株が産生する酵素の精製

Step Activity’  Protein    Specific activity   Recovery

(unitS)     (mg)     (Unit/mg protein)     (%)

Purification

 (fold)

Ce11-free extract

DEAE-Toyopearl

Hydroxyapatite

0.204

0.090

0.046

142

 4.0

 0.057

0.OO144

0.0225

0.807

100

44

23

 1.0

16

560

*グリコールアルデヒドに対するオキシダーゼ活性

A

1嘩・

B c ld)a

150

100

75

50

37

25

A:Nl, tixre el1ZNttne

         ●

B:Dellatllred e1必互11e           -

C:Stalldard prote血1S

図1-4グリコールアルデヒド酸化酵素の電気泳動

17

Page 20: 酸化酵素に関する研究 - iwate-u.repo.nii.ac.jp

分子量の測定

 ゲル濾過により算出したグリコールアルデヒドオキシダーゼの分子量は49

kDaであり、SDS-PAGEにより算出したサブユニット分子量は24 kDaであった(図

1-4)。これらの結果より、本酵素が同一のサブユニット2つで構成されている

ことが示唆された。

精製酵素の吸光スペクトル

 図1-5に示したように、本酵素は可視領域に極大吸収を有していなかった。

この結果より、本酵素が補酵素としてフラビンを有していないことが示唆され

た。

8焉

£o豊く

1.0

0.5

1,nl

Li 1

LF 

lL-一.一一一一一...一一一一一一.一..一一一一一一一一.一.-

 300   400   500   (SOO

    Wevelength(nm)

図1-5Paθnibacillus sp. A工U 311株が産生する酵素の吸光スペクトル

18

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基質特異性および反応動力学定数

 精製酵素を用いてアルコ・一一一一ル類およびアルデヒド類に対するオキシダーゼ活

性を調べた。その結果、本酵素はグリコールアルデヒドおよびグリセルアルデ

ヒドに対して高いオキシダーゼ活性を示したが、一級、二級および二価のアル

コールに対する活性は認められなかった。また、ホルムアルデヒド、アセトア

ルデヒドやプロピルアルデヒドなどの短鎖のアルデヒド類に作用したが、その

活性はグリコールアルデヒドに対する活性と比較して非常に低いものであった

(表1-9)。本酵素のグリコールアルデヒドおよび、グリセルアルデヒドに対

する血値はそれぞれ13.2・mM、7.5mMであり、輪x値は1.1μmoユ/min/皿g protein

および0.8pmo1/min/mg proteinと算出された。

表1-9Paenibacillus sp. AIU 311株が産生する酵素の基質特異性

Substrate (20 mM) Relative

activity*(%)

Substrate (20 mM) Relative

activity*(%)

Glycolaldehyde

Glycelaldehyde

D-Arabinose

D-Ribose

D-Lyxose

For皿aldehyde

Acetaldehyde

Propylaldehyde

Butyraldehyde

Isobutyraldehyde

Valeraldehyde

Methylglyoxal

Benza].dehyde

100

70

 0

 0

 0

 2

 4

 6

 1

 0

 0

 0

 0

Methanol

Ethanol

1-Propanol

1-Butanol

2-Propano 1

2-Butano1

2-N[ethoxyethanol

Ethy]ene glycol

1,2-Propanediol

1,3-Propanediol

Glycerol

Glico]、ic acid

Glyoxylic acid

0

0

0

0

0

0

0

3

0

0

0

5

0

*グリコールアルデヒドに対するオキシダーゼ活性を100%とした相対活性

19

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グリコールアルデヒド酸化反応

 精製酵素を用いて、グリコールアルデヒドを基質とした酵素反応を行った。

この反応液をサンプルとしてMBTH-1の反応を行い、その吸光スペクトルを測定

した結果・420および450nm付近に極大吸収が認められた。このMBTH-1反応の

420、450㎜付近における極大吸収は、グリオキサールの特徴的な吸光スペクト

ルである[6]。また、反応液に対してMBTH反応を行った溶液をHPLCで分析し

た結果も、グリオキサールの溶出時間と一致した。これらの結果より、本酵素

はグリコールアルデヒドをグリオキサールに変換する反応を触媒すると推定さ

れた。また、酵素の活性測定よりグリコールアルデヒドを基質としてH20、が生

成されることが明らかとなっている。よって、」Paenibacillus sp. AIU 311株が

産生する酵素は、反応3に示すようにグリコールアルデヒドを酸化反応でグリ

オキサールに変換すると結論された。

OHC-C2HOH + 02 -一一  〇HC-CHO + H202

反応3 グリコールアルデヒドのグリオキサールへの変換反応

酵素活性に対するpHおよび温度の影響

 グリコールアルデヒドの酸化に対するpHの影響は、 pH 5.0~7.0でオキシダ

ーゼ活性を測定することにより調べた。その結果、グリコールアルデヒド酸化

活性は、pH 6.5で最大となった(図1-6)。また、酵素のpH安定性はpH 5.5~

8.・0で40℃、1時間加熱し、酵素の残存活性を測定して調べた。この結果、本酵

素はpH 5.5~8.0で80%以上の活性が残存した(図1-6)。

 グリコールアルデヒド酸化活性に対する温度の影響を調べるため、pH 6.・5で

30~60℃の温度でオキシダーゼ活性を測定した。この結果、50℃で最大活性が

認められた。また、酵素をpH 6,5、20~70℃で1時間加熱した結果、70℃で加

熱した場合でも60%以上の残存活性が認められた(図1-7)。

20

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        100                       100

        80                       80

       審                    皐       x                            工

       34°       4°匡

         0                       0

          5      6      7      8

     ’              pH

図1-6 Paθnibacillus sp. AIU 311株が産生する酵素の活性と安定性に対するpHの影響

         100                      100       ・

          80                     80

        8                   書

        ξ,。        6。曇        る                                           8   -一●一一〇ptimum temp

        …・    ・i-“ Temp s’ebility

        竃4°         4°匡

          20                      20

          0    ’                0

           20     3{〕    41]    50     60     70

               Te叩eratureく℃)

図1-7Pa enibaoiU. us sp. AIU 311株が産生する酵素の活性と安定性に対する温度の影響

                   21

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酵素活性に対する化合物の影響

 グリコールアルデヒド酸化活性に対する化合物の影響を調べるため、活性測

定において反応液中に1iTi)vlの金属、キレート試薬および各種化合物を添加して

活性を調べた。その結果、本酵素活性はヒドラジン、フェニルヒドラジンなど

のカルボニル試薬やキレート試薬により阻害されたeまた、Mg2+、 Ni2+、 Co2+や

Zn2+を添加した場合に活性の低下が認められたが、Mn2+を添加した場合には約1.6

倍の活性の上昇が認められた(表1-10)。

表1-10グリコールアルデヒドオキシダーゼ活性に対する各種化合物の影響

Chemicals

 (1mM)

Relative

activity’ (%)

Chemicals

 (1rnM)

Relative

activity* (%)

None

Hydroxylamine

Hydrazine

Phenylhydrazine

Semicarbazide

o-Phenanthroline

EDTA

8-Hydroxyquinoline

Ct,OL’-Dipyridyl

Monoindoacetic acid

100

69

59

 9

56

81

66

50

33

60

MnC 12

MgC 12

NiCl2

CoCl2

FeCl2

ZnCl2

CuCl2

157

50

50

50

83

67

90

*化合物無添加における酵素活性に対する相対活性

等電点電気泳動

 Ampholineを用いた等電点電気泳動の結果、グリコールアルデヒドに対するオ

キシダーゼ活性はpH 3.2付近にのみ確認された。この結果より、本酵素の等電

点がpH 3.2付近であることが明らかとなった。

22

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NH,末端アミノ酸シークエンス

 精製酵素のN末端アミノ酸シークエンスを分析した結果、アミノ酸配列は

AFQLPPLPYP肋ALEPHIDAQTMEIであった。この配列の相同性検索を行った結果、他

の菌株由来のアルコールオキシダーゼとは相同性が認められず、図1-8に示し

たように微生物由来のSuperoxide dismutase(SOD;EC 1.15. L l)との高い相

同性が認められた。

AIU311   AFQC125   MAFEK-16   MAYKGeotaGi71ers M P F E

LPLP

P

KLPYPNDALEPHLPYP

LELPYAALPALPYP

ANNY

NALEPHALEPH

DALEPH

DDDD

AQEAEAKE

TMTMTMTM

AIU311

C125

K-16

Geobacillus

Glycolaldehyde oxidase from .Paenゴ」らaeillus sp. AIU 311

SOD from B,ヨeillus、占alodurヨ刀5 C-125

SOD from B,ヨcillus o1∂usii KSM-K16

SOD from Geobacゴ11us theiTmoleo vorans

図1-8Paenibacillus sp. AIU 311株が産生する酵素のN末端アミノ酸配列の比較

Paenibaeillus sp. AIU 311カS産生するAODのSOD活性

 Pa・en・thaciilus sp. A工U 311株が産生するAODのSOD活性をMethod 1により

測定した結果、AODの添加に伴う550 r血の吸光度値増加量の低下が認められた

(図1-9A)。また、 Method 2による測定においてはAODの添加に伴う555㎜

の吸光度値増加量の上昇が認められ(図1-9B)、これらの結果より本AODが

SOD活性を有していることが明らかとなった。さらに、 Methed 2による測定か

ら算出された本酵素のSOD活性は、グリコールアルデヒドに対するオキシダー

ゼ活性の1.6倍高い値だった。

23

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 目

0.16

0.14

o鵠 0.12

)8宕

 邑

且く

o.lo

0.08

0.06

A

一AOD     /tV’ -4情’ノ

+AOD

o 1 2 3

Rea(沈io匝time (min)

0.10

   O.08

ハ目

DIfl O.06

)8

窟O.04 蓉

ca

0.02

.0.00

0 1 2 3

Reaction time (min)

図1-9Paθnibacilius sp, A工U 311が産生するAODのSOD活性

24

Page 27: 酸化酵素に関する研究 - iwate-u.repo.nii.ac.jp

SODのAOD活性

 含有する金属イオンの異なる3種類のSOD(Mn2+一, Cu2+, Zn2+一, Fe正SOD)の

グリコールアルデヒドおよびグリセルアルデヒドに対するオキシダーゼ活性

を調べた。その結果、表1-9に示したように全てのタイプのSODに両基質に

対するオキシダーゼ活性が認められた。特にMn2+-SODはグリコールアルデヒド(図

1-10A)、グリセルアルデヒド(図1-10 B)に対して高いオキシダーゼ活性が認め

られた。さらに、このMn2+-SODの両基質に対するオキシダーゼ活性の比率は、

Paenibacillus sp. AIU 311株由来のAODの示す活性比率(66%)と近い値を

示した(表1-11)。

表1-11SODおよびPaenibaoilius sp. AエU 311由来AODの酵素活性

Enzyme activity (%)

Subs七ra七e P-AOD’ Mn2+-SOD Cu2÷, Zn2+-SOD Fe2+-SOD

Superoxide dismutase

Oxidase

Glycolaldehyde

Glyceraldehyde

100

65

43

100

53

36

100

21

23

100

5

3>

* P-AOD:AOD from Paenibacゴ11us sp. AIU 311

25

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 目

8壽

 白

 目

58目

sき司

0ユe

O.08

0.06

0.04

0.e2

0.00

   0

0ユ0

0.08

0.06

0.04

0.02

0.OO

A

  1     2

Rea(此ion time(mi皿)

3

B

    ’_]血辞_SOD

    0     1     2     3

        Reaction time(皿i皿)

