Kobo Aura HD User Guide JP...kobo Aura HD ユーザーガイド 7 電源スイッチ 電源のオン・オフり替えやスリー プモードにするには電源ボタンをス
消費電力とATX電源 Torica SPW-320NP EnerMax ATX EG365-VE … · atx電源の回路概要...
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52+1
消費電力とATX電源
インテルが規格を発行している電源にはATX電源のほかに、SFX電源、NLX電源、TFX電源などのAC-DC電源と、オンボードDC-DC電源(VRM : Voltage Regulator Module)とがある。規格は強制ではなく推奨とのことわりが多く見受け
られる。PCを安定動作させるには電源の役割は重要で。これについてもインテルが押さえるところ
をしっかり押さえている。おかげで安価な製品が
大量生産されている。ひとつだけまずい点があ
り、それはAC-DC電源で効率の基準を70%としたことである。この低い効率のおかげで膨大なエネ
ルギーが無駄になっている。それではこんな観
点もまじえて電源を見ていきたい。
●消費電力の実測
No.1PCの電源を入れ替えて消費電力を実測した。測定にはMetex M-3860Mを使った。
使用した電源はTorica SPW-320NPとEnerMax EG365-VE FMAの2台である。各々を組み込んで全入力電力を測定した結果は次の通りであ
る。なお、No.1 PCの構成は6ページ参照。
電源の効率は70%程度なので表中の数字の70%がPCの消費電力である。例えば表で146Wなら102Wが消費電力ということになる。 SPW-320NPの力率は 1、そして、EG365-VE FMAの力率は0.8程度である。前者の力率が高いのはこの電源がPFC回路を組み込んでいるからである。力率を高くする回路での損失のために
PFC回路ありの電源の方が多くの電力を消費している。
●PFC (Power Factor Correction) 回路と力率
力率とは何だろうか?ここから話を始めたい。
上の例で電流が1.88Aで電圧が95Vなら積は178.6となる。これは皮相電力とよばれ単位はVAである。単に電力と書いたのは正式には有効電
力で単位はW(ワット)である。力率、有効電力、皮相電力とは次のような関係にあり、cosθが力率である。
(有効電力)=(皮相電力)×cosθ
電力にはもうひとつ、無効電力があり、これら3つの電力と力率の関係をベクトルで表すと次のよう
になる。
ATX電源
力率を含む電力の測定
電流電流 電圧電圧 力率力率
電力電力
Torica (Topower) SPW-320NP
EnerMax EG365-VE FMA
電流 電圧 電力 力率
Torica SPW-320NP
アイドリング時 0.91A 96V 93W 1
Super π実行時 1.46A 95V 146W 1
アイドリング時 1.24A 95V 89W 0.76
Super π実行時 1.88A 95V 136W 0.80
EnerMax EG365-VE FMA
有効電力
皮相電力
無効電力
θ
電力と力率
52+2
3つの電力の意味合いは次のようにたとえることができる。線路の上のトロッコを斜めの力で引っ
ぱるとする。この力は進行方向の成分と、これとは
直角方向の成分とに分解できる。トロッコを進ま
せるのは線路方向の成分であり、直角方向の成
分は役に立たない。ここで「皮相電力」が「引っ張
る力」、「有効電力」が「進行方向の成分」、「無効
電力」が「直角方向の成分」に各々対応すること
になる。
このたとえをでいえば力率が1なら無効成分がゼロなので皮相電力はそのまま有効電力となる。
電気回路の話にもどり、SPW-320NPに組み込まれた力率を改善するPFC回路を説明したい。この電源の関連する部分は次のようになっている。
波線内がPFC回路で、この基板があってもなくても電源としては成り立つ設計になっている。すな
わち仕向地がヨーロッパなどでは高調波規制が
厳しい国向けにはPFC回路を追加して組み込もうというわけである。それでは、このPFC回路の有無で動作電圧・電流波形がどう変わるかを見て
