最終成果報告書 - METI岸のDongo Kundu 地区で開発が進められているSEZ(Special...

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経済産業省 御中 平成 30 年度質の高いエネルギーインフラの海外展開に 向けた事業実施可能性調査事業 (ケニア共和国:モンバサ港における LPG 輸入 ターミナル開発に関する調査) 最終成果報告書 平成 31 年 3 月 豊田通商株式会社

Transcript of 最終成果報告書 - METI岸のDongo Kundu 地区で開発が進められているSEZ(Special...

  • 経済産業省 御中

    平成 30 年度質の高いエネルギーインフラの海外展開に

    向けた事業実施可能性調査事業

    (ケニア共和国:モンバサ港における LPG 輸入

    ターミナル開発に関する調査)

    最終成果報告書

    平成 31 年 3 月

    豊田通商株式会社

  • i

    プロジェクト地図(候補地)

    (出典:外務省ホームページ

    「ケニアに対する円借款及び無償資金協力に関する書簡の交換」)

    Target location

  • ii

    略語表

    略称 正式名称 日本語

    AGOL Africa Gas and Oil Limited 現地企業名

    API American Petroleum Institute アメリカ石油協会

    CAPEX Capital Expenditure 資本的経費

    CO2 Carbon Dioxide 二酸化炭素

    CP Contract Price 通告価格

    D1 SEZ 内に開発される Free Zone の名称 名称

    DK-1 SEZ 内に開発されるバースの名称 名称

    EAC East African Community 東アフリカ共同体

    EIA Environmental Impact Assessment 環境影響評価

    EMCA Environmental Management and

    Coordination Act 環境管理調整法

    EPC Engineering, Procurement, and Construction 建設請負会社

    ERC Energy Regulation Commission エネルギー規制局

    ESIA Environmental Social Impact Assessment 環境社会影響評価

    FEED Front End Engineering Design 概念設計・FS の後に行われ

    る基本設計

    FS Feasibility Study 実現可能性調査

    GDP Gross Domestic Product 国内総生産

    GJ Giga Joule ギガジュール(単位)

    GNI Gross National Income 国民総所得

    ha hectare ヘクタール(単位)

    HP Homepage ホームページ

    IEA International Energy Agency 国際エネルギー機構

    IFC International Finance Corporation 国際金融公社

    IRR Internal Rate of Return 内部収益率

    JBIC Japan Bank for International Cooperation 株式会社国際協力銀行

    JETRO Japan External Trade Organization 独立行政法人日本貿易振興

    機構

    JICA Japan International Cooperation Agency 独立行政法人国際協力機構

    JV Joint Venture 共同企業体

    KOT Kipevu Oil Terminal キペブオイルターミナル

    KPA Kenya Ports Authority ケニア港湾公社

  • iii

    KPC Kenya Pipeline Company Limited ケニアパイプライン公社

    KSh Kenyan Shilling ケニアシリング(単位)

    KWh Kilowatt hour キロワット時(単位)

    LAPSSET Lamu Port and South Sudan Ethiopia

    Transport

    ラム港南スーダンエチオピ

    ア回廊

    LPG Liquefied Petroleum Gas プロパンガス

    MoEP Ministry of Energy and Petroleum エネルギー石油省

    MoI Ministry of Industrialization 工業省

    MoPM Ministry of Petroleum & Mining 石油鉱物省

    MoT Ministry of Transportation 交通省

    MT Metric Ton トン(単位)

    MW Mega Watt メガワット(単位)

    NEC National Environmental Council 国家環境協議会

    NEMA National Environmental Management

    Authority 国家環境管理局

    NOCK National Oil Corporation of Kenya ケニア石油公社

    ODA Official Development Assistance 政府開発援助

    OPEX Operating Expense 運営費

    PIEA Petroleum Institute of East Africa 協会名

    PPP Public–Private Partnership 民間委託

    SEZ Special Economic Zone 経済特別区

    SEZA SEZ Authority 経済特別区局

    SGR Standard Gauge Railway 標準軌鉄道

    SoT Simanzi Oil Terminal シマンジオイルターミナル

    TICAD Tokyo International Conference on African

    Development アフリカ開発会議

    TOR Terms of Reference 調査項目

    USD United States Dollar アメリカ合衆国ドル(単位)

    VAT Value Added Tax 付加価値税

  • iv

    目次

    1.序論(背景、目的、調査計画・期間等) ........................................................................ 1

    2.ケニア共和国概況............................................................................................................. 3

    ①ケニアの経済、財政状況.................................................................................................. 3

    ②ケニアのエネルギー事情.................................................................................................. 5

    ③ケニアのエネルギー使用状況 .......................................................................................... 6

    3.相手国政府・自治体等、競合等の動向 ............................................................................ 6

    ①相手国政策動向 ................................................................................................................ 6

    ③インフラの現状等の実態把握 .......................................................................................... 8

    ④インフラの将来計画 ......................................................................................................... 9

    ⑤関係者のニーズ・課題の把握 ........................................................................................ 11

    ⑥市場規模予測・需要予測................................................................................................ 12

    4.プロジェクト概要(基本的な設計やビジネスモデルの策定) ..................................... 15

    ①プロジェクトサイトの選定 ............................................................................................ 15

    ②事業の概要 ..................................................................................................................... 18

    ③概略設計 ......................................................................................................................... 18

    ④調達(日本企業の優位性確認、第三国協力の可能性、コスト競争力強化策) ............ 19

    ⑤事業規模等の算出(運営、保守・メンテナンス費用を含む) ..................................... 20

    ⑥事業実施体制、事業スケジュール ................................................................................. 20

    ⑦ファイナンスの検討 ....................................................................................................... 21

    ⑧環境影響評価(環境改善効果・環境社会面への影響等調査を含む) .......................... 22

    ⑨環境影響評価(エネルギー起源 CO2 の排出抑制量の試算) ....................................... 32

    ⑩リスク分析 ..................................................................................................................... 33

    ⑪経済性評価 ..................................................................................................................... 33

    ⑫相手国への当該プロジェクト実施による裨益、日本への裨益(経済効果)予測 ........ 35

    5.案件実現に向けたアクションプランと課題 .................................................................. 37

    ①関係官庁、実施機関の取り組み状況 ............................................................................. 37

    ②政策支援等の活用見込み(招聘・専門家派遣等の各種ツールの活用可能性の検討) . 37

    ③相手国関係者に要望・指摘された事項への対応、プロジェクト提案の充実化に必要な調

    査 37

    ④他国等への横展開の可能性及び展開促進策 .................................................................. 38

    ⑤日印協力の可能性 .......................................................................................................... 38