図1-10Mn2+-SODのアルコールオキシダーゼ活性

            26

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考察

 グリコールアルデヒドに対して高い酸化活性を有する菌株として土壌中

よりPaenibacillus sp. AIU 311株を見出し、本菌が産生するオキシダー

ゼを精製し、その諸性質を明らかにした。本酵素はグリコールアルデヒド

をグリオキサールに変換し過酸化水素を生成していることから、グリコー

ルアルデヒドのヒド巨キシル基を酸化することが明らかとなった。・また、

この本オキシダーゼはグリセルアルデヒドにも作用したが、一級、二級の

アルコール、グリセロールには作用しなかった。この基質特異性は、これ

までに報告されている微生物由来のAODとは大きく異なっていた[11-15ユ。

さらにメタノール酵母や糸状菌由来のAODの吸光スペクトルが380および

450nm付近に極大吸収を示すのに対し、本菌の酵素は可視領域に極大吸収

は認められなかった。また、N末端アミノ酸配列は、他の微生物に由来す

るAODの配列と相同性を示さず、これら他菌株由来AODのN末端アミノ酸

配列中に保存されているG-X-G-X-X-GのFAD-binding m。tif[16-21]も有

していなかった。これらの結果より、Paenibacilius sp. AIU 311株が産

生するAODは他菌株由来のAODとは異なるものであった。また、基質特異

性、吸光スペクトルおよび分子量などから、グリセロールオキシダーゼ

[22,23]やアルデヒドオキシダーゼ[24, 25]とも異なる酵素であること

が明らかとなった。以上の結果より、本Paenibacillus sp. AIU 311株の

産生するオキシダーゼは、アルデヒドアルコールの水酸基を酸化するアル

コールオキシダーゼであると考えられた。また、本酵素はN末端アミノ酸

配列の相同性検索において微生物由来のSODと高い相同性が認められ、 SOD

活性を示した。さらに、微生物由来のSODのグリコールアルデヒドとグリ

セルアルデヒドに対するオキシダーゼ活性を調べた結果、Mn2+一, Cu2+, Zn2+一,

Fe2+-SODの全てにオキシダーゼ活性が認められた。また、 Mn2+-SODの両基質

に対するオキシダーゼ活性の比率は、Paenibacillus sp. AIU 311株由来

のAODの示す活性比率と近い値を示した。これらの結果から、本Paenibacillus sp. AIU 311株の産生する酵素がMn2’-SODと非常に近いグ

ループに属する酵素であることが示唆された。

 このPaenibaciUus sp. AIU 311株が産生する酵素のさらなる解析を行

うため、続く研究において酵素遺伝子の解析、クローニングとE.・coliにお

ける発現について検討した。

27

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第2章

paenibacil!us sp. AIU 311が産生するAOD遺伝子のクローニングとE.・co2i

における発現

 第1章に示したように、Paeni’baeiUus sp. AIU 311株由来のアルコールオキ

シダーゼは、グリコールアルデヒドなどのアルデヒドアルコール類に対してオ

キシダーゼ活性を示すが、脂肪族アルコール類やグリコール酸などに対して作

用しないAODであった。また、本酵素のN末端アミノ酸配列は既存のAODの配

列とは相同性を示さず、微生物由来のMn2+-SODに対する高い相同性が認められ

た。そして、グリコールアルデヒドの酵素反応による生成物を検討した結果、

グリオキサールが確認され、本酵素を用いたグリコールアルデヒドのグリオキ

サールへの変換の可能性が見出された。

 しかし、Paenibacillus sp. AIU 311株のAOD生成量は少なく、本酵素のさら

なる解析は困難であった。

 そこで本章では、」Paenibacillus sp. AIU 311株由来AOD遺伝子のヌクレオチ

ドシークエンスおよびE.・coii BL21株での発現について検討した。

28

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実験方法

培地と培養条件

 Chromosomal DNAを抽出源となるPaenibacillus sp. A工U 311株は、エチレン

グリコール培地(1%ethylene glyco1,0. 2% NH4NO,,0.1% K2HPO,,0.1%NaH2PO4,

0.05%MgSO4・7H20,0.02%CaC12・2H20, and O.05%yeast extract, pH 7.0)を

用いて30℃で3目間の振とう培養した。また、酵素遺伝子のクローニングと強

発現のhost cellとして用いた大腸菌は、アンピシリン含有(50 pg/ml)

Luria-Bertani(LB)培地(表2-1)で20時間振とう培養した後、isepropyl一β一D(一)-thiogaユactopyranoside(工PTG,1. O mM)を添加してさらに5

時間の振とう培養を行った。

表2-1LB培地組成Pepton

NaCl

Yeast extract

1.0 (%)

1.O

O.5

pH 7.0

精製酵素のLysyl endopeptidase消化および内部ペプチドの分離

精製酵素のLysyl endopeptidase消イヒ

①精製したAOD(1 nmo1)を遠心濃縮により乾燥させた後に8MUrea含有50蜥

 Tris-HC1(pH 9. 0)を25μ1添加し、37℃で1時間インキュベートした。

②インキュベート後、0.006 nmo1 Lysyl endopeptidase含有50耐Tris-HC1(pH

 9.0)を25pl添加し、さらに30℃で6時間インキュベートした。

29

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精製酵素の内部ペプチドの分取

 酵素のLysyl endopeptidaseによる消化により得られたペプチドの分取は、

以下に示した条件でSMART system(Amersham Bi。science)を用いて行った。

カラム

測定波長

流速

グラジエント時間

A液B液

μRPC C2/C18 SC2.1/10  (Gel volume O.35 ml)

214,280㎜100pl/皿in

60min (B液:0 ~ 100%)

0.1%TFA

O.1%TFA含有80%アセトニトリル

Geno皿ic-DNAおよびPlas皿id-DNAの分離

Genomi c-DNA

 鋳型となるPa enibaciilus sp. AIU 311株由来total DNAの抽出は、以下に

示した方法で行った。

①Paenibacillas sp. AIU 311株菌体(培養液100 m1分)を、1ysozy皿e含有

 TES緩衝液(10・mM EDTA、25%sucrose含有50 mM Tris-HC1緩衝液,(pH 8.0))20

 mlに懸濁し、0.5MEDTAを2ml添加して30分間緩やかに撹拝した。

②①の溶液に10%SDS溶液を2ml、 protease K 20 mgを加えて50℃で4時間

 インキュベートした後、フェノール1クロロホルム溶液(50 : 50,v/v)20 ml

 を添加して4℃で一晩緩やかに撹絆した。

③②の溶液を遠心分離し、得られた上清画分に対して1/10量の3.OM酢酸ナ

  トリウム溶液(PH 5.2)および、約2.5倍量の冷却エタノールを加えて抽出

 されたDNAを分離した。.この操作より得られたDNAを70%エタノールで洗浄

 した。

30

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Plas皿id-DNA

  plasmid-DNAは、 QIA prep Spin Miniprep kit(Q互AGEN, USA)を用いて

菌体より抽出した。

Degenerate PCRによる酵素遺伝子のクローニング

 精製酵素のN末端アミノ酸配列および1ysyl endopeptidase消化による内部

アミノ酸シークエンスより、Sense(S1)およびAntisense(A1)primerを構築

した。その配列は

 primer S1

  5’ -CA(T, C)AT(A, T, C)GA(T, C)GC工CA(A, G)AC(A, T, C, G)ATGGA(A, G)AT-3’

 primer A1

  5’ -TA(A, G)TA(A, T, C, G)GC(A, G)TG(T, C)TCCCA(A, T, C, G)AC(A, G)TCIA-3’

である。PCRは、 TaKaRa Ex Taq DNA poly皿erase(Takara Shuzo, Kyoto, Japan)

を用いて行った。反応液(50 pl)には、20㎜ol dNTP、2.5units TaKaRa Ex Taq

DNA polymerase、0.5pmol primerおよびO. 5 pg chromoso皿al DNAカ§含まれて

いる。PCRは94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で1分間の熱処理を1サイクル

とし、30回繰り返した。得られたPCR産物をpT7 Blue vector(Novagen, Germany)

に導入し、CEQ Dye Terminator Cycle Sequencing Kit(Bec㎞an Coulter Inc.)

を用いたDNA sequencer CEQ200 XL(Beckman Coulter Inc, CA, U. S. A.)でDNA

配列を決定した。

Southern hybridization

 Paeniha,cillus sp. AIU 311由来chromosomal DNAを制限酵素(Baa7 H工、 ffind

皿、Nde I、 Ps t r、 Sac r、’Sal 1、 Spe 1、 Sph I、肋θ1)で処理した。このDNA

断片を1%アガロースゲルによる電気泳動に供した後、Nitrocellulose membrane

に転写して固定した。プロッティングにより得られたメンブランに対して、ラ

ベリングした先述のPCR断片をハイブリダイゼーションすることで制限酵素を

選択した。

31

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ゲノムライブラリーの作製と酵素遺伝子のクローニング

 paenibaciUus sp. AIU 311株のゲノムライブラリーは、 DNA断片をpT 7 Blue

cloning vector(Novage)にライゲーションして作製した。 Tota110 plのライ

ゲーション反応液中には、5plのLigation solution I(DNA Ligation Kit

Ver.2.1, Takara Shuzo)、1pgのNde I処理cDNAおよび100 ngのNdθ1処理

vector DNAが含まれている。この反応液を16℃で24時間インキュベートして

DNA断片をベクターにライゲーションし、得られたプラスミドをE. coli JMIO9

株に導入後に、X-gal(50 pg/ml)、アンピシリン(50 pg/m1)含有LB平板培

地を用いたBlue white seユectionにより導入の確認を行った。プラスミドの導

入が確認されたE.・coliに対し、 Southern hybridizationに用いたものと同じラ

ベリングしたPCR断片をプn-一ブとして酵素遺伝子導入菌株のスクリ・一・一ニング

を行った。この結果、PaeRibaciilus sp. AIU 311由来chromosomal DNAをNde

Iで処理したDNA断片に酵素遺伝子が含まれていることが明らかとなった。こ

の配列より未知領域である酵素遺伝子の5’一および3’一末端配列を明らかにす

るため、sense primer S2(5’-CAG GTT GGA GAT CAG CTC TTC AAG GC-3’)、

antisense primer A2(5’-CAT GGC TCG TCG TGG ACA AGA GCG GC-3’)を構築

した。このプライマーを用いたPCRおよびDNAシークエンスにより、酵素遺伝

子の全配列の解析を行った。

酵素遺伝子発現用ベクターの作製

 DNAシークエンスにより得られた配列を元に、酵素発現用プライマーとして

NdθIsiteを含むprimer ES(5’-CCC ATA TGG CAT TTC AAT TAC CAC C-3’)

およびIho・1・siteを含むprimer EA(5’-CCC TCG AGC GGC TGT ACG ATT TCC T-3’)

を作製した。これらの発現用プライマーを用いてPaenibaciilus sp. AIU 311

由来cDNAをtemplateとしたPCRを行い、得られたDNA断片(約520 bp)をNde

Iと肋oIで処理し、これを発現用プラスミドpET-21a(+)(Takara Shttz。, Japan)

のNde I-Xho I siteにライゲーションして組み換えプラスミド(pET-GAOX)を

得た(図2-1)。このプラスミドを宿主として用いたE.・coli BL21に導入し、

酵素タンパク質発i現大腸菌(E. coli BL21/pET-GAOX)を得た。

32

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GAOX

Nde l

T7 promoter

Xho I/

     fl origin

pE’「-GAOX

5985bp Amp「

図2-1発現用プラスミドpET-GAOXの構造

無細胞抽出液の調製およびオキシダーゼ活性測定

 E. coli BL21/pET-GAOXを50 pg/m1アンピシリン含有LB培地(5 m1)を用い

て37℃で20時間培養した後、IPTG,1. O iiiMを添加してさらに5時間の振とう

培養を行った。集菌後に10iiiMリン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)1,0m1に懸濁

し、Ultasonic oscillator(lsonator 201M, Kubota, Japan)を用いて菌体を破

砕した。この破砕液を遠心分離(10, OOO rpm,10 min)して得られた上清画分

を粗酵素液とした。

 また、グリコールアルデヒドに対するオキシダーゼ活性は、前章に示した方

法を用いて測定した。

E. eoii発現酵素の精製

E.・coli BL21/pET-GAOXより調製した粗酵素液を、 Ni-charged resinを用いた

アフィニティクロマトグラフィーに供することで発現酵素タンパク質を精製し

た。

33

Page 36: 酸化酵素に関する研究 - iwate-u.repo.nii.ac.jp

結果

精製酵素の内部ペプチドアミノ酸シークエンス

精製酵素のLysyl endopeptidase消化により7つのペプチド断片(図2-2 P1

~7)が得られたので、このペプチドのアミノ酸配列をアミノ酸シークエンサ

ーにより分析した。そして、この配列を他の微生物が産生するSODのアミノ酸

配列と比較して相同性を調べて、図2-2の配列を推定した。次にこの配列より

mix primerを構築し、 degenerate PCRを行った。

34

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H terロi草al + P1

Alu

BHS

Bcs

GTS

Bss

M 王正

MYKMpr正

閉ME

LPPLPYPNI〕ALEPH王DLP       A1正PHII〕

LELPYAA  ALEPH王DLP      DALEPHID

LPELPYAYDALEPHID

AQ

EA

EA

KE

KE

TH 正 IHHTH N IHHτM N IHHTM N IHHTH 工 IHH

DRXgKHCKHTKHTKH

HNTYVTNLNAALEHNTYVT[目LNAAL£

HNTYVTNLNAALEHNTYVT卜」LNAA1正

HNTYVTNLNI(AVE

N咽PGHSAGHAA

剛DGNTA

P2 P3

Alu

BHS

Bcs

GTS

Bss

EKSIEKSI圖 KSL

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EEL調i

III

ISNLI)SΨPENI盈TAVRNNGI]GHANHSlrWiili灘iiiiii㌶liiiiil鷹{

VAI)11)SVPENIETAVRNN〔:{三GHANHKLrve

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P K Gα DK P N G

P N αα GA P 工 G

P N GG GE P T G

P N GG G正 P T α

P N G暇 GE P T G

L

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A

A

H ?5 P6

Alu

BBS

Bcs

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BSS

LA

LALA

LA

LA

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Rr〔lsGwAwLvvRFGs〔;veAWLvvRF國GW^鼎Lvv