みたい。ダイオードブリッジ前の入力電圧と電流
の比較例である。
PFC回路がない場合にはパルス状の電流が流れるのに対して、ありでは電圧に相似した電流に
変わっている。これを先ほどの例に当てはめてみ
よう。電圧は電流を流そうとする力である。PFC回路があれば流そうとする力(電圧)に応じた電流
が流れている。それに較べてPFC回路なしでは力をいれても流れず、力が増してある限界になる
と急に流れる感じである。PFC回路なしの電流波形は典型的な力率の低い状態のものである。写
真の電流と電圧とをかけ算した電力を考えると
PFC回路追加による電力増が理解できそうである。
引っ張る力
有効な力
無効な力
θ
トロッコ 線路
有効電力、力率のたとえ
引っ張る力
有効な力
無効な力
θ
トロッコ 線路
有効電力、力率のたとえ
SPW-320NPのAC-DC変換部とPFC回路
PFC回路
PFC回路基板
PFC回路なしの入力電圧と電流例
PFC回路ありの入力電圧と電流例
ATX電源
52+3
●ATX電源の回路概要
SPW-320NPの仕様は
となっている。この電源のAC-DCコンバータ部は昇圧型 PFC回路を含んでいるので入力がAC100Vでも200Vでも切り替えなしにDC400Vを出力している。そのために、このようなATX電源のパネルには入力電圧切り替えスイッチがついて
いない。
この電源のファンはパネルについた1個だけである。(写真の上側)この電源をケースに組み込
むと電源背面(写真では下側)のスリットから風を
吸い込みファンで排出している。風の流れる抵抗
を下げるために基板、ヒートシンク、他の部品はさ
またげにならないように配置されている。
回路の概要は次ページの通りである。入力は
前ページPFC回路の出力である。現在のATX電源の全体的構成はほぼ同じである。大きく2つの電源から構成されている。
*常時動作の5VSB用自励コンバータ *3出力共通コントローラによる大電力コンバータ の2つである。常時出力とはPCの電源スイッチを入れなくてもAC入力があれば動くということであり、スイッチ時のLANやモデム信号による起動を可能にしている。
価格を安くするために、ごく一部の電源を除い
て、+5V、-5Vと+12V、-12Vを単一制御ICで定電圧コントロールしている。3.3Vは5V出力をもとに定電圧化している。また、3.3V、5V、12Vはトランス結合で電圧を安定化している。このため、ある程
度の電流が流れているのが条件となる。例えば、
5V出力では1A以上の制限が設けられている。しかし、常時これ以上の大電流が流れるので問題
はない。
インテルはペンティアム3まで、AMDは32ビット版アスロンまでは、この電圧からコア電圧を作って
いた。そのために電源とマザーボード間配線の
電圧降下をキャンセルすためのマザーボードコ
ネクタ部で電圧センシングしている。
3.3Vと5Vとの合計出力に制限があるのはトランスの同一2次巻線を通して出力しているから、そして、同じく3.3V、5V、そして、12Vの合計出力に制限があるのは同一トランスを使っているかであ
る。
入力
DC出力 +3.3V +5V +12V -12V -5V +5VSB
最大電流 26A 32A 15A 0.8A 0.5A 2A
最大総
合出力
220W 180W 9.6W 2.5W 10W
300W 22W
100~120V/200~240V 10/6A 60/50Hz
SPW-320NP内部(PFC基板を外した状態)
ATX電源
52+4
5V
12V
3.3V
5V SB
OCP
CV TL494
7905
TL3842
12V
DC 400V PFC出力から
SPW-320NP回路概要
(-5Vと-12V回路は省略)
ATX電源
52+5
●3.3V出力回路とATX電源全回路例
3.3Vは5V出力と同一2次巻線から作られている。この降圧DC-DCコンバータの代表的回路はマグアンプとMOSFETチョッパである。 マグアンプは可飽和コアの飽和領域と不飽和
領域とを利用した磁気的スイッチを構成して、
PWM(パルス巾変調)により定電圧制御を行う方式である。部品点数が少なく低圧大電流に適す
る回路なのでATX電源のスタンダードともいえる回路である。