  • v

    要約

    本報告書は、ケニア共和国の主要港湾であるモンバサ港において LPG 輸入ターミナル

    事業を開発することに関する実現可能性調査の結果をまとめたものである。

    (ⅰ)LPG 輸入ターミナルの必要性

    ケニア共和国(以下、ケニア)では、環境負荷の高い薪や炭、健康被害を引き起こすケ

    ロシンの調理利用を LPG へ転換させるべく政府が積極的な政策を推し進めている。具体

    的には、LPG に関する免税、低所得層への LPG 購入補助金、また、普及の妨げとなる安

    全性へ懸念を払しょくするための規制強化がある。その結果、同国における LPG 使用量

    は年率 14%で急増しており、現在およそ 20 万トンの消費量が 2030 年には 100 万トンを

    超えると予想されている。

    一方、ケニアでは LPG を全量輸入に頼っており、モンバサ港に輸入ターミナルが 2 か

    所存在する。1 つはケニア港湾公社(Kenya Ports Authority:KPA)所有の Simanzi Oil

    Terminal(SoT)、もう 1 つは民間企業 AGOL 社が独占的に利用するターミナルである。

    SoT は複数の民間 LPG 輸入業者が利用しているが、輸入業者の LPG 貯蔵設備容量不足と

    パイプラインの非合理性から運営効率が著しく悪く、結果として LPG 流通費用が高まら

    ざるを得ない状況となっている。AGOL ターミナルは SoT と比較すると圧倒的に高効率

    であるが、一社独占の体制も相まって LPG 価格低減効果は限定的。急増する LPG 需要を

    見越し AGOL 社は貯蔵設備(高圧タンク)を拡大中であるものの、価格をどこまで下げ

    るかは未知数である。また、KPA は LPG 輸入船受入れ設備の追加計画(KoT プロジェク

    ト)を持つが、その実現は楽観視できない。

    LPG 普及が同じく激増するアジア各国と比較し、ケニア国内 LPG 価格が 3 割以上高額

    である事実も見過ごせない。同国 GDP/Capita を鑑みれば、価格が普及障壁になる可能性

    は高く、解決策を講じる必要がある。

    ケニア唯一の LPG 輸入設備である上記 2 拠点だけでは増加する国内 LPG 需要を賄うに

    は十分とは言えず、低価格 LPG の安定供給のためには、輸入・流通費用を抑えるべく高

    効率な LPG 輸入ターミナルの増設が必須であると判断した。

    (ⅱ)LPG 輸入ターミナルの候補地

    運営効率の最大化が可能な LPG 輸入ターミナルのサイト候補地として、モンバサ港対

    岸の Dongo Kundu 地区で開発が進められている SEZ(Special Economic Zone)の活用を

    検討した。本 SEZ はナイロビまでの主要道路及び鉄道へのアクセスも考慮した開発計画で

    あり、当該立地のターミナルは輸入コストだけでなく国内物流コストの最小化にも資する

    と考える。

  • vi

    (ⅲ)事業採算性

    本 LPG 輸入ターミナル事業は、ケニア国内 LPG 需要の拡大に応じて貯蔵設備も拡大す

    る方針とした。LPG 市場規模が 100 万トン未満の間は、ケニアで一般的に普及している高

    圧タンクを用い(Phase 1)、100 万トンを超えて以降は、日本をはじめとする LPG 消費量

    が大きい国で一般的な冷凍タンクを導入する(Phase 2)。いずれの場合もコスト最小化と

    運営効率最大化を企図し、貯蔵タンク及び配船サイズを設定した。

    表:LPG ターミナル規模

    LPG Storage Size

    Phase 1 - Pressurized 4,500 MT

    Phase 2 - Refrigerated 66,000 MT

    Phase 1 及び Phase 2 における事業投資額を LPG ターミナル建設に係る資機材に関する

    輸入関税並びに VAT 等全てが免税となることを前提として見積もった。

    これを元に本事業における LPG 販売価格を試算し 2018 年 10 月時のケニア国内 LPG 卸

    価格(於モンバサ)と比較したところ、LPG 受け入れ Jetty 建設コストを KPA が負担し当

    社は Jetty 使用料としてその建設コストを返済する形をとった場合、Phase 1 及び Phase 2

    における価格が現行価格を下回った。特に Phase 2 においてはアジア諸国と同水準も実現

    可能な範囲となった。

    事業投資額並びに運営コスト費について今後十分な調査が必要であるものの、上記の結

    果から、本事業の採算性は十分にあると判断した。

    以上

  • 1

    1.序論(背景、目的、調査計画・期間等)

    (背景及び目的)

    ケニアでは家庭において薪、炭、灯油が調理用を主とした家庭用熱源として広く使用さ

    れている。ケニア政府は森林伐採抑制や公害(煙害)対策として LPG 使用を推奨し、付

    加価値税の免除、シリンダー購入補助金など普及のためさまざまな政策をとっている。補

    助政策を背景にケニアでの LPG の消費量は 192,502 トン(2017)に達した。これは 2003

    年比で 59%増加しており、今後平均 14%で増加すると見込まれている(Petroleum

    Institute of East Africa 調べ)。ターミナル建設を予定しているモンバサ港はケニアにとっ

    て主要港湾であるだけでなく、東アフリカ共同体(EAC)におけるゲートウェイ(東アフ

    リカ北部回廊)として機能しており、我が国政府も第 5 回アフリカ開発会議(TICAD Ⅴ

    (Tokyo International Conference on African Development))にて北部回廊マスタープラ

    ンを含む広域開発計画作成を公約した。2017 年 4 月には JICA の協力により「北部回廊物

    流網整備マスタープラン」が完成し、JICA も当該インフラ整備等に 1,700 億円以上の協力

    をコミット済み。

    都市化が進むケニアにて公害対策並びに森林伐採抑制にも繋がるとともに、同国発展の

    基盤とあるエネルギー安定供給に資する新規 LPG 輸入ターミナル開発運営事業の実現可

    能性について調査を実施した。

    (調査計画・期間等)

    以下の内容を纏めた報告書を作成する。

    (1)ケニア及びエネルギーセクターの状況

    ・ケニアの経済、財政事情

    ・電力セクターの状況(市場・政策の現状や問題点、将来計画、競合他社 等)

    ・対象地域の現状分析 等

    (2)プロジェクト概要、技術面の検討

    ・プロジェクト概要、背景、必要性

    ・最適な設備仕様及び構成(競合他社との比較優位性分析を含む)

    ・運営及び保守の課題と提案(競合他社との比較優位分析を含む)

    ・運営及び保守への本邦企業の参画可能性

    ・第三国協力の可能性

    ・プロジェクト実施に伴うCO2削減効果等の環境負荷影響分析 等

    (3)環境社会的側面の検討

    ・プロジェクトの実施に伴うCO2削減効果等の環境改善効果

  • 2

    (4)プロジェクトの実施スケジュール

    (5)ケニア実施機関の実施能力

    ・ケニア電力市場制度の分析

    ・実施機関の能力分析(建設、運営、保守 等) 等

    (6)財務・経済性分析及びプロジェクトの資金調達の見通し

    ・事業費(CAPEX、OPEX)の積算

    (7)案件実現に向けたアクションプランと課題

    ・本邦企業及びケニアの関係官庁、実施機関の取り組み状況

    ・ケニア国内の法的、財政上の制約

    ・今後のアクション、他国への横展開 等

    表 1:調査計画

    2018 年度

    項目 7 8 9 10 11 12 1 2 3

    文献調査、ヒアリング調査

    ビジネスモデル検討

    パートナー探索

    ファイナンス検討

    サイト候補絞り込み

    概要設計

    環境予備調査

    現地出張 ★ ★ ★ ★

    現地報告会 ★

    国内報告会 ★

  • 3

    2.ケニア共和国概況

    東アフリカに位置するケニアは、東南側はインド洋に面し、それ以外はソマリア、エチ

    オピア、南スーダン、ウガンダ、タンザニアと国境を接している。

    図1:ケニアの地図(出典:在東京ケニア大使館ホームページ)

    ①ケニアの経済、財政状況

    1963 年に英国から独立した同国は 1964 年に共和制に移行、1991 年には民主化を果

    たした。東アフリカ最大のモンバサ港を擁し,東アフリカ諸国の玄関口として,地域経

    済の中心的役割を担う。今後も港湾都市モンバサからナイロビをつなぐ標準軌鉄道建

    設事業や地熱発電所建設をはじめとする電力事業など,各種の大型プロジェクトの進

    展が注目される。(外務省 ケニア共和国基礎データ)

    東アフリカで中心的役割を担う同国であるが、資源が乏しく工業化は十分になされ

    ておらず他アフリカ諸国と同様、農業国である(農業が GDP の約 36 %(世銀 2016

    年))。

  • 4

    表 2:ケニアの概況(外務省 ケニア共和国基礎データより抜粋)

    面積 58.3 万 ㎢ (日本の約 1.5 倍)

    人口 4,970 万 人 (国連 2017 年)

    首都 ナイロビ

    主要民族 キクユ族、ルヒヤ族、カレンジン族、ルオ族

    公用語 スワヒリ語、英語

    宗教 伝統宗教、キリスト教、イスラム教

    GDP USD 705 億(世銀 2016 年)

    GDP 成長率 5.80 %

    一人当たりの GNI USD 1,380 (世銀 2016 年)

    失業率 11% (世銀 2017 年)

    総貿易額・主要貿

    易品目(2016 年)

    輸出 USD 56.1 億:紅茶、園芸作物、コーヒー、魚

    輸入 USD 139.0 億:工業製品、資本設備、輸送用機器、食料品

    主要貿易相手国

    (2016 年)

    輸出 :ウガンダ、オランダ、米国、英国、パキスタン

    輸入 :中国、インド、アラブ首長国連邦、日本、サウジアラビア

    2017 年 8 月の総選挙では前職のケニヤッタ大統領が得票率 54.27 %で再選と思われ

    たが、対抗馬の野党オディンガ候補から選挙管理委員会について異議申し立てがあり

    10 月に再選挙を実施。しかしながらオディンガ候補が選挙管理委員会の改善がなされ

    ないことを理由に再選挙をボイコットしたため、改めてケニヤッタ大統領の再選が確

    定した。その後、2018 年 3 月にはケニヤッタ大統領とオディンガ氏の突然の「ハンド

    シェイク」により、ケニヤッタ=オディンガの連携体制が取られることとなったが、こ

    れは次期大統領候補と言われるルト副大統領を遠ざけるためとの見方が強い。次回

    (2022 年)の大統領選の準備が本格化するとともに政情は不安定化する可能性は拭え

    ない。

    大統領選挙による混乱を受け 2017 年度の GDP 成長率は 5 %を下回ったものの

    4.81 %と比較的高い値を維持しており、GDP は USD 795 億と推定されている(JETRO

    ケニア基礎的経済指標)。2018 年現在、経済は安定を取り戻しつつあり、大統領選挙に

    端を発した民族亀裂の不安はあるものの引き続き高い経済成長が期待される。

    高い経済成長率を維持するケニアであるが、貿易赤字国であり財政収支も赤字国で

    ある。特に、近年の標準軌鉄道(SGR)をはじめとする政府の大型公共投資は、債務残

    高の拡大を招いている。ケニア中央銀行の発表によると、2017 年の政府債務残高は過

    去最高の 4 兆 5,600 億 KSh に達した。2018 年上半期には約 5 兆 KSh に悪化し、公的

  • 5

    債務は GDP 比 60 %に迫る勢いである。ケニア政府は、2016 年から延期していた石

    油製品への付加価値税(VAT)課税を 9 月 1 日に導入の予定だったが、経済界の反発

    が続いている。VAT 課税が延期になった場合、税収の減少が見込まれ、より厳しい財

    政状況が予想される。(JETRO 2018 年 09 月 26 日付ビジネス短信)

    表 3:ケニア基礎的経済指標(JETRO ホームページより抜粋)