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DK

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NN鵬NNNGENNGK

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L

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L

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AV

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EI

EI

正1

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P7

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BHS

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s

s

PLMEα口 TPΨ L〔】LDΨW五HAYY1κ

PLMEG K TPI 瓦GLDΨWEHAYYL N

P工 SEG K TPI LGLDVWEHAYH N

PI ME鵬 K TPI LGLDΨWEHAYYLKPL SE鵬 K TPI L〔]LDVWEH再YY工N

NYQNRNYQNR

RPDYIAAFwNv L

RPD咽^FWNVIVRPDYIAAPWト}Ψ V

RP国YIAAFWNIIv

RPD¥ISAF聾NΨV

NWDVVSKNWDVNWDNWD

酬D

E

E

AKRYNEAVSKRYEA

ΨAKRYSEVIARLYSE

Alu

BHS

Bcs

GTS

Bss

K

AK

AKAKAK

AIU :Glycolaldehyde oxidase fro1且Paθ刀ゴbaciUi/5 sp. AIU 311

BHS :Superoxide dismutase from Bヨcゴlius halodurans C-125

BCS  : Superoxide dismutase from Bacillus clausゴゴ1{SM-K16

GTS  :Superoxide dismutase from Geobacゴ.llus thermoleo vorans

BSS  : Superoxide dismutase from Bacil」「tis sub tilis

図2-2Paenibacillus sp. AIU 311株由来酵素の推定アミノ酸配列

35

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酵素遣伝子のDNAシークエンスおよびクローニング

 paenthaci!!us sp. AIU 311株が産生するAODのN末端および内部ペプチドア

ミノ酸シークエンスの結果より、mix primerを構築した。このプライマーを用

い、Paenibaciilus sp. A工U 311株由来chromosomal DNAをte皿plateとした

degenerate PCRを行い、図2-3に示したSequence 1(約420 bp)の配列を明

らかにした。この配列を用いて、Southern hybridizationおよびColony

hybridizationのためのプロ・一ブを設計した。

 そして、PaenibaoNlus sp. AIU 311株由来chromoso皿al DNAを制限酵素晒

1で処理することで得られたDNA断片中に、プローブと一致するDNA配列が含

まれていることを明らかにし、そのDNA配列を決定した(図2-3, Sequence 2)。

  さらに、このSequence 2より構築したプライマー(S2、 A2)を用いたPCR

により酵素遣伝子のN末端およびC末端のDNA配列を決定し、PaenibaciUus sp.

AIU 311株の産生するAODの遺伝子の全長が618 bpであることを明らかにした

(図2-3,Sequence 3)’(図2-4)。この遺伝子は205のアミノ酸をコードし、

その配列は精製酵素のN末端および内部アミノ酸シークエンスの結果と一致し

た。また、アミノ酸配列からの推定分子量は23.・1kDaであり、これは

Paθnibacillus sp. AIU 311株の産生するAODのSDS-PAGEの結果より推定した

分子量(24kDa)と非常に近い値であった。

 次に、この遺伝子配列より発現用プライマー(ES、 EA)を構築し、酵素遺伝

子DNA断片gaox(図2-4)が得た。

36

Page 39: 酸化酵素に関する研究 - iwate-u.repo.nii.ac.jp

5v ’:奄シ…・誉 ii i……i.一、i、■■■■■■■一■■■■■ゾ斤■3↑

             }一一一一一一仲Al           S1時一一一一一一一→

3∀←一一一一一←一一一一一÷一一■一一一ny’s・    旦

                Seguenee 1

5碑                         ノ』3・

                 Seguenee 2

5冒由一一一圏襲麟翻騒圏一一一→k3’         ←-i--esz       I           l         A2⇒

3∀メー一一一→一一一一一一一十一一一一→戸5・    旦

                 Seguenee 3

5冒 ノ」3t

                            恒EA        ES⇒3†→←■一一一一一一■■一一一一一一一一一一一一一一一一一r!L5†                  旦

              gaex

     5彊翻圏翻璽國圏藤3’

図2-3』一⌒A・U311株由来A・ォ・一=ング

37

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        10        20        30        40        50        60        70        80        90

AT(}角CCRTGATrACGCCAAGCTCTAATACGACrCACTA「RGGGAAAGCrl『GCATGCCrGCRGGTC〔]骨CTCTAGAGGATCrACT白GTCAT骨

       100        1{0        120        130        140        150        160        17〔}        180

T〔iAATCR〔SCCGTCTGC6「TGArrCr貞CCCAAAAAAACA「TAACA〔]GAGGTATTTA「TATG〔ICATTTCAATrACCACCACrTCCATACCC〔葺

                                                      MAFOLPPLPYP

       190      200      210      220      230      240      250      260      270

AAT6AT6CGCTCGAGCC日CACATCGACGCrCAAACGAT6GAAATCeATC骨rGACCGTCACCATAAじRCTT自V〔irAACGAACCTGAAC(]C〔…

 NOALEPHInA嗅丁MEIHHORHHN]『YVT}ILN白      280       290       300      310       320      330       340       350       360

GCTCT66AAAAT6CTCCT(iARCT{…CAAARC月白骨AGCCTTGAAGA6CTGAT.CTCCA自CCτ6GACAGCGrGCCr〔〕A6AACATCCGTACAGCC

  白LENAPELOHkSLEELISHL【)SVPE}{IRTA      370       380       390       400       410       420       430       44〔〕       450

GTrC6CAACAACGGCGGCGG貞CACGCTA貞CC白CτCCCI「TTTCfGGGAAATCAτC6CCCC「負AAGGCGGA〔i貞C自AGCCA貞酋CG6CCT「CTG

 VRHH66{≧H∩}「HSLFWEIIAPK日6BkP}IGI_L      460       470       480       430       500       510       520       530       540

GC「Ct…A〔iCGA7CGRCR〔…TGAGCTTGGC(…GCTTGGRCAAATrCAAGGAAGAATrCACCeAAGCGGCrACAACCCGrrTCGGCAGC〔]GC丁G〔…

 白Q白IDSEL〔〕喧LDKF}くEEFrK曲A「TRF〔〕S6W      550      560      570      580      590      600      {≧10      620      630

GCATGGCTC喧rC6T(〕G員CAAGAACGGCAAACT〔1〔]CTGrAACrAGCAC〔…CCTAACCAA〔…ACAACCC〔]C]『GATGGA削iGTCAAACACC員GTC

 白WLVVOKHGKL白VTSTP囲口DNPLME〔iQTPV      640       S50       660       670       680      690       ?00       710       720

CTCGGI’CrGGRTGTTTG〔SGA〔〕C貞TGCTTACTACCT(]nAAr白CCAAAACARACGCCC「{SACTACRTCGCAGCGTTCT〔]GAACGTTCTGA白C

 LG1_OVWEH白YYLKY口NKRPDYIAAFWHメ∨LH      730      740     . 750      760      770      7B〔〕      ?90      800

TGGGArGrrGrCA〔ICAAAC〔SrrACCAGGAAATCGTACAGCCGTAA〔言CT6「ACCT「COCGGAAATRAAGGGG

 W皿VVSHRYOEIΨQPコk

図2-4 Paenib∂c」7加s sp. AIU 311株由来AODのDNAおよび推定アミノ酸シークエンス

ノ「已en1’bacゴ11us sp. AIU 311株由来AOD遺伝子の推定アミノ酸配列の比較

   Paenibaeillus sp. AIU 311株が産生するAOD遺伝子がコードするアミノ酸配

列の相同性検索を行った結果、他菌株に由来するAODとの相同性は認められな

かったが、図2-5に示したようにBacillus caldotenax(72%)、Gθobacillus

Aaμ5加ρ垣1ロ5 HTA426(72%)およびSymbiohacteritLm thermophiltLm IAM 14863

(68%)由来のmanganese superoxide dismutase(Mn2+-SOD)のアミノ酸配列と

高い相同性が認められた。しかし、Cu2+, Zn2+-SODとの相同性は認められず、

Fe2’-SODのアミノ酸配列に対する相同性も低かった(LysinihaciilusSDhaen’cus C3-41 :21%) o

   また、本酵素のアミノ酸配列中にはMn2+-SODに特徴的なDXWEH(STA)(FY)(図

2-5中のアスタリスク)[30ユの配列が認められた。

38

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omOX

BCMS

ぴSTS

Lss

MAFロエ 

嘔lMAFQLPMAYELP

P

A

A

A

Q

LPYPNDALEPHIDA口τMEIHHl;蹴器;B圏ll圖ll:LZYgTNA L E P国1 DCt T MVI H H

LτYAYDAL正PHIDAKT鯛EIHH

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HHNTYVlN工NAALEHHNτYVTNLNAALE  NエYvエNしNAAしEHH回yvNNLN^^ZEHHNTYVTNLNAAVE

i鞠i麗iiiiii閨

GH?EL口Sl(SIEELLR嘔GτErAEKDIN)LIANL

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GKIUtS

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ii議iii嶽iiilliiiilliii罎i{ili圏i團iiii麟ii{iii

DALPAD}(QTAVRNN〔】嘔〔:HANHTLFWEVIAPOGSNIPVOEVAKAIDAI(FGsrDAFR:EEFAκ

                        *  *****

灘i難llliliiliiiiiii難ii職iiii灘iil獺

LSS  IaAPWNVVNΨDVVEAKF口AAK-一一一

GAOX:Glycolaldehyde oxidase from Paeni」うacゴ11us sp, A工U311

BCMS:Manganese superoxide dismutase from Bacゴ11us caldotenax [26]

GKMS :Manganese superoxide dismutase from Ceob∂ei」r.1tis k,ヨustophゴ1us HTA426 [27]

STS ;Superox i de dismutase from 5ンmbゴobacter z’LLη thermephゴltmi IAM 14863 [28]

LSS :Sup eroxide dismutase (Fe) from Lysthゴbactiltrs sphaerictts C3-41 [29]

図2-5Pa eniba cill us sp. AIU 311株由来AODのアミノ酸シークエンスの比較

酵素遺伝子gaoxのE.・eoiiにおける発現および発現酵素の精製

 gaoxをE. cok’BL21で発現させるため、この遺伝子を発現用プラスミド

pET-21a(+)にインサートし、 E. colゴBL21に導入した(E. coii BL2ユ/pET-GAOX)。

この導入菌株を50ロg/m1アンピシリン含有LB培地(5 m1)を用いて37℃で20

時間培養した後、工PTG,1. O mMを添加してさらに5時間の振とう培養を行った。

得られた菌体より無細胞抽出液を調製し、SDS-PAGEにより酵素発現の確認を行

った。SDS-PAGEの結果、図・2-6, Lane Bのように導入菌株の無細胞抽出液にお

39

Page 42: 酸化酵素に関する研究 - iwate-u.repo.nii.ac.jp

いてPaenib∂cillus sp. A工U 311株由来グリコールアルデヒドオキシダーゼと

同じ分子量位置に濃いタンパク質のバンドが認められた(24kDa)。また、こ

の発現タンパク質はアフィニティークロマトグラフィーにより単離精製され

(図2-6,Lane C)、このタンパク質のN末端アミノ酸配列は、 Paenrbacillus

sp. AIU 311株が産生するAODのN末端アミノ酸配列と一致した。

 また、この発現酵素はPaenibacillus sp. AIU 311株の産生するAODと同様

に、グリコールアルデヒドに対するオキシダーゼ活性を示し、大腸菌の培養液1

m1当たりのAOD産生量は、 Pa en thacill us sp. AIU 311株での産生量に比べ約

2.5倍に増加した。

A  B  C D ld⊃a

馨護

雛叢驚,磯

欝バむ

97.4

66.3

42.4

30.0

20.1

A:亙col∫BLZ1∫1)ET-21a(十)