勢力を増しつつあるのがMOSFETプラスコントロールICによる降圧チョッパ回路である。低圧大電流MOSFETの価格が下がったので価格面でマグアンプと同程度ないし下回る可能性がある。
参考としてATX電源全回路図を http://pavouk.comp.cz/hw/en_atxps.html
から転載しておく。
マグアンプ
3.3V
3.3V
MOSFETチョッパ
DTK PTP-2038型ATX電源全回路図
http://pavouk.comp.cz/hw/en_atxps.htmlより
52+6
●激安ATX電源はどう違うのか
筆者の使っている電源は10,000円くらいのものである。しかし、電源つきケースが3,000円で売られている。一体どこがどう違うのかを較べてみた
い。比較するのはいずれも公称250W出力のSeven Team製とメーカー不詳とである。お断りしておきたいのは、後者は安い電源つきケースか
ら外したものではなく電源単体、それもジャンク品
として売られていたものである。ここまで粗悪なも
のは多分ないだろうというレベルのものである。
あえて「粗悪」という言葉を使った理由を説明し
よう。これまで説明してきたようにCPUを含むシステムがしっかりしているので性能に問題のある電
源でも動くかも知れない。しかし、動作不安定、つ
まり、負荷が重くなるとハングアップしたりリセット
がかかったりする恐れがある。壊れてしまって動
かない方がましである。
Seven Team製との比較をご覧いただければ、安い部品を使い、粗雑な組み立てをしている。電
源の寿命はファンと電解コンデンサで決まるとい
われる。粗悪電源の電解コンデンサはペンキが
塗られており、素性は不明である。これとともにま
ずいのが、ノイズフィルターに手抜きがあることで
ある。FCCの規格はパスできないのでAC電源にノイズを垂れ流しである。
全体的に恐ろしくてとても使う気になれないわ
けだが、実はこの電源は動かないのである。購入
時に「ファンが回るところまでは保証します」とい
われた。ファンが回るかどうかは確かめなかった
がこの電源は大電流が出力できないのである。
その理由は左下の写真にあるようにダイオード
チップが半田不良なのである。これは2次側出力ダイオードを外してSAT(超音波探傷器)で内部の状態をチェックしたものである。一番左の3.3V回路のショットキーダイオードはフレームとチップ
間にほとんど半田がなく、電流を流せば即異常
な温度上昇を起こし、高抵抗になるので出力は
ほぼゼロとなる。この電源ははじめから動かない
ので害は少ない。
右の写真はケースに付属した電源の出力ダイ
オードである。このうち右のものは大きな半田ボイ
ドがみられる。それぞれのTO-247外形品は2つのチップを組み込んでいる。白く見えるのがボイド
である。チップで発生する熱を設計通りに外部に
逃がすことができないので高温になり、結果とし
て短期間で壊れる恐れがある。
ATX電源は規格化された大量生産品である。おかげでこの仕様の電源としては価格が安い。
そのために現在日本ではほとんど作られていな
い。ATX電源の部品も当然安くケース、ファン、ワイヤハーネスはそれぞれ80セントといわれている。安い電源をさらに安くしたらどうなるのかを、こ
の粗悪電源は語ってくれている。電源はPC動作の土台である。しっかりしたものでないと有形、無
形の不具合が起きることになる。
粗悪電源の出力ダイオードの内部半
田づけ状態(左は完全な不良)
TO-220外形品
別の電源の出力ダイオードの内部半
田づけ状態(白く見えるボイドに注目)
TO-247外形品
ATX電源
52+7
Seven Team ST-251HR
粗悪250W電源
ATX電源
52+8
SevenTeam製 ST-251HR(まともな製品)と 粗悪電源との比
写真はSevenTeam製
SevenTeam製
粗悪電源
側面短絡防止シートあり
なし
電解コンデンサ105℃品
マークなし(85℃品?)
トランジスタTO-247
タップありビス止め
同上TO-220
タッピングビス止め
フィン板厚 3mm
同上 2mm
3Aブリッジ
2Aアキシャル×4
ノイズフィルタ2段
簡易型1段
フラックス除去
除去せず
高圧部絶縁ペイント あり
ペイントなし
ファン羽根7枚 (UL)
5枚 (UL)
付属ACコード10A (UL)
6A
AC1500V1分耐圧等
の
??