    輸出額(2017 年、通関ベース) USD

    輸入額(2017 年、通関ベース) USD 16,652 百万

    経常収支(2017 年、国際収支ベース) △USD 4,755 百万

    貿易収支(2017 年、国際収支ベース、財) △USD 10,205 百万

    金融収支(2017 年、国際収支ベース) △USD 4,606 百万

    外貨準備高(2017 年) USD 7,353 百万

    ②ケニアのエネルギー事情

    ケニアでは、バイオマス(薪や木炭、牛糞等の生物由来のもの)、石油、電力の 3 種

    類のエネルギーが使われている。構成比はそれぞれ 69 %:22 %:9 %と圧倒的にバイ

    オマスが多い(Institute of Economic Affairs, Situational Analysis of Energy Industry,

    Policy and Strategy for Kenya, 2015)。

    未電化農村地域を中心に実に人口の 83 %が未だバイオマスに依存しており、環境破

    壊や健康被害を引き起こす原因にもなっていることから、政府は早急なエネルギーソ

    ースの展開を目指しているところ。

    石油は 100 %輸入に頼る。2012 年よりケニア北西部で油田の発見があったものの、

    開発移行には至っていない。南スーダンからパイプラインで石油を輸入する LAPSSET

    (Lamu Port and South Sudan Ethiopia Transport)プロジェクトは、2016 年にエチオ

    ピアと MoU を締結したものの大きな進展は見られない。石油輸入ターミナルは、現在

    モンバサ港に存在するだけであり、圧倒的な容量不足が言われている。(Global Legal

    Insights, Energy 2018 Kenya)

    電力構成は、水力発電 37.2 %、地熱発電 27.0 %、火力発電 29.7 %、他 6.1 %であり、

    総発電量は 2017 年時で 2,234 MW である(Business Finland 2017, Energy Sector

    Insights Kenya)。ケニア政府の電力マスタープラン Updated Least Cost Power

    Development Plan 2017-2037 では、総発電量を 2030 年に 7,213 MW、2037 年には

    9,932 MW まで増やす計画である。電気料金は日本と同程度の、 およそ USD 0.2/kWh。

    ケニアでは経済成長により急激に電力需要が拡大している一方、電化率は 65%に留ま

    っている(2014 IEA)。また、電化された地域であっても発電設備及び送配電網の老

    朽化、盗電、気候変動の影響を受けた水力発電の発電量低下等により停電が多いことか

  • 6

    ら、工場や病院、ホテル、商業施設ではバックアップ電源としてディーゼル発電が導入

    されている。ディーゼル発電はグリッドから離れた村や町等でのメイン電源としても

    頻繁に使われる。

    ③ケニアのエネルギー使用状況

    電気料金が高額であるため、電気を調理や浴室の温水加熱に使う人々は中間層以上

    になる。照明や携帯電話の充電へのニーズは階層問わず高く、電気の一義的な使用用途

    と言える。近年、未電化地域では、ソーラーランタンや小型の太陽光発電機により一義

    的な電力ニーズが満たせるようになってきた。

    調理においては、大都市では、LPG が普及しつつあるが、地方においては未だ木炭

    が中心的役割を果たしている。

    表 4:ケニア家庭における調理用燃料(Kenya Bureau of Statistics 2014, Exploring Kenya’s

    Inequality: Pulling Apart or Pooling Together?)

    木炭製造は森林伐採の原因になるだけでなく、さらには森林を失った土地の荒廃と

    地下水低下、地滑りを引き起こす。ケニア政府も対策に頭を悩ませており、近年使用禁

    止に踏み切った。しかしながら、木炭産業はケニアで主要な輸出品となっており、世界

    第二位の生産量を占める紅茶産業に匹敵する USD 427 百万規模といわれており、農民

    や貧困層をはじめとする多くの人の収入減となっているため成果が出るかどうか疑問

    が持たれている。(2018 年 5 月 16 日付 The Conversation: Banning charcoal isn’t way

    to go. Kenya should make it sustainable)

    3.相手国政府・自治体等、競合等の動向

    ①相手国政策動向

    ケニアにおける LPG 関連の法律は、The Energy Act (No. 12 of 2006)(エネルギー

    法)にまとめられており、Legal Notice(法的通知)にて適宜、修正追加される。LPG

  • 7

    関連については、2009 年 7 月に公示された Legal Notice No.121 に規定されている。

    当該法令整備並びにライセンス管理は Energy Regulatory Commission(ERC)が担う。

    LPG 普及を推し進める Ministry of Energy and Petroleum(MoEP)は、LPG 普及の

    阻害用意として、灯油が LPG より 57%低価格であること(うち、20%は LPG への課

    税が原因)、シリンダーが高額であること(ボンベの価格構成のうち、47%が税由来)

    を指摘しており、2018 年 9 月時点で既にケニア政府は以下により対応済みである。

    ① LPG 課税の廃止

    ② シリンダー購入補助金の開始

    加えて、MoEP は不法の温床になっている相互充填制度(Exchange Pool※)の撤廃へ

    向けて動きだした。(※:使用済みの空シリンダーが自社ブランドでなくとも、使用者か

    らの依頼に応じ販売者は自社の充填済みシリンダーを販売し、空シリンダーは

    Exchange Pool を経由し返却される制度。本制度は、シリンダーの流通量を促進する一

    方、低品質のシリンダー並びに内容量・質が不十分な LPG が出回り、粗悪で安価な LPG

    を充填する事業者が蔓延っている。)

    2018 年 4 月には、ERC より LPG ライセンス付与に関する制度強化を含む Legal

    Notice No.121 修正案が提示された。LPG 普及のためには安全管理が重要との認識で

    あり、罰則強化を盛り込みつつ Exchange Pool 撤廃についても規定されている。

    (ケニア政府の LPG 推進政策・計画)

    ケニア政府は LPG 使用を推奨するため、既述の通り 2 つの普及補助政策を実施して

    いる。

    ① 付加価値税の免除: 他石油製品は 16 %課税に対し、LPG は非課税

    ② シリンダー購入補助金:国営 National Oil of Kenya(NOCK)を通じ、LPG、6

    kg 用シリンダー、ゴトク、バーナーを低所得者にセット販売。補助金が適用

    により通常の半額以下(2,000 KSh)で購入できる。ユーザーは使用後、販売

    店で空になったシリンダーと充填済みのシリンダーをガス代のみ支払い交換

    する。

    ③ 充填所設置(計画中):ヒアリングによると小型車載型充填所の設置を検討し

    ているとのこと。特に地方部においては、供給の不安定さや、使用者がシリン

    ダーを自身で充填所まで持ち込む必要性あることが LPG 普及の妨げになって

    いると考えられる。

  • 8

    (LPG 輸入販売に関する政策・規制等(国&地方自治体))

    LPG 関連ライセンスについては現在改正途中であるものの、以下となる見込み。

    表 5:LPG 事業を実施するにあたり遵守が求められるスタンダード

    LPG

    ブタン・プロパン混合ガス

    KS 03:91:1985

    もしくは KBS に承認されたもの

    シリンダー KS ISO 4706-1989、KS 06-896、KS 2122:2008、KS

    ISO 11118:1999

    一体型バルブ KS 201:2010

    住宅・商業施設向け LPG 設備

    (配管等)

    KS 1938:2015

    表 6:必要許認可

    LPG のバルク輸入 ライセンス必要

    ・毎月 10 日までに輸入量・輸入国・国内販売量・再

    輸出量・販売先の報告義務あり

    LPG のバルク貯蔵 ライセンス必要

    ・貯蔵設備の事前承認(DOSHS による安全基準を満

    たすこと)

    ・貯蔵設備を建設する County からの許可取得必要

    LPG バルク貯蔵設備オーナー ・建設許可取得必要

    ・EIA 取得必要

    ③ インフラの現状等の実態把握

    ケニアの LPG 市場は実質的に現地企業である AGOL が輸入をほぼ独占している(当

    社ヒアリング調査により 70 %程度と試算)。同社はモンバサ港湾内に 2013 年からター

    ミナル運営を開始、LPG 輸入を行っている。同社保有の陸上タンクは現在拡張工事中。

    モンバサ港には他にも Kenya Ports Authority(KPA)が所有するパイプラインと直

    結した Shimanzi Oil Terminal(SoT)が存在している。ここから SoT 近辺にタンクを

    擁する LPG 販売業者 VIVO Energy 及び Oilibya、並びに、SoT の北に位置するチャン

    ガムエ地区にある KPC 所有の LPG タンクに埋設パイプラインを通じて運ばれる。KPC

    からは、近隣に位置する LPG 販売業者である Hashi 及び Total、さらには SoT 付近に

    タンクを保有する VIVO 及び Oilibya の LPG 貯蔵タンクまでパイプラインで運ばれて

    いる。当社が現地調査した際には 8,100 トンクラスの LPG 船が着岸しており、容量の

  • 9

    限られた陸上タンクの空きを待つ間に長期間の着桟、もしくはモンバサ湾内での待機

    の為、長期間の滞船期間が発生し、著しく非効率な運営と推測される。

    ケニアで LPG の海上輸入が行われているのはモンバサ港のみであり、その設備は

    AGOL 及び SoT だけが保有する。タンザニア経由で陸送(タンクロ―リー)による

    LPG 陸上輸入も行われているが、詳細は不明である。

    ケニアを中心に東アフリカの石油ガス製品の健全な普及促進をはかる業界団体

    PIEA によると、2017 年のケニアの LPG 販売量は 192,502 トン(PIEA 2018,

    Petroleum Insight 1st Quarter)であり、違法分も含めると 240,000 トンと見込まれる

    とのこと。統計のおよそ 25 %にあたる量が正規の手続きを通らず輸入されており、

    これらの多くは陸路で運ばれている模様。

    そもそも海上輸入地であるモンバサ港の設備容量が圧倒的に不足していること、

    SoT 経由の LPG の輸入コストが高い事から価格競争力が低いことが原因と考えられ

    る。

    ④ インフラの将来計画

    AGOL は前述の通り陸上 LPG タンクを拡大する計画を持つ。既に土地等手当て済

    みであり実際に工事も行われている。

    一方、KPA 所有の SoT は Jetty では陸上での貯蔵設備容量が十分にないことから、

    LPG 船が一度の着桟で荷下ろしができていない。加えてパイプライン径の制限並びに

    非効率な運営による高額な滞船料が発生し国内 LPG 価格の高額化の一要因となって

    いる。

    現状を打開するため、MoEP は KPA 及び KPC を協働させ、石油製品専用の

    Kipevu Oil Terminal(KoT)のリプレイスに合わせた新たな LPG 輸入設備建並びに

    既存貯蔵設備拡大を目論んでいる。モンバサ港湾内に建設予定の石油製品用海上 Jetty

    に LPG パイプラインを追加し、チャンガムエにある KPC 保有 LPG タンクまで輸送

    する計画。しかしながら、KPC の注力分野として LPG は上がっているものの、KPC

    は輸入設備のみならず国内貯蔵設備の増強も担っており、モンバサ港輸入設備の優先

    順位は種々議論中である模様。

    LPG ターミナル事業への新規参入を図るプロジェクトも複数確認できている。

    一つは IFC が USD 48 million の融資を発表した Milio International Ltd(ドバイ)