B:丑coI匡BL21①ET・GAOX

C:PUi ified ex-q)ret ‘t ’ion eliz>ttne

D:Stalldard pr⑪teili i

璽。“喜

、㌻壁裏

図2-6E. coli BL21発現酵素のSDS-PAGE

40

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考察

 第1章で述べたように、本研究においてグリコールアルデヒドに対して高い

オキシダーゼ活性を示す酵素を産生する菌株としてPaenibacillus sp. AIU 311

株を土壌より分離した。また、この」Pa・enib∂cゴ71as sp. AIU 311株が産生する

酵素の精製および諸性質の検討を行い、本酵素がこれまでに報告されているAOD

の性質と大きく異なる酵素であることを明らかにした。この酵素のさらなる解

析のため、本章ではPaenibaeilius sp. A工U 311株が産生するAOD遺伝子のク

ローニングおよび酵素構成遺伝子の配列の決定を行った。

 初めに行ったPaenibaciUus sp. AIU 311株の産生するAODのLysyl

endopeptidase消化による内部アミノ酸シークエンスの結果も、前章で示した精

製酵素のN末端アミノ酸配列の相同性の結果と同様に、既知のAODとの相同性

は認められず、Baci!lus haiodurans C-125、 Bacillus elatrsii KSM-K16、

Geobacilius th ermoleo voransおよび、Baci21us subtilis株由来のSODと高い相

同性を示した(図2-2)。また、本研究において構築したプライマーを用いて

得られた酵素遺伝子(618bp)より推定されるアミノ酸配列も、微生物由来の

SODと非常に高い相同性が認められた(図2-5)。

 さらに、E. coli菌体内においてグリコールアルデヒドオキシダーゼ遺伝子

(gaox)を発現させるため、タンパク質発現用ベクターpET 21a(+)のIPTG

inducible T7 pr。m。terの下流にgaoxを組み込んだベクター(pET-GAOX)を作

製した。このベクターをE. coli BL21株に導入して得られた菌体(E. coli

BL21/pET-GAOX)から調製した粗酵素液は、 Paenibaciilus sp. AIU 311株の産

生するAODと同様にグリコールアルデヒドに対する高いオキシダーゼ活性を示

した。また、粗酵素液のSDS-PAGEでは、 AIU 311株由来のAODと同じ分子量位

置に濃いタンパク質のバンドが認められ、このバンドのN末端アミノ酸シーク

エンスはPaenibaeilius sp. AIU・311株由来のAODのシークエンスと一致した。

 本章の研究によって、Paeni’baeillus sp. A工U・311株が産生するAODをE coli

BL21菌体で大量に発現させることが可能になった。したがって、本酵素のさら

なる解析やグリコールアルデヒドのグリオキサールへの変換に関する研究も詳

細に行うことが可能となった。

41

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第3章

グリオキサー一・一・ル酸化酵素の検索・精製および諸性質の解明

 本研究の目的であるエチレングリコールを初発物質としたグリオキシル酸へ

連続的な酵素反応系を確立するには、反応4に示すようなグリオキサールのグ

リオキシル酸への酸化を触媒するが、グリオキシル酸のシュウ酸への酸化反応

を触媒しないアルデヒドオキシダーゼが必要である。

  そこで本章では、グリオキサールをグリオキシル酸に変換するオキシダー

ゼを産生する微生物をスクリーニングし、分離菌が産生する酵素の精製と諸性

質について検討した。

1:一一ll:H一θ一1::1

Glyexal Glyexilie aeid Oxalic acid

反応4グリオキサールおよびグリオキシル酸の酸化反応

42

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実験方法

微生物の分離

①数種の土壌サンプルを用いて、表3-1に示したメトキシエタノール液体培

  地で、3度の集積培養を行った。次に、Leeらの方法[8]を応用し、メト

  キシエタノール平板培地上でグリオキサールに対するオキシダーゼ活性を

  調べ、グリオキサール酸化能を有する菌を分離した(プレートアッセイ)。

② 分離した菌株は、6.Omlのメトキシエタノール液体培地を含む試験管で

  30℃、3日間振とう培養(120strokes/min)した。培養により得られた菌

  体は遠心分離(10,000rpm,10 min)により集菌し、1. O m110蜥リン酸

  カリウム緩衝液(pH 7.0)に懸濁し、 Multi-beads shocker(Yasui Kikai,

  Osaka)を用いて5℃で6分間の細胞破砕を行った。この操作により得られ

  た無細胞抽出液を用いてメタノール、エチレングリコール、グリセロール、

  グリコールアルデヒド、グリオキサール、グリオキシル酸および、グリコ

  ール酸に対するオキシダーゼ活性を調べた。

③無細胞抽出液の活性比較より、グリオキサールに対して高いオキシダーゼ

  活性を示し、グリオキシル酸に対して活性を示さなかった菌株を、150mlメ

  トキシエタノール液体培地(500ml容坂ロフラスコ)で培養した。そして、

  ②と同様にガラスビーズで細胞破砕して無細胞抽出液を調製した。この無

  細胞抽出液をDEAE-Toyopearlカラムクロマトグラフィーに供し、上記の各

  化合物に対するオキシダーゼ活性を調べた。

④①~③の手順により、グリオキサールに対して高い活性を示すオキシダー

  ゼを産生する1菌株を選抜した。

43

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表3-1メトキシエタノール培地組成

2-Methoxyethanol

NaH2PO4

K2HPO4

NH4NO3

MgSO4・7H,O

CaC12・2H20

Yeast extract

1.O (%)

0.1

0.1

0.2

0.05

0. 02

0.05

pH 5.5

分離菌株の同定

 先述したスクリーニングにより分離した菌株を、CM3寒天培地(Oxoid,

Hampshire, UK)上で30℃、2日間培養した。そして工ntraGene Matrix(Bio-Rad,

Hercuies, CA, USA)を用いて16S rRNAを抽出し、 MicroSeq 50016S rRNA

Bacterial Identification Sequence Kit (Applied Biosystems, Foster City,

CA, USA)を用いて16S rRNAの解析を行った。16S rRNA配列の相同性は、 BLAST

programによりGen Bqnk, DDBJおよび、EMBLのデータベースを用いて検索した。

相同性検索の結果より、neighb・r-joining法で系統樹を作製した。

 形態学的特長はCM3寒天培地を用いて調べ、生理学的特長はAPI 50CHB

(bioMerieux, Marcy-1’Etoile, France)を用いて調べた。

分離菌株の培養

 分離菌株を5.Omlメトキシエタノール液体培地を用いて30℃で2日間振と

う培養(120strokes/min)した。得られた培養液3. O m1を150 mlメトキシ=一

タノール液体培地(500ml容坂ロフラスコ)に添加し、同一条件でさらに2日

間振とう培養した。この培養液60皿1を3.OLメトキシエタノール培地(5.OL

容平底フラスコ)に添加し、同一条件でさらに5日間振とう培養した。

44

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オキシダーゼ活性測定

 オキシダーゼ活性は、30℃におけるH202の生成速度で測定した。その反応液

の組成を表3-2に示した。H202の生成量は30℃において5分間、555 nmの吸光

度値より算出した。本研究では、1分間に1 pmolのH202を生成する酵素量を1unit

と定義した。

表3-2酵素活性測定における反応液の組成

Glyoxal

4-AminoantiPy「ine

TOOS*

Potassium phosphate

Peroxidase

Enzyme

50.0

 0.6

 1.94

100.0

 6.7

(pmol)

(units)

Reaction total 1,0 皿1 (pH 6.5)

*  TOOS:」~Lethy1-AiL(2-hydroxy-3-sulfopropyl) -3-

    methylaniline sodium salt dehydrate

酵素精製

 酵素精製は5~10℃で行い、緩衝液としてリン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)を

用いた。

①粗酵素液の調製

  培養液40Lより得られた菌体(湿重50.5g)を10 mh緩衝液に懸濁し、

 ガラスビーズを用いてMulti-beads shockerで破砕した。得られた菌体破砕

 液を遠心分離(10,000rpm,10 min)し、上清画分を粗酵素液とした。

②硫酸アンモニウム(硫安)塩析

  調製した粗酵素液に対して35%飽和まで硫安を添加し、生じた沈殿を遠心

 分離により除去した。同様に、得られた上清画分に対して硫安を65%飽和ま

45

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で添加することで得られた沈殿画分を300皿1の10mM緩衝液に溶解した。

③バッチ法によるPheny1-Toyopear1クロマトグラフィー

  ②の操作により得られた部分精製酵素液に1M量の硫安を添加し、これに1

 M硫安含有10・mM緩衝液で平衡化したPhenyl-Toyopear1 650M(200 g)を添加、

 擬拝した(17h)。吸着した酵素は、 O.・25 M硫安含有10 rTiM緩衝液で溶出後

 に限外濾過によって5,0mS/。mまで脱塩した。

④DEAE-Toyopearlカラムクロマトグラフィー

  ③の操作により得られた酵素液を、65蜥NaCl含有10 ii(M緩衝液で平衡化

 したDEAE-Toyopear 1カラム(3.0×17 cm)に通液した。同カラムを1000 ml

 の65mM NaCl含有10 nM緩衝液で洗浄後、吸着した酵素を65 mh NaC1含有

 10mhl eC衝液と265 rTiM NaC110 nM緩衝液(各300皿1)による直線的濃度勾配

 法で溶出した。得られた活性画分を混合し、限外濾過法で1.5mS/cmまで脱

 塩した。

⑤Hydroxyapatiteカラムクロマトグラフィー

  ④の操作により得られた部分精製酵素液を5mM緩衝液で平衡化した Hydroxyapatiteカラム(1,5×11 cm)に通液し、150 mlの5醐緩衝:液によ

 り未吸着タンパク質を除去した。吸着した酵素は10mhと200 mh緩衝液(各

 100m1)による直線的濃度勾配法で溶出した。得られた活性画分は、混合後

 に限外濾過法で5.OmS/cmまで脱塩した。

⑥DEAE-ToyopearlカラムクロマトグラフィーH

  脱塩後の活性画分液を、65mh NaCl含有10 mh緩衝液で平衡化した

 DEAE-Toyopearlカラム(1.0×18 cm)に通液した。このカラムに、65蜥NaCl

 含有10醐緩衝液200m1を通液して未吸着タンパク質を除去した。この後、

 ④と同濃度のNaC1含有10 mh緩衝液(各50 m1)を用いた直線的濃度勾配法に

 より吸着した酵素を溶出した。得られた活性画分を混合し、遠心濃縮法で濃

 縮した。

⑦ゲル濾過  ⑥の操作により得られた灘酵素液を、Toyopear1 HW-55 colum(1×45 cm)

 カラムに通液し、50mMi緩衝液により溶出した。

46

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タンパク質の定量

 タンパク質濃度はProtein Quantification Kit(Dojindo Laboratories,

Tokyo)を用いてBovine serum albuminをスタンダードとして測定した。

高速液体クロマトグラフィー(HPLC)

  ゲル濾過はHPLC用カラムTSK gel G3000SWx,(0.75×30 cm, Tosoh, Japan)

を使用し、室温において流速0.5m1/minで0.1MNaCユ含有50 riilvlリン酸カリ

ウム緩衝液(pHzo)を用いて測定した

SDS-PAGE

 SDS-PAGE }ま、 Precision Plus Protein Standards (Bio-Rad japan, Tokyo)

を分子量マーカーとしてLae㎜1iの方法[10]に従って行い、タンパク質の染

色にはCoomassie Brilliant Blue R-250(CBB R-250)を用いた。

分子量測定

  精製酵素の分子量はHPLCを用いたゲル濾過により標準タンパク質として

Jack bean urease hexamer (545 kDa)、 ack l〕ean urease trimer (272 kDa)、

bovine serum albumin di㎜er(132 kDa)、 bovine serum albumin皿onomer(66

kDa)およびchicken egg albumin(45 kDa)を用いて算出し、酵素を構成するサ

ブユニットの分子量はSDS-PAGEにより算出した。

NH,末端アミノ酸シークエンス

 精製酵素のN末端アミノ酸配列は、Applied Biosystems gas-phase protein

sequencerにより決定した。

47

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結果

微生物の分離

 メトキシエタノール含有培地を用いて、実験方法に述べた手順でグリオキサ

ールに対するオキシダーゼ活性を指標として酵素をスクリーニングした。

①メトキシエタノール培地を用いて3度の集積培養を行い、7種の異なる土

  壌サンプルよりグリオキサー一ルに対してオキシダーゼ活性を示す350以上

  の菌株を分離した。

② ①で得た各菌株の菌体破砕液を調製し、メタノール、エチレングリコー一ル、

  グリセロール、グリコールアルデヒド、グリオキサール、グリオキシル酸

  および、グリコール酸に対するオキシダーゼ活性を調べた。そして、グリ

  オキサールに対して高いオキシダーゼ活性を示した4菌株を選抜した。

③②で選抜した4菌株をメトキシエタノール培地でそれぞれ培養し、得られ

  た各菌株の無細胞抽出液を調製した。各無細胞抽出液のDEAE-Toyopearl

  カラムクロマトグラフィーの結果より、グリオキサールに対する高いオキ

  シダーゼ活性を示し、グリオキシル酸に対して作用を示さないオキシダー

  ゼを産生する菌株として分離菌362株を選抜し、以後の研究に用いた。

分離菌株の同定

 選抜菌362株の系統学分類および、生化学的特長について解析を行った。362

株由来遺伝子の16S rRNAシークエンスの結果および、表3-3に示した形態学

的特徴、表3-4の生化学牲状試験の結果より本菌株がPsθudomonas属に属して

いることが示唆された。また本酵素の16S rRNAシークエンスは、 Pseudomonas

putida KT2440(99.8%)やP. mon tθiJfi CIP 104883(99. 8%)と高い相同性を

示した。しかしながら、分離菌株は硝酸塩還元性などの生化学試験および、生

育試験において上記の2種の菌株とは異なる結果を示した。これらの結果より、

分離菌株をPseudOflomas sp. AIU 362株と名付けた。また、本菌株と近縁株と

の系統樹を図3-1に、顕微鏡写真を図3-2に示した。

48

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表3-3分離菌株の形態的特徴

培養温度 30℃

細胞形態 桿菌  (0.7~0.8×1.5~2.0)