Alブロックフィン
2mm平板加工
2次側SBD TO-247
ビス/ナット止め
同上 TO-220
タッピングビス止め
基板 計3枚
1枚
配線結束バンド 4
同上 1
半固定VR 2
同上 なし
ACインレットフィルタあり
同上 なし
温度検出ファンコントロール
同上 なし
コネクタULマークあり
同上 なし
ATX電源
52+9
Brand Model Power
Allied* AL-A250ATX 250W
Allied* AL-A300ATX 300W
Allied* AL-A350ATX 350W
Allied* AL-A400ATX 400W
ATNG* GD-320P 320W
ATNG* GD-320P 320W
Cheiftec* HPC420-302DF 420W
Delta* DPS250GBA 250W
Delta* DPS300KB-1A 300W
Enermax* EG-301P-VE 300W
Enermax* EG-465AX-VE(FMA) 433W
Enermax* EG-465P-VE(FMA) 431W
Enhance* ATX 1125BT 250W
Enhance* ATX 1125BTA 300W
Enhance* ENP-0730 300W
Enhance* ENP-0735 350W
Enlight* 8341731 340W
Enlight* 8341931 340W
Enlight* 8341934 340W
Fortrex* FP25WXA-G 250W
Fortrex* FP30WXA-G 300W
Hedy* DPS-250GB-2A 250W
Heroichi* HEC-250LR-T 250W
Heroichi* HEC-300LR-T 300W
Heroichi* HEC-300AR-T 300W
Heroichi* HEC-350LD-T 350W
Heroichi* HEC-400LD-T 400W
Highpower* HPC-340-101 340W
Highpower* HPC-300-102 300W
Highpower* HPC-300-101 300W
Hipro* HP-U300GF3 300W
Hopely* ATX-300SE-P4 300W
Huntkey* LW-3202 250W
Lite-On* PS-6251-1 250W
Lite-On* PS-6251-2L 250W
Lite-On* PS-6251-2H 250W
Macron* MPT-460 460W
Macron* MPT-400 400W
Macron* MPT-301 300W
Macron* MPT-251 250W
Minmaw* GPS 300W 300W
NMB* SD005U300PCW 300W
Brand Model Power
PowMax* LP-6100C 300W
PC Power and Cooling* Turbo Cool 475 475W
PC Power and Cooling* Turbo Cool 510 510W
PC Power and Cooling* Silencer 400 ATX 400W
Powertronic* PM-S320U 320W
Power-Win* PW-330ATXE-12V2F 330W
Power-Win* PW-250ATXE-12V2F 250W
Seasonic* SS-250FS 250W
Seasonic* SS-300FS 300W
Seasonic* SS-350FS 350W
Seventeam* ST-250GL 250W
Seventeam* ST-250BLV 250W
Seventeam* ST-300HLP 300W
Seventeam* ST-300BLV 300W
Seventeam* ST-300BL 300W
Seventeam* ST-300GL 300W
Samsung* PSFF201601A 200W
Samsung* PSFF251601A 250W
Sky Hawk Computers* SH-300A8H 300W
SPI* FSP300-60PFN 300W
SPI* FSP400-60PFN 400W
SPI* ATX-300GT 300W
SPI* FSP300-60ATV 300W
SPI* FSP300-60PLN 300W
SPI* FSP300-60BT 300W
SPI* FSP300-60BN 300W
SPI* FSP250-60GTA 250W
SPI* FSP250-60PFN 250W
SPI* FSP250-60BT 250W
SPI* FSP250-60BN 250W
SPI* FSP250-60GNA 250W
SPI* FSP250-60ATV 250W
SPI* FSP250-60GTB 250W
SPI* FSP250-60PLN 250W
Superpower* HPC-340-101 340W
Topower* TOP-250P4 350W