    が進めるプロジェクトである。モンバサ港チャネルに近くに LPG 貯蔵タンクを建設

    する計画の模様。EIA が終了し、建築許可が下りたと聞く。

  • 10

    もう一つは Mansa East Africa Ltd の地上タンクと海上タンクを組み合わせるプロジ

    ェクトである。こちらも EIA が終了しバース使用許可も下りた模様。

    両プロジェクトともモンバサ島の西側、モンバサ港へのチャネル近くが建設予定地

    である。LPG はローリーを用いてナイロビをはじめ国内消費地へ運搬される計画。し

    かしながらこの立地では、ナイロビへの幹線道路(高速)へ合流するのに慢性的に渋

    滞している橋を渡る必要があり、物流ルートに大きな課題が残る。

    図 2:将来のモンバサ港周辺 LPG 貯蔵設備予想図

    (パイプラインは当社予想を記載)

  • 11

    ⑤ 関係者のニーズ・課題の把握

    2010 年においてケニア国での LPG 小売価格は世界標準を大きく上回る USD

    2.57/kg であったが、2012 年の AGOL 社の LPG 輸入ターミナル新設により、小売価

    格は大幅に低減された。

    グラフ1:2010 年 12 月期における LPG 末端価格

    (https://energypedia.info/wiki/Liquefied_Petroleum_Gas_(LPG))

    ナイロビ、モンバサにおいて本調査で改めて LPG の価格調査を行ったが、大手ガ

    ソリンスタンド、一般的な小売店においては約 USD 1.5-1.6 /kg であった。一方、世

    界的に新興国での普及価格帯は USD 1.0-1.3 /kg となっている。AGOL 社による LPG

    の物流が改善により、価格低減が達成されたものの、一方、独占市場となり、世界レ

    ベルからは高い状況が続いていると言える。

    AGOL 社は貯蔵設備を拡大し増え続ける需要に対応する計画を進めているが、立

    地条件によるボトルネックにより、これ以上の供給コスト低減は図れない可能性が

    ある。大型化のスケールメリットによる低コスト化を十分引き出すことが出来ない

    可能性が高い。

    ケニア政府は前述の通り、国営企業 KPA 並びに KPC を使っての LPG 輸入経路の

    再構築による価格低減を目指している。これは LPG 普及の障害の主要因が高価格で

    あると認識しているため。また、同じく国営企業 NOCK には補助金によって半額と

    した LPG スターターキットを販売させている。

    一部の小売店では平均価格より 3 割程度安い USD 1.1 /kg の店舗も見られた。こ

    れは違法物流の LPG の可能性が高いと考える。現地でのヒアリングによると違法流

    https://energypedia.info/wiki/Liquefied_Petroleum_Gas_(LPG)

  • 12

    通 LPG には充填量不足/水による嵩増し等による物理的弊害に加え、流通時の違法

    間引きなどの問題も指摘された。

    この背景もあり、Ministry of Petroleum & Mining (MoPM, 旧 MoEP)からは、

    LPG のサプライコストの低減による国民負担の軽減と正規流通の確立に資するもの

    として当社事業を支援する旨コメントを頂いた。

    需要拡大と施設拡張が早急に求められるあまり、おざなりとなりやすい輸入ター

    ミナルの安全運用、正規流通経路構築による LPG の品質確保ないしは安全利用に貢

    献すべく、長年培われてきた日本式の安全基準ときめの細かい操業手順の導入を検

    討したい。

    ⑥ 市場規模予測・需要予測

    (現在の需要)

    ケニアは LPG を全量輸入している。PIEA によると、2017 年消費量は 192,000 ト

    ンに達し、現在は約 10 %程度の国民が利用していると試算している。今後平均年率

    14 %で増加、2030 年には約 70 %の国民が使用する見込み。以下調査において、ケ

    ニアに於ける LPG の需要予測を試みた。

    (LPG 消費量)

    アジアを中心とする新興国では、LPG の導入はそれぞれの国の経済発展度合いに

    もよるが、タイやインドネシアでは、国家政策として LPG の需要喚起を行ってきた。

    ケニア政府も LPG の普及には積極的なことから、今後の経済発展/人口増に合わせ

    急激な需要増加ポテンシャルがあるものと考える。但し、現時点では薪や炭といった

    廉価な熱源を利用していることから、国内広域への普及には価格低減が必至である。

    タイヤインドネシアに比べ、ケニアの LPG 価格は 3 割以上高い。

    表 7:各国の一人当たりの LPG 消費量

    Japan Thailand Indonesia Vietnam Kenya Bangladesh Myanmar Cambodia

    53.6kg 30.6kg 25.5kg 16.0kg 4.0kg 3.0kg 1.7kg 0.6kg

    (ケニア政府政策)

    3.相手国政府・自治体等、競合等の動向参照。引き続き LPG 普及に積極的で

    ある。

  • 13

    (ケニア国需要)

    ケニア国での今後の LPG 需要を以下の様に推測した。

    ① 当面 14 %/年の需要増が続く(A)

    ② 新興国を中心とした国々の GNI/Capita と LPG 消費量からケニア国の

    LPG 需要ポテンシャルを推定(B)

    ③ GNI/Capita の将来推定を実施。World Bank より GNI(足元数値と GDP

    伸び率から仮定)、人口の将来予測も使用 (C)

    ④ 14%の需要増が LPG ポテンシャルに達した後は、(A)・(C)の関係式に

    従いケニアに於ける LPG 需要ポテンシャル予測とした(D)。なお、Low

    Case としては年率5%増加率を設定。

    グラフ2:GNI/Capita と LPG 消費量/Capita の相関(B)

    (World Bank Data、Global Economic.com)

  • 14

    グラフ3:ケニア国 GNI/Capita の将来推定(C)

    (World Bank)

    LPG の需要は足元の 20 万トンから 2030 年には 4 倍の 80 万トンに達する見込み。

    この時点での人口当たりの LPG 消費量は 11 kg/人とアジアの新興国と比べても小さ

    い。十分達成可能な数値であると考える。

    グラフ4:ケニア国 LPG 需要予測(D)

  • 15

    (周辺国需要)

    隣国タンザニアにおいても LPG 需要は高まっている。同国では民間事業者主体で

    進められており、各社それぞれで LPG 貯留施設の増強を図っているとのことである

    が(当社独自のヒアリング調べ)、これは、モンバサに比べ港湾の土地に余裕がある

    側面があると考えられる。しかし、将来的には同国でもケニアと同様、コスト削減の

    ため冷凍設備等を用いた LPG の大量輸送が必要になるであろう。

    内陸国ウガンダへの陸送は、トラックの場合タンザニアに優位性あるとのヒアリ

    ング結果があったものの、将来的に鉄道を利用したケニア国での輸送が達成された

    場合、競争力でケニア国に負ける可能性が高い。

    4.プロジェクト概要(基本的な設計やビジネスモデルの策定)

    ①プロジェクトサイトの選定

    (モンバサ港及びその周辺)

    既述の通り、2017 年時のケニアの LPG 販売量は 192,502 トン(PIEA 2018, Petroleum

    Insight 1st Quarter)であり、違法分も含めると 240,000 トンと見込まれる。今後も同

    国における LPG 需要は着実に増加し、2030 年半ばには 1,000,000 トンに達すると予想

    している。

    AGOL は陸上タンクの容量を拡大する計画を持つが、年間タンク回転数を 10 回転*

    とすると需要の半分までしかカバーできない。(世界標準の冷凍タンクへの積み下ろし

    が 1 日に対し、1-2 週間と推測、タンク回転数は 10 回程度に制限されると予想した。)

    また、KPC/KPRL がチャンガムエに保有するタンクは小規模であり、大手販売業者

    保有の貯蔵設備を入れても数千トンに留まっている。石油輸入ターミナルである KoT

    のリプレイス計画に合わせた Jetty 新設計画はあるが、具体的な内容やスケジュールは

    不透明なままである。

    従い、新たな LPG 輸入ターミナルへのニーズは引き続き高いと判断できる。

    モンバサにおいて、まずは既存 Jetty を活用かつ貯蔵タンク設置が可能な土地を衛星

    写真及び現地調査にて探索した。しかしながら、モンバサ港内はそもそも土地が不足し

    ており、SoT 近辺も住宅街や市街地に近いことから活用可能な土地は見られなかった。

    唯一、十分な土地が存在する場所としてモンバサ港対岸の SEZ の開発が進められてい

    る Dongo Kundu 地区が挙げられた。それ以外は既存プレイヤーである AGOL 社又は

    KPC/KPRL、場合によっては KPA 保有の土地である。

  • 16

    競合プレイヤーとの協働土地利用可能性はゼロではないものの、LPG の安定共有並

    びにコストを抑えて安全かつ安価な LPG 供給のためには、地理的優位性のある土地で

    のターミナル開発が必要と考え、Dongo Kundu 地区 SEZ を本件 LPG 輸入ターミナル

    の第一候補地とした。

    (Dongo Kundu 地区 SEZ)