グラム染色 一

胞子の有無 一

運動性 十

コロニー性状

円形

S縁滑らか

癈ハ状

ゥ色

生育温度試験

@(℃)

37 十

45一

カタラーゼ活性 十

オキシダーゼ活性 十

+:陽性 一:陰性

49

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表3-4分離菌株の生理・生化学試験

硝酸塩還元

インドール産生

ブドウ糖酸性化

アルギニンジヒドラーゼ

ウレアーゼ

エスクリン加水分解

ゼラチン加水分解

β一ガラクトシダーゼ

チトクロームオキシダーゼ

K工NG’S寒天培地上での

     蛍光色素産生

+:陽性 一:陰性’

表3-5 資化性試験

ブドウ糖

L一アラビノース

D一マンノース

D一マンニトール

肝アセチルーD一グルコサミン

マルトース

グルコン酸カリウム

n一カプリン酸

アジピン酸

d1一リンゴ酸

クエン酸ナトリウム

酢酸フェニル

+:陽性 一:陰性

50

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        Pset∫dotaonヨ58」o召」[igenes

Ps日udoinon3●Pβθaゴbぼic日」」8]enes psθadaヨ」δ8ヱigene5

Pseadono白ヨぷ 02’eovoranβ

Psθado宜「o力∂ぶ fla vt∋βoeぬ担

Pseuゴヒ吻「onヨβ5ttanin∂e

Pseudo獅anヨ5 patida

Pseffda晦Qnヨ53gat「X o1

Psθffdo珈on召βEa●eρraginヨθ

Psef∫da吻「σ血ヨ5 a5pj1畠n」f1

轟日adotaOltas SP. AIU362

丑ヲθado蛎on召5血11陀

Esckeri ohfa

図3-11?seudomonas sp. AIU 362株と近縁株との系統樹

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図3-2Psθudonomas sp. AIU 362株の顕微鏡写真

酵素生成に対する培養日数および培地炭素源の影響

 分離菌Pseudonomas sp. AIU 362株を150 m1メトキシエタノール液体培地

(500m1容坂ロフラスコ)を用いて30℃で10日間培養し、1日ごとにグリオ

キサールに対するオキシダーゼ活性を調べた。その結果、図3-3に示したよう

にグリオキサール酸化活性は培養2~3日目に最大となり、10日目も活性は減

少しなかった。

 また、本菌の産生するグリオキサール酸化酵素の産生量に対する培地炭素源

の影響を調べるために、炭素源として培地に2一メトキシエタノールとは異なる

化合物を添加し、30℃で2日間振とう培養した。この結果、グリコールアルデ

ヒド、グリコール酸およびグリオキサールを培地炭素源とした場合には、菌の

成育は認められなかった。また、プロパノール、グリセロールを培地へ添加し

た場合には酵素の産生は認められず、メタノール、エチレングリコールおよび

イソプロパノールを培地へ添加した場合に本菌におけるグリオキサール酸化酵

素の産生が認められた(表3-6)。

52

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ハよも

Eooド\

ヱコE}As>=o

e

kN山

表3-6

2.5

2.0

1.5

1.0

0.5

0.0

0

                                1.O

                                O.8

                                0.6

                                0.4

                                02

                                0.0

   2   4   6   8  10

     Cuttivation time(days)

図3-3酵素生成量の経時的変化

Ao口ooo)エギoLo

一一怦鼈黷dn2yme acti∨正y

-0-GroWth

グリオキサール酸化酵素の生成に対する培地炭素源の影響

Carbon source Cell growth

 (OD660/m1)

     1『Otal aCtiVity

(munit/ml ce11-free extract)

Protain

(AZE。/ml)

Specific activity

(munit/mg protein)

2-Methoxyethanol

Methanbl

Propanol

Isopropanol

Ethylene glycol

Glycerol

Glucose

1.32

0.82

1.33

1.76

1.35

1.95

0.61

1.84

1.47

2.01

0.75

0.08

3.45

2.85

1. 78

5.86

3.74

1.82

0.72

O. 53

0.51

0.34

0.20

0.11

53

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酵素の精製

 Psθudonomas sp. AIU 362株が産生するグリオキサールに対して活性を示すオ

キシダーゼは、表3-7に示すように、Phenyl-Toyopear1など各種クロマトグラ

、フィtに供することで、電気泳動的に単一に精製された。活性測定の結果、精

製酵素は粗酵素液と比較して約3,000倍に精製され、回収率は24%であった。

 精製酵素は図3-4に示すように、Native一およびSDS-PAGEの両方で、単一の

タンパク質のバンドを示した。

表3-7Pseudonomas sp. AIU 362株産生酵素の精製

Total activity’   Total protein   Specific activity  Purification  Yie!d

 (unit)            (mg)            (unit/mg)        (fold)       (%)

Ce11-free extract

Phenyl-Toyopearl

DEAE-Toyopearl

Hydroxyapatite

DEAE-Toyopearl

Toyopearl HW-55

7.3

4.0

3.3

2.6

2.1

1.8

1450

 16 ・

 2.1

 0. 4

 0.2

 0.1

O. 01

0.25

L577. 22

14.0

14.9

 1 50

314

1440

2800

2960

100

55

45

36

29

24

*グリオキサールに対するオキシダーゼ活性

54

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A  B  C  IC[>a

  ド    ”’  -H’1

  巳、’・ {

  ぶs噺1250  i-   、  1ニー{150   〒’⊃一]100    -1・・一仁鰻’{75

  臨、繊i50  卜;・・ ,  °1  ・ ÷     l  t  7            

  レ  t/mel 37     1            

  く  レ t  く

r壷司25    繍}20     vts l  μ_  一.一、_一一一

A二Native ellzmle

B:Della加red e1必ヨ11e

C :Stalldafd l)r⑪te血】Ll

図3-4グリオキサール酸化酵素の電気泳動

分子量の測定

 ゲル濾過により算出した精製酵素の分子量は95kDaであり、SDS-PAGEにより

算出したサブユニット分子量は27kDaであった(図3-4)。これらの結果より、

このPsθudonomas sp. AIU 362株の産生する酵素が同一のサブユニット4つで

構成されていることが示唆された。

基質特異性および反応動力学定数

 Pseudonomas sp. AIU 362株の産生する酵素は、二価のアルデヒド、短鎖の脂

肪酸アルデヒド類および芳香族アルデヒド類に対して高いオキシダーゼ活性を

示したが、アルコール類に対する活性は示さなかった。また、本酵素はアルデ

ヒドアルコールに対しても作用を示したが、その活性はグリオキサールに対す

る活性と比較して非常に低いものであった(表3-8)。さらに、アルデヒド酸

であるグリオキシル酸に対して作用しなかった。

 また、本酵素の表3-9に示した9種類の化合物に対する血値、励ax値を算

出した。この結果、脂肪族アルデヒドにおいて炭素数の増加に伴い伽ax/血の

55

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値も増加する傾向が認められた。

 以上の結果より、Pseudonomas sp. AIU 362株の産生する酵素はアルデヒドオ

キシダーゼ(ALOD)であり、脂肪族アルデヒド、芳香族アルデヒドの両方に対

して活性を示すALODであることが示唆された。

表3-8Pseudonomas sp. AIU 362株が産生する酵素の基質特異性

Substrate Relative

ac七ivity牢 (%)

Subs七rate Relative

activity‡(%)

Glyoxal

Formaldehyde

Acetaldehyde

Propylaldehyde

Butyla工dehyde

Valeraldehyde

Hexylaldehyde

Heptylaldehyde

Glycolaldehyde

Glyoxylic acid

100

20

81

109

100

144

163

 9

14

 0

D,L-Glyceraldehyde

Benzaldehyde

P-Hydroxybenzaldehyde

ρ一Methoxybenzaldehyde

Glycolic acid

Lactic acid

Methanol       I

Ethanol

Propanol

Butanol

11

116

188

130

 0

 0

 0

 0

 0

 0

*グリオキサールに対するオキシダーゼ活性を100%とした相対活性

56

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表3-9Pseudonomas sp. A工U 362株産生酵素の活性比較

Substrate     抱ax       」㎞

(m mo1/min/mg protein)  (mM)

imax/th]

Glyoxal

Acetaldehyde

Propionaldehyde

Butyraldehyde

Valeraldehyde

Hexylaldehyde

Benzaldehyde

P-Methoxybenzaldehyde

p-Hydroxybenzaldehyde

0.028

0.029

0.035

0.026

0. 033

0.037

0.022

0.033

0.045

9. 7

2.5

2. 8

0.5

1.1

0.1

0. 6

0.8

2.6

O. 002

0. 007

0.007

0.053

0.030

0.316

0.042

0.042

0.017

酵素活性に対するpHおよび温度の影響

 グリオキサールの酸化に対するpHの影響は、 pH 5.5~8.5でオキシダーゼ活

性を測定することにより調べた。その結果、グリオキサール酸化活性は、pH 6.0

で最大となった(図3-5)。また、酵素のpH安定性はpH 5.5~8.5で40℃、120

分間加熱し、酵素残存活性を測定して調べた。この結果、本酵素はpH 6. 5~8.・5

で75%以上の活性が残存した(図3-5)。

 グリオキサール酸化活性に対する温度の影響を調べるため、pH 6.0で30~

65℃の温度でオキシダーゼ活性を測定した。この結果、45℃で最大活性が認め

られた。また、酵素をpH 6.・5、30~65℃で120分加熱した結果、50℃で加熱し

た場合でも70%以上の残存活性が認められた(図3-6)。

57

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      100                          100

      80                          80

     も                               8  -●-Optimum pH     :                                     曽  ■■O■■pH stabiiity

     江                                           e

                           匡

       0                          0

        5     6     7     8     9

                pH

図3-5Pseudonomas sp. AIU 362株が産生する酵素の活性と安定性に対するpHの影響

      100                          100

      80                        80.            .

     匡                                         匡

      20                         20

       0                            0

       25       35       45      55      65

             Temperature(°C)

図3-6Pseudonomas sp. AIU 362株が産生する酵素の活性と安定性に対するpHの影響

                   58

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酵素活性に対する化合物の影響

 グリオキサール酸化活性に対する化合物の影響を調べるため、活性測定にお

いて反応液中に1mhの金属、キレート試薬および各種化合物を添加して活性を

調べた。本酵素活性は、ヒドロキシルアミン、ヒドラジンやフェニルヒドラジ

ンなどのカルボニル試薬により阻害された。また、EDTA、α,α’-Dipyridy1や

o-Phenanthrolineなどのキレート試薬により活性の上昇が認められた。各種金

属イオンを反応液中に添加した場合、Mn2+、 Cu2+の存在下で活性の上昇が認めら

れた(表3-10)。以上の結果より、Pseudomonas sp. A工U 362株の産生するALOD

のグリオキサール酸化活性には、カルボキシル基と金属イオンが関与している

ことが考えられた。

表3-10オキシダーゼ活性に対する各種化合物の影響

Che皿icals

 (1mM)

Relative

activityt (%〉

Chemicals

 (1mM)

Relative

activity* (%)

None

Hydroxylamine

Hydrazine

Phenylhydrazine

Se皿icarbazide

a-Phenanthroline

EDTA

8-Hydroxyquinoline

α,α’-Dipyridyl

Monoindoacetic acid

/V Ethylmaleimide

100

52

28

12

98

116

125

77

104

107

99

MnCl2

CuC12

NiCl2

CoC12

FeC12

ZnC12

MgC12

120

123

91

89

99

79

62

*化合物無添加における酵素活性に対する相対活性

59

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N末端アミノ酸シークエンス

 精製酵素のN末端アミノ酸配列は、MRIAFIGLGMGAPMであった。この配列の相

同性検索を行った結果、図3-7に示したように他の菌株由来のアルデヒドオキ

シダーゼとは相同性が認められず、P..ρutida KT 2440株の産生する

3-hydroxyisobutyrate dehydrogenaseのアミノ酸配列と高い相同性を示した。

AIU362

KYMKYLKT2440

MMV

NNR

MG A P MA V PV D G

DPP

AL

M

AIU362 :Glyoxal oxidizing enzyme fro皿、Pseudomonas sp. A工U 362

KYM   :A!dehyde oxidase from Pseudomonas sp. KY 4690 medium subunits

KYL    : Aldehyde oxidase from Psθudomonas sp. KY 4690 1arge subunits

KT2440 :3-Hydroxyisobutyrate dehydrogenase from」[’seudと)monas、putゴda KT 2440

図3-7Pseudonomas sp. AIU 362株産生酵素のN末端アミノ酸配列の比較

60

Page 63: 酸化酵素に関する研究 - iwate-u.repo.nii.ac.jp

考察

 グリオキサールに対して高い酸化活性を有する菌株としてPseudemonas sp.