Topower* TOP-300P4 300W
Topower* TOP-320P4 320W
Topower* TOP-350P4 350W
Topower* TOP-420P4 420W
Taiwan Young Year* PSIV-400-1 400W
Zippy* AP2-5400F-RV2S 400W
コラム Intel Tested ATX12V Power Supplies
http://www.intel.com/cd/channel/reseller/asmo-na/eng/35815.htmより
インテルがテストしたATX12V ATX電源である。ここに見られるメーカの顔ぶれはAMDのウェブにあるAthlon MP用電源メーカと多くが重複している。電源購入時の参考になればと思う。
52+10
●効率
ATX電源の効率は一口に70%といわれる。まず、効率について説明したい。例えば250W出力の電源の効率が70%ととすると、この電源の入力電力は250/0.7で357Wが必要である。入力電力から出力電力を差し引いた107Wは電源での発熱となる。
したがって効率が高いほど発熱量が少なく、エ
ネルギーの無駄遣い電源といえる。
インテルはATX12V Power Supply Design Guide Version1.3 (April, 2003)では効率を次のように規定している。shouldという言葉を使っているので強制を伴う規定である。
全負荷時 最低で70% 代表的負荷時 最低で60% 軽負荷時 最低で50% (入力はAC115Vと230Vのいずれかか両方で)
また、効率に関して前バージョン1.2とは次のような違いがある。
*全負荷時の最低効率が68%から70%に引き上げられた
*代表的負荷時と軽負荷時が追加された。
である。
負荷ごとの電流は220W、250W、300W出力電源について決められている。例えば300W電源では
となっている。負荷の大きさで規定された効率が
違うが、これは現実の電源がこのような特性を
持っているからである。AC-DCコンバータに限ら
ずDC-DCコンバータでも小出力時には効率が低く、定格出力でほぼ最高になり、それ以上では
再び低下する。
以上を実使用に則して考えてみると
*電源の効率は最大電力出力時のもので実使
用時は10~20%低下する。具体的には筆者のPC No.1の電源は300Wクラスでアイドリング時 100W、高負荷時 150W(いずれも入力電力)程度なので効率は50~60%と推定できる。 *もし、より大きな500Wクラスの電源を使えば、より効率低い状態で動かすこととなる。逆に250W電源にすれば効率がいい、すなわち、浪費する無
駄なエネルギーが少ない状態で使えることにな
る。ただし、前に説明したように大出力電源の方
が電源内部品の温度が低く抑えられるので、長
寿命が期待できる。
ATX電源はコスト優先である。大手メーカー製でも効率は規定ぎりぎりである。また、回路はAT電源の時代から基本設計が変わっていないもの
が多いようだ。インテルが全負荷時の効率を2%だけ上げたのは、現実にできそうなのはこの位だ
ろうと見透かしているような気がする。その中で効
率80%をうたう製品が出現した。
効率が10%上がれば電気代がいくら安くなるか計算してみよう。出力電力150Wとすると効率70%なら入力電力は214W、効率80%では187Wですむので差は27Wである。PCはつけっぱなし、電気代を0.023円/Ahとすれば、差は447円/月、5,037
電源
効率 70% 出力
250W 入力
357W
発熱 107W
電源の効率
負荷 +12V +5V +3.3V -12V +5VSB
Full 18A 7A 11.5A 0.5A 1.0A
Typical 10A 3A 5A 0.3A 1.0A
Light 4A 1.0A 3.0A 0.0A 1.0A
計
299.15W
160.1W
67.9W
300W電源の負荷ごとの出力電流
効率
出力
最大出力
電源の出力と効率との関係
ATX電源
Seasonic社の
効率80%電源
のロゴマーク
52+11
円/年である。多少、買値が高くても電気代で回
収できそうな雰囲気である。電源メーカーはATX電源の効率に手をつけないのは価格が高くなれ
ば売れないと考えるからである。ノートPC電源、そして、デスクトップPCでもDC-DCコンバータは最新回路、最新部品なのに多くのATX電源はいろいろな意味でローテクである。これは、価格が安
いことの裏返しなのだが、そろそろ曲がり角にさし
かかった。電気代は個人の財布の話だったが、な
にせATX電源を使うPCは全世界で年間何千万台も売られている。無駄にしている電力は膨大で
ある。インテルが効率を2%だけ上げたのだが次は10%で効率80%と言い出してもおかしくない。
さて、電力の話のついでに待機電力を取り上げ
ておきたい。待機電力とはスイッチオフ時に消費