    日本主導で開発が進められているモンバサ港対岸の SEZ は複数のフェーズに分かれ

    る大型開発計画である。第一フェーズとして、アクセス道路の建設、電力・水の整備、

    バース1(呼称 DK-1)の開発並びにバース1東側の D1 地区(10 ha)の造成計画があ

    る。

    図 3:Dongo Kundu SEZ 開発地図(JICA 2015)

    プロジェクトサイト選定においては、土地の状況(地質や地盤等)、住居者の有無、土

    地取得可能性、安全規制(LPG は可燃性ガスであり貯蔵設備建設には規制が存在)等配

    慮して進めなくてはならない。衛星画像解析で確認したところ、SEZ は丘陵地であり標

    高は 40~60 m ほどある。また、海岸沿いにはマングローブ林の存在が認められ、環境保

  • 17

    全の対応も必要となる可能性がある。加えて、LPG 輸入船規模を考慮した Jetty の水深も

    十分に検討しなければならない。

    本調査において SEZ 開発 Phase1 に位置付けられている DK-1 及び D1 地区周辺を視

    察した。衛星写真で確認した通り、40~60 m の起伏が波上に存在する未開発の地であ

    ることを確認した。

    図 4:訪問した SEZ 予定地のプロット(標高及び座標)

    写真1:DK-1 予定地 写真2:D1 予定地

    住居者は、既に開発主体である KPA 及び JICA と共同で住民説明会が実施されてお

    り、住民移転については大きな混乱は生じないと想定する。

  • 18

    DK-1 については JICA よる円借款プロジェクト、D1 については無償案件が計画され

    ている。今後さらなる調査を進め、必要事項を確認していくと共に、SEZ 開発を主導する

    JICA、KPA 並びに Ministry of Industrialization 等と調整する。

    ② 事業の概要

    本事業はケニア国内の LPG 将来需要をターゲットとするものである。従い、需要の

    伸びに応じてターミナルを拡大する戦略を取る。

    具体的には、年間需要 100 万トンまでは初期投資を抑え、かつ既にケニアで一般的に

    調達・施工可能な高圧(Pressurized)タンクを用い(Phase 1)、年間需要が 100 万トン

    を超えるタイミングで運営効率の最大化を図るため冷凍(Refrigerated)タンクを導入す

    る(Phase 2)計画とする。

    また、運営効率の最大化を図るためパイプラインの長さを最小化することを目指し、

    貯蔵設備のサイズは LPG 運搬船の手配し易さに応じて設定する。

    表8:本事業の規模

    LPG Storage Size

    Phase 1 - Pressurized 4,500 MT

    Phase 2 - Refrigerated 66,000 MT

    ビジネスモデルは、貯蔵タンク能力の確定貸出を主とし本事業主体が LPG の在庫リ

    スクを極小化するトールフィービジネスを主として想定している。従い、主要顧客は

    AGOL を除く既存 LPG 販売事業者である NOCK、VIVO、TOTAL、Oilibya、Hashi

    を見込む。加えて、SEZ に入居する企業や居住者用住宅への LPG 供給への主体的供給

    を視野に入れる。但しこの場合、事業主体が在庫リスクを持つこととなり事業リスクに

    ついては十分な検討を擁する。

    ③ 概略設計

    SEZ 内の区画については公表されていない。そのため、本調査においては正方形と仮

    定して Phase 1 及び Phase 2 の輸入ターミナルの概要設計を行った。

    Phase 1 添付資料 1:LAS-073-PFD-1001-1

    Phase 2 添付資料 2:LAS-073-PFD-1003-1

  • 19

    ④調達(日本企業の優位性確認、第三国協力の可能性、コスト競争力強化策)

    (建設コスト)

    LPG は技術的に成熟し、日系の機器メーカー、エンジニアリングに競争優位性が乏し

    い。その為、実績も多くコスト競争力のあるインド企業とのタイアップを検討、かつ、

    ケニア国内企業を巻き込むことにより競争力強化を図る。

    現時点では建設資材はコスト及び品質を鑑み、インドからの輸入することを想定して

    いる。ケニアと地理的に近い上、国内に LPG 設備は数多く存在しており品質価格共に

    高い競争力を有する。建設用重機については、Phase 1 及び Phase 2 いずれにおいても

    ケニア国内調達(必要に応じて購入もしくはレンタル)が可能と見ている。冷凍タンク

    はケニア国内での設計・製造が不可能であることから、インドで設計・製造しケニアに

    輸送することを想定している。建設作業はインド企業への発注を前提とし、現場監督や

    アドバイザーにおいてもインド人の起用を見込む。

    (LPG 輸入コスト)

    LPG は原油もしくは天然ガス随伴として精製されており、中東が主たる輸出地であ

    る。米国シェールオイルの随伴ガス生産に伴う米国の輸出拡大により LPG にはだぶつ

    きがみられ、米国産 LPG はそのほとんどがプロパン成分であるためプロパン価格の下

    落が大きい。結果、世界的にプロパン・ブタンの比率に変化(プロパン比率の増加)が

    起こっている(引用:HIS Markit 社 HP)。

    一方、ケニアで流通する LPG はボンベの構造からブタンの含有量が大きい。LPG 事

    業者複数にヒアリングしたところ、ブタンの構成比は 70%以上である。価格的にはプロ

    パンよりも割高なブタンであるが、液化圧力が低いため貯留タンク、シリンダー製造コ

    ストが低く、初期投資におけるコスト合理性からブタンリッチでの普及が進み始めてい

    る模様。現段階では、ブタンリッチ、プロパンリッチの両ガスに対応する貯蔵タンクを

    採用することで対応したい。

    一方、LPG 輸入価格は一般にサウジアラビアが規定する CP 価格に海上運賃等が上乗

    せされたものが調達価格となる。従い、輸入コスト低減のためには不要な滞船料を排除

    することが鍵となる。本事業においては、パイプラインの長さの最小化及び適切なパイ

    プ径の選定、LPG 輸送船の大きさと貯蔵タンクのキャパシティを最適化することで、

    LPG の荷下日数を圧倒的に抑え滞船料は発生させない仕組みとした。これにより LPG

    輸入コストが最小化できる。

  • 20

    ⑤事業規模等の算出(運営、保守・メンテナンス費用を含む)

    これまでに記載した条件を元に、本事業 Phase 1 及び Phase 2 における事業規模を試

    算した。

    ターミナルの運営コストについては、ケニアの労働賃金並びに電気代等を考慮して算

    出した。結果、Phase 1 及び Phase 2 のいずれにおいても人件費が大半(85 %以上)を

    占めることとなった。従業員の数はインドの類似ターミナルを参考としている。

    ⑥事業実施体制、事業スケジュール

    (事業実施体制)

    ターミナルの建設、所有及びターミナル運営に参画することを想定している。LPG タ

    ーミナル運営経験豊富なパートナーと JV を設立し、LPG 貯蔵タンク長期利用契約先候

    補である LPG 販売事業者大手からも出資を呼び込みたい。なお、ターミナル運営につ

    いてはケニア現地所在の会社と限定せず、実績豊富なインド企業も探索中。当社以外の

    日系企業の参画については、保守安全面での支援を視野に入れている。

    ケニア政府による出資の場合は、国営企業の場合でも PPP 法に則り入札が必要とのこ

    とで手続き等に多大な労力及び時間がかかると想定される。従い、NOCK との協働には

    出資以外の方法、例えば超長期のタンク貸与契約や NOCK 保有の設備の使用契約等、

    を検討していきたい。

    政府関係者並びに LPG 販売事業者と面したところ、いずれの先もモンバサ港におけ

    る LPG 貯蔵ターミナルの圧倒的不足並びに非効率な運営による高額な調達コストを背

    景に、スピード感のある事業開始を強く求めてきた。AGOL は着々と貯蔵キャパシティ

    を増やすと同時に、LPG ボンベ製造・販売会社(Proto Energy)への出資を実施、

    Proto Energy は独自ブランドによる LPG 販売事業を開始している。LPG バリューチェ

    ーンの囲い込みを強化していることは明白であり、一強独占による価格コントロールは

    今後も続くことが危惧されている。

    想定する事業実施体制は下図の通り。

  • 21

    図 5:現時点で想定する事業実施体制

    (事業スケジュール)