AIU 362株を土壌中よりスクリーニングし、本菌が産生するオキシダーゼを精製

し、その諸性質を明らかにした。本菌の産生するオキシダーゼは、グリオキサ

ールだけでなく短鎖脂肪族のアルデヒドや芳香族アルデヒドにも作用した。し

かしながら、グリコールアルデヒド、グリセルアルデヒドなどのアルデヒドア

ルコールに対する活性は著しく低く、グリオキシル酸などのアルデヒド酸やア

ルコール類には作用しなかった。この結果より、本酵素がアルコールオキシダ

ーゼではなく、アルデヒドオキシダーゼであることを明らかにした。

 アルデヒドオキシダーゼ(ALOD)(EC 1.2.3.1, aldehyde:oxygen

oxidoreductase)は、電子受容体として酸素分子を用いて様々な脂肪族および

芳香族アルデヒド類の酸化を触媒する酵素であり、多くの高等生物に分布して

いる[31-33]。また近年、Me thy1 obacilius sp. KY4400[34]、 Streρtmyces

modera tus ATCC23443 [34]、 Pseudomonas sp. KY杢690 [34,35]、 Pseudomonas

stutzeri lFO12695[36]やStreρtomVces rimosus ATCC10970[37]など、いく

つかの微生物において存在が明らかとなった。しかし、これらの微生物由来ALOD

に関する研究は、アセトアルデヒドなどの環境にとって有害なアルデヒド類の

除去を目的としているため、グリオキサール酸化に関する報告はなされていな

い。また、グリオキサールに対する酸化活性を有する酵素は、Kerstanらにより

lignin-degrading bacidiomycete Phaneroehaete chrysosρoriLun[38]に見出

されたが、この酵素はグリオキサールだけでなくグリオキシル酸に対しても作

用を示した。

 また、他菌株由来のALODは表3-11に示したように分子量18~23、37~39、

79~88kDaの3つのサブユニットからなるhetero-tri皿erであることが明らか

となっている。これに対し、本研究において本AIU 362株由来のALODが分子量

30kDaのサブユニット4っからなるhomo-tetramerであり、他菌株由来のALOD

とは異なるサブユニット構造を形成していることを明らかにした。

 さらに、本菌由来酵素のN末端アミノ酸配列が、他の微生物に由来するALOD

の配列に対して相同性を示さず、P. putida E23[39,40]、 P. aeruginosa[41]な

どの微生物由来の3-hydroxyisobutyrate dehydrogenases(3-HIBDH)(EC

1.L1.31,3-hydroxy-2-methylpropionate:NAD“ oxidoreductase)と高い相同性

示すことも明らかにした。

 以上の結果より、本Pseudomonas sp. AIU 362株産生酵素は他菌株に由来す

る既存のALODとは異なるALODであることが示唆された。よって、このALODの

61

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さらなる解析のため、続く研究において酵素遺伝子の解析、

び1元oo五における発現について検討した。

クローニングおよ

.’¥3-11他菌株由来ALODとの比較Microorganism   Molpcular mass (kDa)

Intact enzyme    Subunit

Number of subunit Reference

Pseuロ「omonas sp. AIU 362

”“ethアコ『o力∂c」lllus sp. KY4400

Psθudomonヨ8 sp. KY4690

P. stutzexユ’IFO12695

S. modeLr,ヨtus ATCC23443

S. ヱゴmosus ATCC10970

95

142

140.

160

148

150

88,

85,

83,

86,

79,

27

38,

39,

38,

37,

39.

18

19

18

23・

23

4

3

3

.3

3

3

This report

   30

   31

   32

   30

   33

62

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第4章

Psθudomonas sp. AIU 362が産生するAOD遺伝子のクローニングとE.・coiiに

おける発現

 第3章において述べたように、Pseudomonas sp. AIU 362株の産生するアルデ

ヒドオキシダーゼは、グリオキサールだけでなく短鎖脂肪族のアルデヒドや芳

香族アルデヒドにも作用を示したが、グリオキシル酸やアルコール類に対する

作用は認められず、既存の微生物由来のALODと異なる基質特異性を示した。ま

た、本酵素のサブユニット構造も既知のALODと異なることが明らかとなった。

さらに、本酵素のN末端アミノ酸配列は既存のALODの配列とは相同性を示さず、

Pseudomonas属細菌由来の3-Hydroxyisobutyrate dehydrogenaseに対する高い

相同性が認められた。これらの結果より、このPseudomonas sp. AIU 362株の

産生するALODがこれまでに報告されている微生物由来のALODと異なる酵素で

あることが明らかとなった。しかし、Pseudomonas sp. AIU 362株のALOD生成

量は少なく、本酵素のさらなる解析は困難であった。

 したがって、本章ではこの2E?seudomonas sp. AIU 362株由来ALOD遺伝子のク

ローニングとE. eoti BL21株での発現について検討した。

63

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実験方法

培地と培養条件

 Pseudomollas sp. AIU 362株は、メトキシエタノール培地(1% 2-Methoxyetano1,

O・・2%・NH・NO・・0・1%K・HPO、・0・1%N・H、PO、, O.・eS%・MgSO、・7H、O,0.02%C・Cl,・2H、O,

and O.05%yeast extract, pH 5.5)で30℃、3日間の振とう培養した。また、

遺伝子のクローニングと強発現のhost cellとして用いたE.・coli JM109、 BL21

株は、アンピシリン(50pg/m1)含有Luria-Bertani(LB)培地(1%NaCl、1%

tryptone、0.5%yeast extract、 pH 7.0)で20時間振とう培養した後、 IPTGを

添加してさらに5時間の振とう培養を行った。

Genomi c-DNAおよびplasmid-DNAの分離

Genomic-DNA

 鋳型となるPseudomon∂s sp. AIU 362株由来total DNAの抽出は、第2章に

示したPaem’baeillus sp. A工U 311株と同様の方法で行った。

Plasmid-DNA

 plasmid-DNAは、 Q工A prep Spin Miniprep kit(Q工AGEN, USA)を用いて第2

章と同様に菌体より抽出した。

Degenerate PCRによる酵素遺伝子のクローニング

 Pseudomonas sp. A工U 362株由来アルデヒドオキシダーゼのN末端アミノ酸配

列は、PseadonTonas pu tida KT2440由来3-HIBDHの配列と完全に一致した。そこ

で、3-H工BDHをコードするDNA配列を元に以下に示したプライマーを構築した。

Sense primer (S1)     : 5’ -CGG TGG CCA ACC CCA GGT CCT TGA G-3’

Antisense primer (A1) :5’ -GGC AAA GGG CGT GGA CAT GGG GGA T-3’

 このプライマーを用いたPCRは、total 50 p1の液中に20㎜。1 dNTP、2.5units

TaKaRa Ex Taq DNA polymerase、0.5ロmol primerおよび0.5pg chromoso皿al DNA

を含む反応液を用いて行った。この反応液を94℃で30秒、55℃で30秒、72℃

64

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で1分間の熱処理し、これを1サイクルとして30回繰り返した。得られたPCR

産物をpT7 Blue vector(Novagen, Germany)に導入し、 CEQ Dye Terminator Cycle

Sequencing Kit(Bec㎞an Coulter Inc.)を用いたDNA sequencer CEQ200 XL

(Bec㎞an C。ulteエInc, CA, U. S. A.)によりDNA配列を解析した。

Southern hybridization.

 Pseudomonas sp. AIU 362由来chromosomal DNAを制限酵素(Bam H工、ffind皿、

Ptde工、 Pst 1、 Sac I、 Sal I、 Spθ工、 Sph I、-ba I)で処理した。このDNA断

片を1%アガロースゲルによる電気泳動に供した後、Nitrocellulose membrane

に転写して固定した。プロッティングにより得られたメンブランに対して、ラ

ベリングした先述のPCR断片をハイブリダイゼーションすることで制限酵素を

選択した。

ゲノムライブラリーの作製と酵素遺伝子のクローニング

 Pseudomonas sp. A工U 362株のゲノムライブラリーは、 DNA断片をpT 7 Blue

cloning vector(Novage)にライゲーションして作製した。 Total 10 plのライ

ゲーション反応液中には、5plのLigation solution I(DNA Ligation Kit

Ver,2,1, Takara Shuzo)、1ロgのNde I処理cDNAおよび100 ngのNde I処理

vector DNAが含まれている。この反応液を16℃で24時間インキュベートして

DNA断片をベクターにライゲーションし、得られたプラスミドをE. coii JM109

株に導入後に、X-ga1(50 pg/m1)、アンピシリン(50 pg/ml)含有LB平板培

地を用いたBlue white selectionによりi導入の確認を行った。プラスミドの導

入が確認されたE. cok’に対し、 Southern hybridizationに用いたものと同じラ

ベリングしたPCR断片をプローブとして酵素遺伝子導入菌株のスクリーニング

を行った。この結果、Pseudomonas sp. AIU 362由来cDNAをSal 1で処理した

DNA断片に酵素遺伝子が含まれていることが明らかとなった。この配列を元に未

知領域である酵素遺伝子の5’一および3’一末端配列を明らかにするため、sense

primer S2 (5’ -GTT CCG ATA CCT ACA ACC CGT GGC G-3, )、 antisense primer

A2(5’-ATG AAC GTC AAC GTA CCT GCC GCT GC-3’)を構築し、このプライマー

を用いたPCRおよびDNAシークエンスにより、酵素遺伝子の全配列の解析を行

った。

65

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酵素遺伝子発現用ベクターの作製

 DNAシークエンスにより得られた配列を元に、酵素発現用プライマーとして以

下に示したNde 1 s iteを含むprimer ES(5’-CAT ATG CGT ATC GCA TTC ATC GGC

C-3’)およびNot r siteを含むprimer EA(5’一 GCG GCC GCG TCC TTC TTG CGG

TAG C-3’)を作製した。これらの発現用プライマーを用いてPseudomonas sp. AIU

362由来cDNAをtemplateとしたPCRを行い、得られたDNA断片をNde工とNot

Iで処理し、これを発現用プラスミドpET-21a(+)(Takara Shuzo, Japan)のNde

I-Notl siteにライゲーションして組み換えプラスミド(pET-GOOX)を得た(図

4-1)。このプラスミドを宿主として用いたE eoli BL21に導入し、酵素タンパ

ク質発現大腸菌(E. coli BL21/pET-GOOX)を得た。

Not l

GOOX

Nde I

T7 prometer

pET■GOOX6254bp

fl origin

0「1

Ampτ

図4-1発現用プラスミドpET-GOOXの構造

66

Page 69: 酸化酵素に関する研究 - iwate-u.repo.nii.ac.jp

無細胞抽出液の調製および発現酵素の精製

 E. coli BL21/pET-GAOXを50 pg/mlアンピシリン含有LB培地(5 ml)を用い

て37℃で20時間培養した後、IPTG,1.0蜥を添加してさらに5時間の振とう

培養を行った。集菌後に10 mMリン酸カリウム緩衝液(pH 7.0)に懸濁、Ultasonic

oscillator(lsonator 201M, Kubota, Japan)を用いて菌体を破砕した。この破

砕液を遠心分離(10,000rpm,10 min)し、得られた上清画分を粗酵素液とし

た。

 また、調製した粗酵素液をNi-charged resinを用いたアフィニティクロマト

グラフィーに供することで精製した。

酵素活性測定

(1)オキシダーゼ活性測定

グリオキサールに対するオキシダーゼ活性は、第3章に示した4-Mおよび

TOOSを用いた方法で測定した。

(2)デヒドロゲナーゼ活性測定

3-HIBDH活性はChowdhuryらの方法[40]を応用し、補酵素としてNAD+また

はNADP+を用いて、基質の酸化に伴い生じるNADHまたはNADPHの生成速度を

測定より算出した。このデヒドロゲナーゼ活性測定の反応液の組成を表4-1

に示した。NADHまたはNADPHの生成は30℃、5分間の反応における340 nm

の吸光度値の変化より確認した。本研究では、この反応条件において1分間

に1μmolのNADHまたはNADPHを生成する酵素量を1unitと定義した。

67

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表4-1dehydrogenase活性測定における反応液の組成