される電力である。現在のATX系PCは大元でオフしない限り、電源の5Vスタンバイ回路は動き続ける。No.1PCで待機電力測定結果は次のようなった。
電源の効率は電源を買った時点で決まってし
まいいかんともし難いが、待機電力はこまめに電
源の大元を切るようにすれば電気代には響かな
い。効率の時と同じようにして電気代をはじいて
みると
待機電力9Wでは1,813円/年 同 5Wでは1,007円/年 となる。LAN信号で起動しようとすればスタンバイ状態にしておかなければいけない。その意味で
は電源の待機電力も規制したい。これについて
も電源のコストがらみである。
電流 電圧 電力 力率
Torica SPW-320NP (PFC回路あり)
スタンバイ時 0.13A 96V 9W 0.73
EnerMax EG365-VE FMA (PFC回路なし)
スタンバイ時 0.06A 96V 4W 0.79
実測待機電力
ATX電源
コラム CPUの実測消費電力
No.1のPCで入力電力の実測値からCPUの消費電力とそれ以外の消費電力とを見積もっ
てみよう。ペンティアム 4 2.4GHzのFSBは133MHzである。この同一CPU同一構成で標準状態とFSB 100MHz (クロック周波数は1.8GHz)、そして、166MHz(同3GHz)の3つの状態で入力電力を測定した。 1.8GHz動作 アイドリング時 85W Hot CPU実行時 119W 2.4GHz動作 アイドリング時 87W Hot CPU実行時 132W 3GHz動作 アイドリング時 88W Hot CPU実行時 146W
Hot CPU実行時で電源効率は65%を見込み、CPU損失をx、それ以外の構成部品の損失をyとする。2.4GHz動作では次の関係が成り立つ。
x + y=132×0.65 CPU損失は周波数に比例するので3GHzでは 1.25x + y=146×0.65 これより
x =36.4(W), y=49.4(W) となる。このxとyとから1.8GHz動作時の入力電力を見積もると
(0.75x+ y)/0.65=118(W) となり、実測の119Wと合っている。 ここで単にCPU損失といったが周波数に依存する損失、メモリやチップセット関係の損失
も含まれることになる。
52+12
●VRMとVRD CPUコア電圧用のオンボードレギュレータ
VRDを熱管理の観点で見てみたい。VRDと
VRMとは規格上オーバーラップする面があ
り、まずこれについて説明する。
VRMはVoltage Regulator Module、また、VRDはVoltage Regulator Downの頭文字で、いずれもCPUコア電圧を供給する降圧DC-DCコンバータである。出力はCPUがもつ5ビット、または、6ビットのVIDコードで決まる電圧となる。 VRMとVRDの違いは前者はコネクタに挿して使うもので現在は主としてサーバ用である。
後者はデスクトップPC用マザーボードに組み込まれたシングルプロセッサ用オンボードレ
ギュレータである。VRMはコネクタ部で、VRDではCPUソケット部でそれぞれ出力電圧が規定されている。
VIDはVoltage Identificationコードで各CPUが個別にもち、VRD/VRMに伝達される。 5ビットのVIDでは 1.1~1.85Vが25mV刻み また、90nmルールCPUにも対応したVRD10では6ビットVIDで 0.8375~1.6Vが12.5mV刻み でDC電圧が出力される。VRDとは別にマルチプロセッサ用として出力電流バランスも規定さ
れているのがEVRD10である。
インテルCPUではペンティアム4以降、AMDでは64ビットアスロン以降用の入力電圧は独立したコネクタでDC12Vとなっている。また、これ以前のCPUではDC3.3Vが入力電圧である。このように入力電圧が3.3Vから12Vに変更された理由はCPUのTDP増大である。TDPが30Wと80Wとでは効率80%のVRD/VRMの入力電力は、各々37.5Wと100Wである。3.3V入力では前者の入力電流は11.4Aですむが100Wでは30Aとなる。これを12V入力にすれば8.3Aですむことになる。TDPはさらに増える
ので、これも見込んで入力電圧が上げて専用
コネクタが設けられたわけである。
CPUコア電圧用レギュレータの損失をCPUのTDPとの関係で考えてみる。TDP増加ともにレギュレータの回路方式はより損失の少ない高
性能なものに変わってきた。TDPが10Wの時代は効率が65%程度のシリーズレギュレータだった。これがTDPが15Wになると効率が80%のスイッチングコンバータ(代表的には
MOSFETチョッパ)にかわり、20Wでは効率85%の同期整流回路に、さらにTDPが増えると単独の同期整流回路では間に合わず、
MOSFETをパラにする、さらに多相(マルチフェーズ)としないと損失を処理できなくなっ
た。表にまとめると次のようになる。
このようにまとめてみると単独のレギュレータ
回路の損失は5W程度が熱設計上の限界のようで、TDP60Wでは最低でも2相、90Wでは3相の同期整流回路でそれぞれ必要となる。