    事業スケジュールとしては、本 FS 終了後パートナー選定を行い、JV 設立、許認可所

    得、詳細設計、EPC 業者の選定、ターミナ建設に移行する。本事業は SEZ 開発に依拠

    しており、建設開始は SEZ の造成終了後となる点留意が必要。

    最終的な投資判断はビジネスパートナー選定終了し、許認可取得の目途が立つ 2 年目

    を目途とする。

    1 年目:本件 FS 調査

    2 年目:ビジネスパートナーの選定、JV 設立、許認可取得、詳細設計、EIA

    3 年目:資金調達、EPC 選定、建設開始

    4 年目:建設、試運転

    5 年目:操業開始

    ⑦ ファイナンスの検討

    ケニア国内 LPG 販売は民間主導で進められていることもあり、案件開発のスピード

    を重視すれば民間投資が合理的である。日系企業である当社主導で投資をリードするこ

  • 22

    とから、融資についても親会社を通じて日本国内で借り入れることを想定している。事

    業規模にもよるが、IFC やアフリカ開発銀行、JICA や JBIC による融資も検討したい。

    ⑧環境影響評価(環境改善効果・環境社会面への影響等調査を含む)

    (環境関連法概要)

    ケニアにおける環境関連の基本的な枠組みは、環境管理調整法(Environmental

    Management and Coordination Act: EMCA、1999 年制定、2015 年改定)である。

    EMCA に基づき、環境に係る全ての事項を監督・調整するとともに環境政策を実行する

    執行機関として国家環境管理局(National Environmental Management Authority:

    NEMA)、またその管理機関として国家環境評議会(National Environmental Council:

    NEC)が設置されている。本事業に関連する環境関連法制度は表 9 に示される。

    表 9:環境社会配慮関連法一覧

    法律等 概要

    環境(一般)

    環 境 管 理 調 整 法 ( Environmental Management and

    Coordination Act, 1999)、及び 2015 年改定

    環境保全、環境管理全般に係るもの。執行機関

    として NEMA に権限を与えている。

    自然環境

    水法(Water Act Chap. 372, 2002)及び 2012 年改定 水資源の保全及び管理、及びケニアの水資源に

    係るもの。

    環境影響評価と監 査規則( Environmental (Impact

    Assessment and Auditing) Regulations, 2003, Legal

    Notice No. 101)

    環境影響評価を実施するための法的根拠とな

    るもの。

    環 境 管 理 と 調 整 規 則 ( 大 気 質 )( Environmental

    Management and Co-ordination (Air Quality)

    Regulations, 2014, Legal Notice No. 34)

    大気汚染の防止と緩和、及び大気質・排出基準

    に係る規則。

    環 境 管 理 と 調 整 規 則 ( 水 質 )( Environmental

    Management and Co-ordination (Water Quality)

    Regulations, 2006, Legal Notice No. 120)

    水質汚濁の防止、及び水質・排水基準に係る規

    則。

    環 境 管 理 と 調 整 規 則 ( 廃 棄 物 )( Environmental

    Management and Co-ordination (Waste Management)

    Regulations, 2006, Legal Notice No. 121)

    廃棄物管理と規制に係る規則。固形廃棄物、産

    業廃棄物、有害廃棄物、殺虫剤等、生物医療廃

    棄物、放射性廃棄物を対象としている。

    環境管理と調整規則(騒音と振動)(Environmental

    Management and Co-ordination (Noise and Excessive

    Vibration Pollution) (Control) Regulations, 2006,

    騒音と振動の防止、及び騒音基準にかかる規

    則。

  • 23

    法律等 概要

    Legal Notice No. 121)

    環境管理と調整規則(湿地、川岸、湖畔、沿岸)

    ( Environmental Management and Co-ordination

    (Wetlands, River Banks, Lake Shores and Sea Shore

    Management) Regulations, 2009, Legal Notice No. 19)

    湿地、川岸、湖畔、沿岸の環境管理に係る規則。

    野生生物保護・管理法(Wildlife Conservation and

    Management Act (Cap 376), (1985) )及び 2009 年改

    野生生物の保護と管理に係る法律。また、保護

    区への無断での立ち入りや伐採、狩猟等を禁じ

    ている。

    沿 岸 及 び そ の 他 地 域 に お け る 公 害 防 止 規 則

    (Prevention of Pollution in Coastal Zone and other

    segments of the

    environment regulations, 2003)

    EMCA で規定されている沿岸地域の保護や公

    害防止に係る規則。

    社会環境

    沿岸開発公社法(Coast Development Authority Act,

    449, 1992)及び 2012 年改定

    沿岸地域全般及び経済特区の開発事業の実施

    に係る計画・調整権限を沿岸開発公社に与える

    もの。

    公衆衛生法(Public Health Act (Cap. 242), 1986)及び

    2012 年改定

    土地開発に関する健全な環境維持に係る法律。

    労働安全衛生法(Occupational Health and Safety Act,

    2009)及び 2010 年改定

    労働における安全及び衛生に係る法律。

    国家博物館および遺産法( National Museums and

    Heritage Act (Cap 216), 2006)及び 2012 年改定

    文化財や遺産等に対する影響評価を求める法

    律。

    地方自治法(County Government Act, 2012) 郡政府による統治枠組みや権限を定めるもの。

    その他

    労働安全衛生法(Occupational Safety and Health Act,

    2007)

    職場に合法的に所在する労働者およびすべて

    の者の安全・衛生・福利厚生、及び国家労働安

    全衛生委員会の設立について規定しているも

    の。

    ケニアにおける環境基準は、EMCA に基づく分野ごとの規則により具体化されてい

    る。本事業に関連する環境基準は表 10 のとおり。

  • 24

    表 10:環境基準一覧

    項目 基準名 備考

    大気質 環境管理と調整規則(大気質)

    (Environmental Management and Co-

    ordination (Air Quality) Regulations, 2014,

    Legal Notice No. 34)

    基準が設定されている周辺大気質の

    パラメーター: SOx, NOx,

    NO2, SPM, PM10, PM2.5, Pb,

    CO/CO2, H2S, Non-methane

    Hydrocarbons, VOC, O3

    排水 環境管理と調整規則(水質)

    (Environmental Management and Co-

    ordination (Water Quality) Regulations,

    2006, Legal Notice No. 120)

    以下に係る水質基準が定められてい

    る;

    - 生活排水

    - 環境中への排水

    - 公共下水道への排水

    騒音・振動 環境管理と調整規則(騒音と振動)

    (Environmental Management and Co-

    ordination (Noise and Excessive Vibration

    Pollution) (Control) Regulations, 2006,

    Legal Notice No. 121)

    静寂地域、居住地域、商業地域等の

    ゾーンごとに昼夜の許容騒音基準が

    示されている。

    (ケニアにおける環境影響評価(EIA))

    EMCA の別表第 2 において、事業のセクターや特性に基づき、EIA 報告書の提出が必要

    なプロジェクトが定められている。本事業は、そのうちの「炭化水素管理事業」に該当する

    と考えられるため、次に述べる EIA 手続きが必要となる。ただし、当該セクターの EIA 手

    続き要否は事業規模について明記されていないため、事業開始前に NEMA への確認が必要

    となる。

    <炭化水素管理事業>

    ・天然ガス、石油、及び全ての可燃性・爆発性燃料の大量貯蔵

    (ケニアにおける EIA 手続き)

    NEMA による「環境影響評価ガイドライン及び行政手続き」においては、EIA を通じ、

    提案されている開発、政策、及び政府のプログラム等による環境に対する潜在的な影響を

    明らかにするとともに、正の影響を最大化しつつ負の影響を緩和する方策を特定するこ

    ととされている。このように、EIA はケニアにおける持続的な開発の決定を促進するツー

    ルと位置づけられている。

  • 25

    EIA 手続きにおいては、NEMA が環境許認可の発行、変更、及び取り消しの権限を持

    っており、公共及び民間セクターの調整に対して責任を負っている。EIA 手続きに係るス

    テップは図 6 に示すとおり。また、具体的なステップの概要は表 11 に示すとおりである。

    表 11:主要な EIA プロセス

    No. ステップ 概要

    1 スクリーニング

    (EIA 実施要否の決定)

    事業実施者は、プロジェクトレポートを作成、提出する。同レポート

    には、主に以下の内容が含まれている必要がある。

    事業目的、スコープ

    立地及び影響を及ぼす区域

    事業活動(建設・操業・廃止段階)

    設計

    使用材料・生産品・廃棄物

    潜在的な環境影響・緩和策

    事故防止策・安全衛生策

    事業予算

    被影響者の意見

    環境管理計画

    2 スコーピング

    (EIA 調査のスコープ

    を決定し、調査 ToR を

    策定する)

    環境スコーピングは、事業活動に関する重要な懸念事項を特定し、EIA

    調査の ToR を決定するためのプロセスである。スコーピングにて検討

    すべき事項は以下を含む。

    コミュニケーション計画(対象者・タイミング)

    意見聴取のための情報公開

    人々の関心事項のリストアップ

    主な課題に対する調査 ToR の策定

    3 EIA 調査の準備

    EIA 調査では、関係者と協議した上で事業実施者により策定される調

    査 ToR に含まれる課題に対応する必要がある。また、同調査の実施は

    当局に登録された専門家により実施されるが、その責任は事業実施者

    が責任を担う。

    4 EIA 調査の実施 EIA 調査では、以下の項目を明らかにする。

    事業による影響の特定

    影響予測

    影響評価・分析

    緩和策の検討

    モニタリング・環境管理計画の策定

    なお、効果的な住民協議が EIA の計画や実施のためには肝心であり、

    事業の計画段階から廃止段階まで、被影響者や当局をはじめとした関

    係者の関与を必要とする。

    5 EIA 報告書のレビュー 事業実施者は、規定の料金とあわせ EIA 報告書を当局に提出する(紙

    媒体 10 部と電子媒体)。

    同報告書のレビューにおいては、調査 ToR に沿うものか、調査結果が

    科学的、かつ技術的に適切であるか、一般に対し分かりやすいものか、

  • 26

    No. ステップ 概要

    負の影響を特定した上で適切な緩和策が検討されているか、十分な住

    民協議の記録が含まれているか、といった観点で審査される。

    6 EIA に関する決定

    当局は、付帯条件の有無を含む承認、または否認の決定を行う。なお、

    承認された場合、環境許可が発行される。

    図 6:EIA プロセスに係る詳細フロー(NEMA, Environment Impact Assessment

    Guidelines and Administrative Procedures, 2002)