Substrate*

CAPS buffer (pH 10.1)

NAD+ or NADP+

Enzyme

 20.0  (pmol)

200.0

  4.0

Reaction tota1 300 pl

*Substrate:D-3-Hydroxyisobutiric acid sodium salt

            L-3-Hydroxyisobutirlc acid sodium salt

           (S)一(十)-3-Hydroxyisobutyric acid methyl ester

            (R)一(一)-3-Hydroxyisobutyric acid methyl ester

            D-Serine

            L-Serine

68

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結果

Psθudomonas sp、 AIU 362が産生するALOD遺伝子のクローニング

 Pseudomonas sp. A工U 362株由来ALODのN末端アミノ酸配列との高い相同性

が認められた、Pseudomonas putida KT2440由来3-HIBDHのアミノ酸配列より、

sense(S1)およびantisense primer(Al)を構築した。これらのプライマーを

用い、Psθudomonas sp. A工U 362株由来cDNAをテンプレートとしたPCRを行っ

て400bpのDNA断片を得た。このDNA断片をpT7 Blueベクターにサブクロー

ニングしてDNA配列を決定した。そして、 DNA配列および推定アミノ酸配列の相

同性検索を行った結果、・Pseudomonas sp. AIU 362株産生酵素のN末端アミノ酸

配列の結果と同様に、/?seudomonas.ρutida由来3-HIBDHの配列と高い相同性を

示した。よって、この400bpのDNA断片(図4-2, Sequence 1)をSouthern

hybridizationおよびColony hybridizationのプローブに用いた。

 プローブとハイブリダイズするDNA断片はPseudomonas sp. A工U 362株由来

cDNAを制限酵素SaZ 1で処理することで得られた。この処理断片を用いてColony

hybridizationを行い、その配列を決定した(図4-2, Sequence 2)。

  さらに、Sequence 2より構築したプライマー(S2、 A2)を用いることで明

らかとなったDNA配列は、 hybridizationに用いたプローブのDNA配列と繋が

り一本のヌクレオチド鎖(1.4kb)を形成した。このDNA配列に、図4-3に示

したPseudomonas sp. AIU 362株由来ALOD遣伝子の全長(888 bp)が含まれて

いることを明らかにした(図4-2,Sequence 3)。この遺伝子は295のアミノ

酸をコードし、その配列は精製酵素のN末端アミノ酸配列と一致した。

 この遣伝子をE. co2iにおいて発現させるために設計したプライマー(ES、 EA)

を用いたPCR、 DNA断片の制限酵素処理によりgoox(図4-2)が得られた。

69

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5’r「                    一一一一il← 3・

            十唱ト■一一一一“■一一■一一r噂qAl

          ll 」一一一一一一一一一一一一一・)it

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                 Se虹uen¢e 2

SV←一一翻國圏翻國醗鑛霧一一→声’      ←一一一→旨■一一喝■s2                   1         ロ                                        エ

                                1

    旦   s_一。e3  i

5冒←一一麹團團國團騒翻一一v’3・      ES⇒                   ←EA

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           冨ロes

5・璽圏圏國圏國園璽薩3’

図4-2Pseudomonas sp. AIU 362株由来ALODのクローニング

70

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         10       2e       30       40       50       60       7G       80       90      100

 ATGCGrATC喧CArrCATCGGCCTGGGCARCAτ〔)GGCGCGCCCRI『{iGCCCGCAACCτ〔SATCAAGGCCGG〔ICACCAGCTGAACCTGTTCGACCTTRACCAGA

  MRIAFIGLGHMGAPMARHLIKA6H口LNLFOLNO        110       120       130       140       150       160       170       180       190      200

 CCGTGCT〔)GCCGAGCTCliCCGAACTC〔iGCG{ヨ〔iCAGGTCAGCGCCTCGCCCAAGAACGC〔}GCTGCCAGCA〔ICGA〔〕CτG6TGArrACCATGrTGCCGGCGGC

 TVLAEL白ELGGRVSASPIくNAAASSELVITMLpAA        210      220      230      240      250      260      270      280      290      』300

 GGCCCAT〔1TCCGCAGCGTCT角CCr{]GGCGACGA丁〔〕GCGTGCTGGCCGGC6r〔…CGCCCC〔16CACGCCGACCGTGGAr丁GCAGCnCCArC6ACCC(SCAGACC

  AHVnSVYLGDDGVL自6URPGTPτVOCSTIOPQT       310       320       330      340       350       360      370       380      390      400

 GCCCGCGAGGTG丁CCAAGGCT〔]C〔]GCGGCCAAGGGTGTGGACArGGGCGATGCGCCGGTGτC CGGT{SGCACCGG「GGCGCAGCGGCAGGrACGTTGAC6T

 自REΨSlくAA自Alく6VOMODAPUS6G丁G6白RA6TLT       410      tl20      430     440      450      460     470      480     490     500

TCATGGTrGGCGCC負GCGCCGAGCTGrTCGCCGCGCTCRAGCC〔]GTGCTCGAGCAGArG6GCC〔STAACArCGrGCATT[STGGTGAAG丁CGGCACCGGACA

FHΨ6白S自ELFAAL1くPVLEQM(iRN1ΨHC6EV6T60       510       520       530      540       550       560      570       580       590      600

G貞rCIICCA骨G自τCTGC骨AC骨RCCrGC「〔…CTG6(ICATCTCGATGArC(SGCGTGTCC(きAGGCGATG〔]CCCτGGGじAACGCGCTC66CArCGACACCCRG〔]TO

   lAKICHNLLI_GlSMI6VSE白MAL6N自LGIDr口V       610        620        630       S日0        650        660       6了0        680        690       700

CTGGCCGGG自TCATe自ACAG「TC6自CCGGGC{irrGCTGGAGrrCCGATACCTACAACCC〔]TGGCCGGGCATCAτC(]AGACCGCGCCGGCGTCGCGTGGrr

 LAGIIHSS丁GRCWSSDTYHP~肝P嘔11ETApASRG       710       720       730      740       750       760      770       780       796      800

AT白CC(iG丁GGCTTTGGTGCC喧AGCrGAT6CTCAAGGACCT〔]GGCCT6GCCACCGAGGCCGCCCGCCAGGCGCATCAACCGGτG自TCATGGGCGCACTGGC

YT66F6自ELMLIくDL6L白TEAAROA}]QPΨIM6AL∩       810      820      830      840      850      860      870      880      890

GCAGCA6CTGTACCAGGCCAT〔SA〔]CCTGCGC〔}〔ICGRTG6CGGC白AGGACTTCTC〔SGCGATC6rCGA〔SGGCTACCGCAR6AA(iGACTGA

  ロロLYaAMSLRGD(iGHDFsAIVEGYRKKD*

図4.3』』。。、p. AIU 362株由瓢。DのDNAおよび擬アミノ酸シークエンス

71

Page 74: 酸化酵素に関する研究 - iwate-u.repo.nii.ac.jp

Pseudomonas sp. AIU 362株由来ALOD遣伝子のDNA配列および推定アミノ酸配

列の比較

 解析により得られたPseudomonas sp. AIU 362株由来ALODのDNA配列の相同

性検索を行った結果、既知の微生物由来のALODの配列との相同性は認められず、

P.putidaの産生する3-H工BDHの配列に対する非常に高い相同性が認められた。

 また、このDNAがコードするアミノ酸配列も図4-4に示したようにAcinθtobacter baianiannii(59%)やRais tonia eu tropha H16(66%)の産生す

る3-HIBDHのアミノ酸配列に相同性が認められ、特にP. putida E23(96%)、

P.putida KT2440(95%)など、 Psθudomonas属細菌が産生する3-HIBDHに対し

て非常に高い相同性を示した。

72

Page 75: 酸化酵素に関する研究 - iwate-u.repo.nii.ac.jp

AiU

E田

再BH

R16

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MIGVS正}~M↓~L日NA工G工D工 VLAGIINSSTGRCWSSDTYNPWPGIIETAPASRGYTG鵬PGAM回咽正回蝋GVKLGDP拠A醐NTS固G・R・C・ve・S・S・DIV・CIN・?・W・?iHIIINIEINIA・?・A・S・e・G・Y回a Fm T

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Alu

E23

KT

ABH

HIS Q

AIU  :Aldehyde oxidase fro皿Psθudomonas sp. AIU 362

E23

KT

ABH

H16

: 3-Hydroxyisobutyrate dehydrogenase from P. pu亡ida E23 [39]

: 3-Hydroxyisobutyrate dehydrogenase from P. putゴda KT2440 [42]

: 3-Hydroxyisobutyrate dehy〔壮ogenase f士om Aeinetobacter batmra刀刀ゴ∫ [43]

: 3-Hydroxyisobutyrate dehydrogenase from、Raヱstoni∂ eu troph∂H16 [44]

図4-4Pseudomonas sp. AIU 362株由来ALODのアミノ酸シークエンスの比較

73

Page 76: 酸化酵素に関する研究 - iwate-u.repo.nii.ac.jp

酵素遺伝子gaoxのE. co!iにおける発現と発現酵素の精製

 発現用プラスミドpET-21a(+)の工PTG-inducible T7 promoterの下流にインサ

ートし、800x導入プラスミドpET-GOOXを作製した。このプラスミドをE. coli

BL21に導入して得られたE. coli BL21/pET-GOOXを作製し、100 pg/m1アンピシ

リンと0.1mh IPTGを含有するLB培地(5 ml)を用いて37℃で24時間培養し

た。この培養菌体から無細胞抽出液を調製し、SDS-PAGEにより酵素発現を調べ

た。その結果、図4-5,Lane Bに示すように導入菌株の無細胞抽出液において

Psθudomonas sp. AIU 362株のALODと同じ分子量位置に濃いタンパク質のバン

ドが認められた(27kDa)。また、この発現タンパク質はアフィニティークロ

マトグラフィーにより精製され(図4-5,Lane C)、このタンパク質のN末端

アミノ酸配列は、Psθudomon∂s sp. AIU 362株由来ALODのアミノ酸配列と一致

した。

 また、この発現酵素はPseudo〃on∂s sp. AIU・362株の産生するALODと同様に、

グリオキサL-一一・ルに対してオキシダーゼ活性を示し、グリオキシル酸に対しては

活性を示さなかった。そして、その大腸菌の培養液1ml当たりのALOD産生量

は、Pseudomonas sp. AIU 362株での産生量に比べ約2.0倍に増加した。

A  B C D kDa

    ㌔r昆

購鷲、輔{.’蘇   ・姻嚥

    藷

    曇

    ’葺’a

75

50

37

25

20

A:亙colゴB工21①ET-21a(十)

B:E.coii BLZ I,ipET・G・O OX

C:P111jfied eXPressioll ellz}勺]Lle

D:Stalldard prote血ls

図4-5E. coli BL21発現酵素のSDS-PAGE

74

Page 77: 酸化酵素に関する研究 - iwate-u.repo.nii.ac.jp

発現酵素のデヒドロゲナーゼ活性の確認

 Pseudomonas sp. AIU 362株由来ALODのアミノ酸配列と微生物由来の3-HIBDH

の配列に高い相同性が認められたので、E.・coli BL21/pET-GOOXを100 pg/mlア

ンピシリン、0.1耐IPTG含有LB培地(5 m1)を用い、37℃で24時間培養した

菌体を破砕して調製した発現酵素を用いて3-HIBDH活性を調べた。

 その結果、本発現酵素は、図4-6に示したようにL-3-Hydroxyisobutyrateに

対してデヒドロゲナーゼ活性を示したが、D-3-Hydroxyisobutyrateには活性を

示さなかった。

 また、発現酵素のデヒドロゲナーゼ活性は補酵素としてNAD+を添加した場合

に認められたが、NADP+を添加した場合にはほとんど確認されなかった。

 この基質および補酵素の選択性は、これまでに報告されている微生物由来の

3-hydroxyisobutyrate dehydrogenaseの選択性と同様であった。

75

Page 78: 酸化酵素に関する研究 - iwate-u.repo.nii.ac.jp

100

80

 5   60む三

6q望

口旦 40Φ

20

0

A B C    .D

Substratae

E

■NAD+

di NADP+

H

Substrate A:

B:

C:

D:

E:

F:

D -3-Hydroxyisobutiric acid sodium salt

L -3-Hydroxyisobutiric acid sodium salt

(S)一(十)-3-HydroxyiSobutyric acid methyl ester

(R)一(一)-3-Hydrexyisobutyric acid methyl ester

D-Serine                  ・

L-Serine

図4-61元oo1∫BL21発現酵素のデヒドロゲナーゼ活性

76

Page 79: 酸化酵素に関する研究 - iwate-u.repo.nii.ac.jp

考察

 第3章において、Pseudomonas sp. AIU 362株の産生するアルデヒドオキシダ

ーゼの精製および諸性質について述べた。この酵素は、短鎖脂肪族および芳香

族アルデヒド類に対して高いオキシダーゼ活性を示したが、グリオキシル酸な

どのアルデヒド酸には作用しなかった。これまでに、このような基質特異性を

有する微生物由来のアルデヒドオキシダーゼは報告されておらず、さらにAIU

362株産生酵素のN末端アミノ酸配列は、他菌株由来のALODの配列とは大きく

異なっていた。これらの結果より、本酵素が他菌株由来のALODとは異なALOD

であることを明らかにした。この酵素のさらなる解析のため,本章では

1?seudomonas sp. AIU 362株の産生するALOD遺伝子のクローニングと酵素構成

遺伝子の配列の決定を行った。

 この結果、本酵素が295のアミノ酸をコードする888bpのDNAより構成され

ており、その推定アミノ酸配列は、P. putida E23、 P. putida KT2440、などの

Pseudomona属菌株由来の3-hydroxyisobutyrate dehydrogenase(3-HIBDH)の

アミノ酸配列と高い相同性を示すことを明らかにした(図4-4)。

 さらにE.・coli菌体内においてグリオキサールオキシダーゼ遺伝子(900X)を

発現させるため、タンパク質発現用ベクターpET 21a(+)のIPTG inducible T7

promoterの下流にgooxを組み込んだベクター(pET-GOOX)を作製した。このベ

クターをE. co!i BL21株に導入して得られた菌体(E coii BL21/pET-GOOX)か

ら調製した粗酵素液は、Pseudomonas sp. AIU 362株産生酵素と同様にグリオキ

シル酸に対するオキシダーゼ活性を示さず、グリオキサールに対してのみ活性

を示した。

 また推定アミノ酸配列の相同性検索の結果、Pseudomonas sp. AIU 362株の産

生するALODは微生物由来の3-HIBDHとの高い相同性が認められたことから、

E. eoliにおける発現酵素を用いて、3-HIBDH活性を調べた。この結果、本酵素

はP.putida E23株由来3-HIBDH[40]と同様に、 L体の3-Hydroxyis。butyrate

に対しては活性を示したが、D体に対してはほとんど活性を示さなかった。また、

補酵素の選択性においてもP.ρutida E23株由酵素と同様i、 NAD+のみを電子受容

体として要求することが明らかにした。このことより、Psθudomonas sp. AIU 362

株産生ALODは3-hydroxyisobutyrate dehydrogenaseと同じグループに属する

酵素であると考えられた。

77

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本章の研究によって、Pseudomonas sp. A工U 362株hS産生するALODをE.・coli菌

体内で大量に発現させることが可能になった。したがって、本酵素のさらなる

解析やグリオキサールのグリオキシル酸への変換に関する研究も詳細に進める

ことが可能となった。

78

Page 81: 酸化酵素に関する研究 - iwate-u.repo.nii.ac.jp

総合考察

  現在グリオキシル酸は、主にグリオキサールの硝酸による酸化により工業

的に合成されているが、グリオキサールの化学的酸化反応では、シュウ酸など

の副産物が多く生成され、反応に多くのエネルギーを必要とするという欠点を

有している。

 この欠点を補うため、本研究では酵素の持つ部位選択性を利用することでエ

チレングリコールのグリオキシル酸への変換反応を想定した。これまでの研究

により、グリコール酸がAlcaiigenes属の菌株を用いた菌体反応により、グリ

オキシル酸に酸化されることが明らかとなっている[4]。また、エチレングリ

コールがメタノール酵母由来のAOD、またはAsρeirgilius属細菌由来のグリセロ

ールオキシダーゼによりグリコールアルデヒドへ酸化されること[5]、あるい

はエチレングリコールからグリコールアルデヒド経由でグリオキサールに変換

されること[6,7]が明らかとなっている。しかし、このグリコールアルデヒド

のグリオキサールへの酸化反応は、高濃度のエチレングリコールにより著しく

阻害されてしまう。

 これらの研究の現状を考え、本研究ではグリコールアルデヒドのグリオキサ

ールへの酸化とグリオキサールのグリオキシル酸への酸化を触媒する微生物由

来オキシダL-一・一ゼを見出して酵素の性質について検討し、酵素遺伝子のシークエ

ンスと発現系の構築についても検討した。

 そして、土壌より分離したPaenibaciilus sp. AIU 311が、グリコールアル

デヒドに対して高いオキシダーゼ活性を示す酵素を産生することを明らかにし

た。本酵素は、アルデヒドアルコールの水酸基を特異的に酸化するAODであり、

グリコールアルデヒドを基質とした場合にグリオキサールを生成していること

を明らかにした。そして、そのN末端アミノ酸配列が既存の微生物由来のAOD

とは大きく異なるものであることも明らかにした。次に、このAODの遺伝子を

クローニングしてE. cok’において発現させた。クロー一ニングの結果、本酵素は

618bpのDNAにより構成されており、そのアミノ酸配列が微生物由来のMn-SOD

に高い相同性を示すことを明らかにした。また、E.・coliにおける発現により得

られた酵素もまた、Paenibaci’11us sp. AIU 311株の産生するAODと同様にグリ

コールアルデヒドに対するオキシダーゼ活性を示し、この遣伝子組み換え菌に

よるグリコールアルデヒドのグリオキサールへの変換が期待された。

次に、本研究ではグリオキサールに対して高いオキシダーゼ活性を示す酵素

79

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を産生する菌株として」Pseudomonas sp. AIU 362株を土壌より分離し、本菌が

産生する酵素の性質を検討した。この結果、本酵素は基質のアルデヒド基付近

の構造に対する厳密な特異性を有するALODであり、これまでに報告されている

微生物由来のALODと大きく異なることを明らかにした。この基質特異性より、

Pseudomonas sp. AIU 362株の産生するALODを用いたグリオキサールのグリオ

キシル酸への変換に利用できる可能性が考えられた。そこで、本ALOD遺伝子の

ff.・eoliにおける発現について検討した。本ALODは295のアミノ酸をコードする

888bpのDNAで構成されており、DNA配列、アミノ酸配列ともにPseudomonas

属細菌由来の3-HIBDHと高い相同性を示した。そして、先述したPaenibacillus

sp. AIU 311株由来のAOD遺伝子と同様に、発現ベクターpET21a(+)により

E. coli BL21株での発現できることを明らかにした。本発現酵素はグリオキサー

ルに対してオキシダーゼ活性を示したので、E. coliにおける発現酵素をグリオ

キサールのグリオキシル酸への変換に用いることができると考えられた。

 本研究結果より、反応4に示したエチレングリコールからグリコールアルデ

ヒドとグリオキサールを経由するグリオキシル酸の生成反応についての検討が

可能となった。このオキシダーゼ系によるエチレングリコールからのグリオキ

シル酸の生成反応系の確立は、水溶液中の溶存酸素を利用して補酵素の再生反

応を必要としないので、グリオキシル酸の有用な生産方法に発展できる可能性

を持っていると考えられた。

80

Page 83: 酸化酵素に関する研究 - iwate-u.repo.nii.ac.jp

                巳

    CH, OH.         CHO

.’ EとH,・ビー→6H,。H・-r

.Ethyle■eslyeol @    Slycolaldehy己『

                                       Eヨ・

ALOD from」PseudOtronas sp・AIU392

CHO  l

CHO

Glyox『1

    .iヨ

             .COOH

--r-→r.・1             CHO

        Clyoxylie ,c・iq

AGD ft。m』伽。〆1加。;.AIU311

.反応.4オキシダ.一ゼを用いた4チレ’ングリコールのグリオキシル酸への変換反応.

8.1.

Page 84: 酸化酵素に関する研究 - iwate-u.repo.nii.ac.jp

要約

 エチレングリコールから連続的酸化反応により、グリオキシル酸を生成する

ことを目的として、本研究ではグリコールアルデヒドオキシダー・一・一・ゼ、グリオキ

サールオキシダーゼのスクリーニングを行い、これらのオキシダーゼを産生す

る微生物としてPaenib∂cillus sp. AIU 311およびPseudomonas sp. AIU 362

株を土壌より見出した。

 次にPaθnibaciilus sp. AIU 311株が産生する酵素を精製して諸性質につい

て検討し、本酵素が分子量24kDaのサブユニットからなるホモダイマーであり、

アルデヒドアルコールの水酸基を特異的に酸化するアルコールオキシダーゼ

(AOD)であることを明らかにした。本精製酵素のNH,一末端アミノ酸配列は既知

の微生物由来のAODの配列とは異なっており、微生物由来のSODと高い相同性

を示した。さらに本酵素はSOD活性を示し、他の微生物由来のSODが本酵素と

同様にグリコールアルデヒドおよびグリセルアルデヒドに対するオキシダーゼ

活性を示すことを明らかにした。これらの結果から、このPaenibacillus sp. AIU

311株の産生する酵素がMn2+-SODと非常に近いグループに属する酵素であるこ

とが示唆された。

 また、酵素の遺伝子的解析を行った結果、本酵素が205のアミノ酸をコード

する618bpのDNA鎖で構成されていることを確認した。本酵素のアミノ酸配列

は微生物由来のAODの配列とは相同性が認められず、 fiacillus属などの細菌由

来のSODと高い相同性を示した。さらに、得られたDNA配列を元にE. coliにお

ける発現系の構築に成功した。このEoo五菌体での発現により得られた酵素も、

Paem+bacillus sp. AIU 311株の産生する酵素と同様にグリコールアルデヒドに

対するオキシダーゼ活性を示した。

 続いてPseudomonas sp. AIU362株産生酵素についても検討を行い、本酵素が

基質の近接するアルデヒド基を識別する基質特異性を有しているアルデヒドオ

キシダーゼ(ALOD)であることを明らかにした。これまでに報告されているい

くつかの微生物が産生するALODが、分子量 140~150 kDaのヘテロトリマーで

あるのに対して本酵素は分子量95kDaのホモテトラマーであり、この酵素のN

末端アミノ酸配列と既知の微生物由来のアルデヒドオキシダーゼの配列との相

同性は認められなかった。これらの結果より、Psθudomonas sp. AIU 362株の産

生するALODの新規性が示された。

 さらに酵素の遺伝子的解析を行い、この酵素が888bpのDNA鎖で構成されて

おり、295のアミノ酸をコードしていることを明らかにした。本酵素のアミノ酸

配列は、微生物由来のALODの配列と大きく異なり、Pseudomonas属細菌の産生

82

Page 85: 酸化酵素に関する研究 - iwate-u.repo.nii.ac.jp

する3-Hydroxyisobutyrate dehydrogenaseの配列と高い相同性を示した。

 また、得られたDNA配列よりE. coliにおける発現系の構築し、Pseudomonas sp.

AIU・362株が産生するALODと同様にグリオキサールに対して高いオキシダーゼ

活性を示す酵素の発現が認められた。

 以上の結果より、2種の酵素発現五co1∫を用いることによりグリコールアル

デヒドからグリオキサールを経由してグリオキシル酸を生成できる可能性が考

えられた。また、これらの酵素をこれまでに報告されているエチレングリコー

ルのグリコールアルデヒドへの酸化を触媒する酵素と組み合わせることによっ

て、酸化酵素を用いた連続的反応でエチレングリコールをグリオキシル酸に変

換する方法の開発の可能性力S期待された。

83

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90

Page 93: 酸化酵素に関する研究 - iwate-u.repo.nii.ac.jp

謝辞

 本研究に際しての熱心な御指導いただきました岩手大学農学部礒部公安

教授に心より感謝いたします。また、本研究に対し、適切な御助言と御指導、

多大なる御協力をいただきました岩手大学農学部平秀晴教授、ならびに弘前

大学農学部宮入一夫教授に深く感謝申し上げます。さらに、研究にあたり有

意な御助言をいただきました岩手大学名誉教授若尾紀夫博士に御礼申し上げます。

 また委託指導をお引き受けくださり、様々な御助言をくださいました京都大

学大学院農学研究科清水昌教授に深く感謝いたします。本研究における遺伝

子の解析に際して直接御指導いただきました京都大学大学院農学研究科片岡

道彦助教授、ならびに小川順助手に深く御礼申し上げます。そして、この研

究に行うにあたり多くの御協力をいただきました京都大学大学院農学研究科

浦野信行博士はじめ、京都大学醗酵生理学研究室の皆様に深く感謝いたしま

す。

 また、学位審査において多くの御助言をいただきました山形大学上木勝司

教授に心から感謝申し上げます。

 さらに、本研究の共同研究者であるカネカ・ライフサイエンス研究所長谷川

淳三博士、岩崎晃博士に深く感謝申し上げます。

 また、この研究に際して様々な面で御協力いただきました岩手大学応用微生

物学研究室の皆様に御礼申し上げます。

 最後に、本研究に行うにあたって、理解と協力いただきました私の家族に心

より感謝いたします。

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