これらのコンバータ回路をざっと見てみたい。
まず、シリーズレギュレータは負荷とシリーズの
抵抗値を制御して出力電圧を一定にする。
マザーボード上の12Vコネクタ
12V コア電圧
VIDコード
VRM/VRD CPU
VRMとVRDの役割 (入力12VはVRM9以降)
TDP 回路方式 効率 レギュレータ損失
10W シリーズ 65% 5.3W
15W スイッチング 80% 3.75W
20W 同期整流 85% 5.3W
60W 2相同期整流 85% 10.5W
90W 3相同期整流 85% 15.8W
TDPとレギュレータ回路
52+13
10W出力程度であればパワーIC1個で間に合う。MOSFETチョッパと同期整流回路とはいずれもスイッチングレギュレータで、ノイズは多
い欠点があるが効率は高い。
非絶縁型降圧DC-DCコンバータとしてMOSFETチョッパ回路がある。同期整流回路と比較すると効率は落ちるが電流が小さい用途
では多く使われている。
TDPが20Wとなってからは同期整流の時代となった。チョッパ回路のショットキーダイオード
がMOSFETに置き換えられている。ダイオードの順電圧は0.5Vのところを1/5から1/10になるのでコンバータ回路の損失が大幅減となる。た
だし、制御が難しいのでコントロールICの価格はチョッパ回路に較べて高い。MOSFETはオン抵抗の低いトレンチ構造のものが使われ、
TDPが増えると、これにフィンつけ、パラ使用となっていった。
それでは、実際のVRD/VRM回路を2つ見てみたい。まず、GIGABYTE社製GA6OXETである。これは0.13µmプロセス ペンティアム3用でVRM8.5対応で代表的出力電圧は1.475V、最大出力電流は28Aである。
このVRD/VRM回路の単相同期整流回路でコントローラはインターシル ISL6524で、MOSFETはNEC 2SK3296がハイサイドとローサイド各2個で計4個使われている。ISL6524は同期整流回路用MOSFETドライバ以外にAGP用1.5Vとチップセット用1.8Vとの2出力用MOSFETドライバを内蔵している。この回路ではMOSFETは4個なので一見2相と勘違いしそうな例である。MOSFETが単にパラ使用なのか多相であるかは同種のコイルが何個あるかで
見分けることができる。この場合コイル2個がMOSFET4個のそばにあるがコイルは同種のものではないので単相なのが分かる。
電圧一定
スイッチングレギュレータ
IN OUT
IC
MOSFETチョッパ降圧コンバータ
シリーズレギュレータ
電圧一定 IC
GA6OXETのVRD/VRM (単相同期整流回路)
同期整流回路
OUT IN
IC
ハイサイド
ローサイド
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MSI GNB Max-LのVRD/VRMである。これはペンティアム4用VRM9対応で出力電圧1.5Vでの最大出力電流は65Aである。
この回路は2相同期整流回路であり、コントローラはインターシルHIP6302/6602は使われている。ブロックダイアグラムにあるように2組の同期整流回路が位相をずらして動作して出力
が合成される形になっている。1.5V、65A出力は電力にして97.5W、効率85%とすれば、このVRD/VRMの損失は17.2Wである。相あたりではこの半分の8.6Wを負担していることになる。写真でフ ィンのついたのがローサイ ド
MOSFET、フ ィ ン の ないのがハ イサ イ ドMOSFETである。入力12Vで出力1.5Vではハイサイドとローサイドのオン時間比は1:7なので
損失分担はローサイドが圧倒的に大きいので
こちらにはフィンが取り付けられているわけで
ある。
単相同期整流回路でハイサイド、ローサイド
ともにMOSFETが2パラと、2相同期整流回路とでは部品点数が似たようなものだが回路の働
きとしては違いがある。例えてみれば前者は2人分まとめて与えられ、2人が自分たちで分けあうのに相当する。後者ははじめから各人分を
分けて与えるのに相当する。こう考えれば2相回路の方が動作としては有利なことが分かる。
また、インダクタンスを大1個から小2個に分割するので小型にできるのも後者の長所である。
MSI GNB Max-LのVRD/VRM (2相同期整流回
ハイサイドMOSFETのオン期間
ローサイドMOSFETのオン期間
同期整流回路MOSFETの動作期間
2相同期整流回路
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VRD/VRMは次々の新しいCPUが登場し、その都度仕様が改定される。マザーボードメーカ
はある程度それを見込んでVRD/VRMは余裕をもたせているようである。また、ユーザがどん
な使い方をするか分からないのも設計しにくい
面もある。例えば、この例ではCPUファンがどの程度の回転数で回るのか、あるいは騒音を抑
えるために止めてしまうのかでフィンの熱抵抗