  • 27

    (プロジェクト実施に伴う環境社会面への影響(安全面を含む))

    自然環境及び社会環境に関し、本事業で予見される環境影響について、表 12 のとお

    り予備的なスコーピングマトリックスとして取りまとめた。

    表 12:スコーピングマトリックス(LPG 受入ターミナル、海底パイプライン)

    号 影響項目

    評価 予見される影響

    建設段階 供用段階

    汚染対策

    1 大気汚染 B- B- 建設段階:建設作業により発生する粉塵が大気質

    に影響を与える可能性がある。

    供用後:LPG タンカーからの排気が大気質に影響

    を与える可能性がある。また、パイプラインから

    の流出や漏洩などの事態が起こった際には大気

    質への影響が考えられる。

    2 水質汚濁 B- C 建設段階:浚渫及び土地造成の作業が海水質に影

    響を及ぼす可能性がある。また、海底パイプライ

    ンの圧力試験に用いられる廃水が水質に影響を

    与える可能性がある。

    供用段階:ターミナル施設からの生活排水が発生

    する可能性がある。また、パイプラインからの流

    出や漏洩などの事態が起こった際には水質への

    影響が考えられる。

    3 廃棄物 B- B- 建設段階:固形廃棄物及び建設廃棄物が発生する。

    供用段階:LPG タンカー及びターミナルの操業に

    より廃棄物が発生する。

    4 土壌汚染 D B- 建設段階:特段の懸念なし。

    供用段階:LPG の搬入・搬出時、及びパイプライ

    ンからの漏洩の可能性がある。

    5 騒音・振動 B- C 建設段階:建設作業により騒音レベルが増加する

    可能性がある。

    供用段階:操業により騒音レベルが増加する可能

    性がある。

    6 地盤沈下 D D 建設及び供用段階:特段の懸念なし。

    7 悪臭 D D 建設及び供用段階:特段の懸念なし。

    8 底質 B- C 建設段階:浚渫及び土地造成、海底パイプライン

    の敷設が底質に影響を及ぼす可能性がある。

    供用段階:維持浚渫が底質に影響を及ぼす可能性

    がある。

    自然環境

    9 保護区 D D 建設及び供用段階:事業計画地周辺に保護区は存

  • 28

    号 影響項目

    評価 予見される影響

    建設段階 供用段階

    在しない。

    10 生態系 B- C 建設段階:建設作業が海洋生態系に一時的な影響

    を及ぼす。また、マングローブの伐採が見込まれ

    る。

    供用段階:排水による海洋生態系への影響が考え

    られるが、その影響度合いについては今後確認が

    必要である。

    11 水象 B- C 建設段階:浚渫や土地造成が周辺の水象に影響を

    与える。

    供用段階:排水による海洋生態系への影響が考え

    られるが、その影響度合いについては今後確認が

    必要である。

    12 地形・地質 B- D 建設段階:地形の改変が行われる。

    供用段階:特段の懸念なし。

    社会環境

    13 用地取得・住民移

    C D 建設段階:用地取得に伴い住民移転が発生する可

    能性がある。

    供用段階:特段の懸念なし。

    14 貧困層 B+ B+ 建設及び供用段階:地元住民に対する雇用機会の

    増加が見込まれる。

    15 少数民族・先住民

    C C 建設及び供用段階:少数民族・先住民族の存在有無

    を今後確認する必要がある。

    16 雇用や生計手段等

    の地域経済

    B+/C B+/C 建設段階:地元住民に対する雇用機会の増加が見

    込まれるとともに、漁業活動等に影響が出る可能

    性がある。

    供用段階:本事業の実施により薪の使用が減り、

    調理時間の短縮、煙による健康影響の低減が見込

    まれる。一方、漁業活動等に影響が出る可能性が

    ある。

    17 土地利用や地域資

    源利用

    C C 建設段階:漁業活動等に影響が出る可能性がある。

    供用段階:漁業活動等に影響が出る可能性がある。

    18 水利用 D D 建設及び供用段階:事業計画地周辺の水利用に対

    する影響は想定されない。

    19 既存の社会インフ

    ラや社会サービス

    C B+ 建設段階:工事車両による交通渋滞の可能性があ

    る。

    供用段階:本事業の実施により薪の使用が減り、

    薪の調達に係る労力が低減される。

    20 社会関係資本や地

    域の意思決定機関

    等の社会組織

    D D 建設及び供用段階:特段の影響は想定されない。

    21 被害と便益の偏在 D D 建設及び供用段階:特段の影響は想定されない。

  • 29

    号 影響項目

    評価 予見される影響

    建設段階 供用段階

    22 地域内の利害対立 D D 建設及び供用段階:特段の影響は想定されない。

    23 文化遺産 C D 建設段階:事業計画地周辺に文化遺産が存在する

    可能性がある。

    供用段階:特段の懸念なし。

    24 景観 C C 建設段階:建設作業が周辺の景観に影響を及ぼす

    可能性がある。

    供用段階:周辺景観へ影響を及ぼす可能性がある。

    25 ジェンダー C C 建設及び供用段階:潜在的な影響は今後確認が必

    要である。

    26 子どもの権利 C C 建設及び供用段階:潜在的な影響は今後確認が必

    要である。

    27 HIV/AIDS 等の

    感染症

    B- C 建設中:建設作業員の流入や移動による HIV 等感

    染症のリスクがある。

    供用後:操業段階の地域の安全及び衛生リスクに

    ついては今後確認が必要である。

    28 労働環境(労働安

    全を含む)

    B- B- 建設及び供用段階:事故による危険や潜在的なリ

    スクがある。潜在的リスクや危険性については今

    後確認が必要である。

    29 事故 B- B- 建設及び供用段階:事故による危険や潜在的なリ

    スクがある。潜在的リスクや危険性については今

    後確認が必要である。

    30 越境の影響、及び

    気候変動

    D B+ 建設段階:特段の影響は想定されない。

    供用段階:本事業の実施により薪の使用が減り、

    CO2 排出削減効果が見込まれる。

    凡例:A+/-:重大な正/負の影響が想定される

    B+/-:ある程度の正/負の影響が想定される

    C:影響が不明である

    D:影響は想定されない

    (環境社会影響評価(ESIA)調査の ToR)

    本事業においては環境社会影響評価(ESIA)調査の実施が必要となる。ESIA 調査では、

    環境影響の評価を行い、予見される影響に対する緩和策及びモニタリングプログラムの

    作成を行う。ESIA 調査はケニア国における EIA 法制度に則って行われ、また国際銀行の

    ようなレンダーの要求事項に基づいて実施される必要がある。以上を踏まえた、本事業に

    おける ESIA 調査の ToR 案は表 13 のとおりである。

    表 13:ESIA 調査の ToR 案

  • 30

    環境及び社会項目 調査項目 調査手法

    1 大気汚染 気候・気象データ(気温、湿度、風

    速、風向、雨量)収集・更新

    大気質現況調査

    関連基準の整理

    影響の評価、緩和策及びモニタリン

    グプログラムの提案

    二次的データの収集及びレビ

    ュー

    現地調査

    大気質ベースライン調査(必

    要に応じて)

    2 水質汚濁 LPG ターミナル、海底パイプライ

    ンルートを含む潜在的な影響地域

    における水質の現況調査

    関連基準の整理

    影響の評価、緩和策及びモニタリン

    グプログラムの提案

    二次的データの収集及びレビ

    ュー

    現地調査

    水質ベースライン調査(必要

    に応じて)

    3 廃棄物 排出される廃棄物量及び種別確認

    調査

    廃棄物の保管、移送、処分方法の検

    推奨される緩和策の提案

    二次的データの収集及びレビ

    ュー

    関連機関との面談

    4 土壌汚染 土壌質の現況調査

    推奨される緩和策の提案

    二次的データの収集及びレビ

    ュー

    現地調査

    5 騒音・振動 騒音の現況調査

    関連基準の整理

    影響の評価、緩和策及びモニタリン

    グプログラムの提案

    二次的データの収集及びレビ

    ュー

    現地調査

    騒音ベースライン調査(必要

    に応じて)

    6 底質 パイプラインルートの底質の現況

    調査

    影響の評価、緩和策及びモニタリン

    グプログラムの提案

    二次的データの収集及びレビ

    ュー

    関連機関との面談

    7 生態系 マングローブを含む水中及び陸上

    生態系の現況調査

    確認された生態系のステータスの

    特定(保護区、保護種等)