は変わってしまう。VRD/VRMの熱設計は標準的な使い方を想定しているだろうことは間違い
ないところである。
ここで取り上げたのは2相同期整流回路だがマキシムMAX8524/8525は単独で2/3/4相に対応し、さらに、2個をマスター・スレーブ動作させることができて、6/8相同期整流回路を構成できる。この場合には最大で240Aまで出力できるようだ。したがってVRD/VRMはTDPが200W近くまでの備えはできていることになる。 本来VRD/VRMはPCの動作安定性や信頼性に大きく影響する重要な回路である。しかし、
目で見て、その良し悪しを判断できるかといえ
ば難しいといわざるを得ないのが現実である。
ACPI (Advanced Configuration and Power In-terface Specification) 初 版 は 1996 年 に
Microsoft、Intel、東芝の3社により、また、2000年に改定されたRev2.0ではCompaqとPhoenixが加わり5社で策定された電源管理の規格である。これ以前にAPM (Advanced Power Manage-ment )という規格があり、これは Microsoftと Intelとの2社で規格化したものである。これは電源「オン」から「オフ」の間を 3段階、合計 5段階に分けて監視し、 OS が自動的に電源を切ったり、サスペンド(休止状態)したりすることができ
る。現在ではACPIがAPMを引き継ぎ、APMは引退した形となっている。
両規格の違いはAPMがBIOS を通すのに対して、ACPIではOSから詳細な電源管理が行え、あわせて周辺機器の省電力機能も制御できる。
(ただし、BIOSがACPI対応でないといけない) ACPIは Windows98 以降のOSでは標準でサポートされており、最近のPCは、ほとんどがACPI対応となっている。
ACPIでは動作状態が計6つに分けられる。 S0 稼働状態
S1~4 サスペンド状態(Sleeping State) S5 ソフトオフ(停止状態 - SB電源動作)
さらサスペンド状態のS1からS4は次のような違いがある。
*S1 POS (Power On Suspend) 低消費電力状態(プロセッサ、チップセットとも
に電源オン) *S2 POS (Power On Suspend) 低消費電力状態(ただし、プロセッサとキャッ
シュは電源オフ、チップセットは電源オン) *S3 STR (Suspend To RAM) CPU、グラフィック、HDDなどほとんどすべてをオフにするが、メモリには電力が供給される。そのた
めにデータがメモリに保持されるために中断した
状態に数秒で復帰できる。
*S4 STR (Suspend To Disk) ハードディスクに休止状態のデータ退避され、
完全な電源オフになる。しかし、メモリの内容を
ハードディスクに退避したり、読み出したりしな
ければならないため、その分だけ休止状態への
移行や復帰に時間がかかる。
S3とS4は、それぞれウインドウズのスタンバイ状態と休止(Hibernate - 冬眠)状態に対応している。これはBIOSでの省電力設定と関係があり、マザーボードメーカによって動作は異なる。
No.1とNo.2 PCで入力電力を実測した。結果はS1モードでの省電力効果は小さく、S3はS4(S5)プラスαで効果大である。ただしバッテリ動作のノートPCではこれでも影響が大きく、S4としないとバッテリの消耗は防げない。
最小はウィンドウズ起動後最小電力(HDDオフ) *NO.2はBIOSのACPI Suspend Modeでスタンバイ時をS1またはS3のいずれかを選択できる。 *No.2のS4はビデオカードが対応動作せず
省電力モード時の消費電力
PC 最小 S1 S3 S4
No.1 80 70 - 4
No.2 80 62 8 (8?)
M3860Mによる全入力電力 (W)
S-off
4
3
52+16
あとがき- これを書こうと思ったきっかけはふたつある。ひ
とつはPCの雑誌を見ると間違ったことが平気で
書かれているからである。例えばPFC回路つき電
源は効率がいいと書かれている。余分な回路が
付け足されて、この損失が元々の損失に上積み
されるので、損失は増えるわけである。では、どうし
て誤ったかといえば、多分間違って書いた人が
いて、これをそのまま鵜呑みにしたのだろう。
PC自作は遊びとしては面白い。関係するインテルの資料を読んでみるとなお面白い。でも、読ん
だ人はあまりいないような気もする。安物電源を
ぼろくそに書いた。実際、模倣と粗悪品が横行し
ている。部品名のレーザーマークは信用できる
が、インクによるマーキングなんて全然あてになら
ない。しかし、これに目を奪われると本質を見誤
る。それは、これとは正反対の高度の技術を伴っ
た最新テクノロジーの世界が同時に存在するこ
とである。
ここに書いたことが考える上での例え些細で
あっても手助けになればと念ずる次第である。
2003.8.29. 橋詰伸一