    事業による重大な影響の評価及び

    緩和策の提案

    二次的データの収集及びレビ

    ュー

    現地調査

    関連機関との面談

    8 水象 周辺の流量、ピーク流量などの流況

    に関する概況確認

    事業による重大な影響の評価及び

    緩和策の提案

    二次的データの収集及びレビ

    ュー

    現地調査

    関連機関との面談

    9 地形・地質 地形・地質に関する現況調査

    影響の評価、緩和策及びモニタリン

    二次的データの収集及びレビ

    ュー

  • 31

    環境及び社会項目 調査項目 調査手法

    グプログラムの提案 現地調査

    10 非 自 発 的 住 民

    移転

    用地取得及び住民移転の必要性の

    確認

    非自発的住民移転を最小化するた

    めのオプションの検討

    社会経済調査の実施及び住民移転

    計画の準備

    二次的データの収集及びレビ

    ュー

    現地調査

    関連機関及びコミュニティと

    の面談、協議

    11 生活・生計 漁業関係者を含む事業計画地周辺

    のコミュニティの社会的、人口統計

    学的、経済的特徴に関するベースラ

    イン調査

    事業計画地周辺の影響を受け易い

    レセプターの特定

    影響の評価、緩和策及びモニタリン

    グプログラムの提案

    二次的データの収集及びレビ

    ュー

    現地調査

    周辺コミュニティとの面談、

    協議

    12 文化遺産 事業計画地内及び周辺の文化遺産

    の状況調査

    影響の評価、緩和策及びモニタリン

    グプログラムの提案

    二次的データの収集及びレビ

    ュー

    現地調査

    関連機関との面談

    13 景観 事業計画地内及び周辺の景観の現

    況調査

    影響の評価、緩和策及びモニタリン

    グプログラムの提案

    二次的データの収集及びレビ

    ュー

    現地調査

    14 労働環境 労働上の危険性及びリスクの特定

    ガスの取り扱いを含む関連基準の

    整理

    推奨される緩和策の提案

    二次的データの収集及びレビ

    ュー

    日本のガス取り扱いにかかる

    安全基準等を参照し、本事業

    への適用可能性を検討する

    15 地 域 の 安 全 及

    び衛生

    コミュニティへの危険性やリスク

    の特定

    推奨される緩和策の提案

    二次的データの収集及びレビ

    ュー

    現地調査

    (プロジェクト実現のために当該国がなすべき事項)

    本事業は、開発マスタープランが策定されているモンバサ SEZ 内で開発される予定で

    ある。同プランには、周辺の道路の建設を含む SEZ のインフラ整備計画が含まれている

    ため、それらの整備状況によって、LPG 出荷手段やルートに影響することが想定され

    る。さらに、事業計画地対岸では港湾開発が進んでおり、本事業計画地周辺の湾内浚渫

    が実施される可能性がある。したがって、周辺の開発事業と適宜調整した上で本事業を

  • 32

    進める必要があり、これらの関係機関の調整は当該国が実施する必要があると考えられ

    る。また、ガス取り扱いに関連する安全性については、必要に応じて日本の関連基準に

    準じたものを本事業へ適用することが考えられるため、当該国当局による適用基準等の

    検討が必要とされる。

    (環境改善効果・環境社会面への影響等調査)

    本事業における環境改善効果・環境社会面の大きな効果は、煙や煤を多く発生させる

    ケロシン使用量の抑制に加えて、調理用薪・炭の LPG 転換にある。

    また、炭・薪は準備や後始末に手間がかかるうえ、熱効率が悪いため調理に時間がか

    かる。女性の社会進出が進む都市部では LPG 普及は家事の担い手である女性の負担を

    軽減することに繋がり、農村部においては薪拾いを担当する女性子供の労働緩和に貢献

    できると考えられる。

    ⑨ 環境影響評価(エネルギー起源 CO2の排出抑制量の試算)

    2017 年のケニア国内 LPG 消費量は 192,502 トン。本調査において、10 年後の 2027

    年には 662,000 トン、2031 年には 1,091,000 トンになると想定した。エネルギー期限

    CO2 の排出抑制量の試算では、本事業(プロジェクト)が 2031 年に 25 %のシェアを

    持つことを前提とし、年間 LPG 販売量を 272,750 トンとおいた。

    エネルギー起源 CO2 の排出抑制量の試算は次の通り。

    <条件>

    ・ケニアにおいて供給される LPG は全量調理用に使われる

    ・うち、ケロシン(灯油)からの置換え分は 33.3%とする(出典:JETRO 2010 年

    「BOP ビジネス潜在ニーズ調査報告書 ケニアのエネルギー分野」図表 52 調理の熱

    源)

    <計算式>

    本プロジェクト 1 年間で抑制される CO2 排出量(CO2t)

    =LPG に置換えられた総ケロシン量 x ケロシンの排出係数

    - ケロシンを置換えた総 LPG 量 x LPG の排出係数

    LPG に置き換えられた総ケロシン量(MT):

    本プロジェクトで販売される LPG 272,750 トン のうち 33,3 %がケロシンに置き換わ

    る。単位発熱量ベースで考え、LPG の単位発熱量 50.80 GJ/t、ケロシンの単位発熱量

  • 33

    36.70 GJ/kl を採用すると(出典:LP ガス協会「燃料の発熱量 CO2 排出係数の一覧

    表」)

    LPG 熱量 =272,750 MT x 33.3% x 50.80 GJ/t = 4,613,948 GJ

    置換えられたケロシン量 = 4,613,948 GJ ÷ 36.70 GJ/kl = 125,720 kl

    ケロシンを置換えた総 LPG 量(MT): 272,750 MT x 33.3% = 90,825 MT

    市場規模がおよそ 1 百万トンで本事業がシェア 25%を獲得していると想定した際の、本

    プロジェクト 1 年間で抑制される CO2 排出量(CO2t):

    = 125,720 kl x 2.49 tCO2/kl - 90,825 MT x 3.00 tCO2/t

    = 313,042 tCO2 – 272,475 tCO2

    = 40,567 tCO2

    ⑩リスク分析

    ターミナル運営事業/LPG 輸入販売事業におけるリスクとしては次の項目を検証した。

    1. LPG 販売価格:CP 価格にフレート等諸経費を加えた後利益を加えたものが販売

    価格となる。事業期間を 30 年とし一定の IRR を設定した際の LPG 販売価格を

    シナリオ毎に分析した。(⑪事業性評価に詳細記載)

    2. セキュリティリスク:ケニアの凶悪犯罪発生率は、日本と比べて高く(約 2

    倍)、強盗等の凶悪犯罪のほとんどに銃器が使用されている(出典:在ケニア日

    本大使館 安全の手引き)。外国人が狙われるケースもあり、事業を推進してい

    う上で注意が必要である。一方、本事業は現地及び他国企業との協業を想定して

    おり日本人の関与は限定的となる見込み。従い、セキュリティリスクが事業に及

    ぼす影響はないと判断し事業性評価を行った。

    3. ケニア政治リスク:2017 年大統領選の混乱はまだ市中で尾を引いており、モンバ

    サ港開発は中央政府注力案件であるものの政治リスクはないとは言えない。しか

    しながら、本事業は最終消費者が日々の生活で使用する LPG の販売である。従

    って、政治リスクが本事業に及ぼす影響(LPG 関連規制等の変更や急激な販売量

    悪化等)は無いものとし事業性評価を行った。

    ⑪経済性評価

    本調査において分析したケニア国 LPG 需要予測を基準とし経済性評価を行った。

  • 34

    国内需要が 300,000 トンに達する時点で本事業 Phase 1 をスタートすると想定し、需

    要がおよそ 1,000,000 トンとなる 10 年目に Phase2 を開始する算段である。貯蔵タンク

    の回転数については、Phase 1 で 24 回転(月 2 回転)とし、Phase 2 については 10 回

    転とした。

    本経済性評価では、本調査においてヒアリングで得た 2018 年 10 月時のモンバサ市内

    における LPG 卸価格をベンチマークとし、事業期間の 30 年で一定の IRR を保持しなが

    ら価格競争力が出せるか否かについて検証した。

    LPG 調達コストについてはコスト項目を明らかとした上でそれぞれ Phase 1 及び

    Phase 2 におけるコストを試算した。

    Jetty 建設コストは、本事業主体による建設の場合(シナリオ A)のみならず、KPA

    が建設する場合(シナリオ B)の 2 パターンを設定した。なお、シナリオ B の場合、

    KPA に対する港湾使用料(Tariff)はその分増加することとなる。

    また、LPG 事業においては投資に係る諸税が無税になるとの情報を得た(Finance

    Act に規定あり:現在調査中)。従い、シナリオ分析では VAT や輸入税等免税のケース

    も考慮に入れた。

    シナリオ A

    A-ⅰ)事業費を全て負担した場合

    A-ⅱ)事業費にかかる税金免除となる場合

    いずれのシナリオでも、Phase 2 では十分に価格競争力が出せるが、Phase 1 において

    市場獲得できる価格にはならず事業としての成立は難しいと判断せざるを得ない。

    シナリオ B

    B-ⅰ)Jetty 建設コストを負担せず、ターミナル建設コストのみ負担した場合

    Phase 1 における価格は現行の卸売価格と同等。本調査時点では未だ詳細が明らかと

    なっておらず保守的に見積もったコストが存在する。未だ顕在化していないコストも存

    在するため十分な調査が必要ではあるものの、事業実現へ向けて引き続き検討するに値

    する。

    B-ⅱ)事業費にかかる税金免除となる場合

  • 35

    Phase 1 及び Phase 2 における価格は現行価格を下回る。既述の通りコスト項目につ

    いて十分な調査が必要であるものの、事業実現へ向けて引き続き検討を値するに十分な

    結果となった。

    B-ⅲ)ⅱ)の場合であって Phase 2 に移行しない場合

    Phase 1 における価格は市場価格をわずかに上回る程度。価格低減に資する戦略であ

    る Phase 2(大規模冷凍タンクの導入)がないため、本条件においては 30 年間の事業と

    して検討することは難しい。

    ⑫相手国への当該プロジェクト実施による裨益、日本への裨益(経済効果)予測

    (相手国への裨益(経済効果)予測)

    当社